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(詩)サンタクロース

自分より
不幸せな人を見ると
自分が幸せなことが
なんだか
恥ずかしくなる

人込みの中で
泣いている人を見ると
笑っている自分の顔が
ロボットのように思う

飢えた子どもたちの映像を
TVでながめながら
おなかいっぱいの
ごはんを食べている
わたしがいる

電車を下りて
住む家のない人たちが
ふるえている冬の通りを
足早に通り抜け
暖房の効いた
家のドアをあける時

やっぱりどうしても
振り向いてしまう
わたしはばかです、ただの

なあんにもいいこと
なかったんですよ
わたしの一生って
ほんとに、なにひとつ、と
語る人に

それが
なあにもいいこと
なかったことが
一番いいことなんですよ、と
答えたら

それは、悪い冗談ですか?と
言い返された

けれどわたしはいつも
わたしが
幸せだったりすることが

恥ずかしかった


クリスマスイヴには
いつも
サンタクロースになって
世界中を飛び回り
からっぽの白い袋の中に
世界中のさびしさ
かき集めたかった

世界中のさびしさを
ひとつ残らず
奪い去りたかった

サンタクロースに、なって

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