(詩)立夏の前に

一本の桜の木に恋をした
桜吹雪の中で恋をした
かなしい結末になると
分かっていて

それでも
一本の桜の木に恋をした
少年のように
きみに恋をした

花を失くした後
きみは
恥ずかしそうに俯いて

「きみはもう
 わたしのこと
 愛してはくれないよね……」

春が終わる時
春の終わりは
立夏の前の風の中で

葉桜の木漏れ陽にまぎれ
一枚の桜の花びらに
恋をした少年のように

泣きたい

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