雪の夜の記憶

ある冬の晩
昼の間子どもたちがつくった
雪だるまがふたつ
肩を並べ
吹雪の中に立っていた

雪が少しずつほほについて
だんだんと
ふくれっ面になるので
雪だるまたちは
互いの顔を見て笑いあった
その透明な笑い声は
子どもたちの夢の中にさえ
響いていた

けれど次の日
一日中まぶしい陽が差して
雪だるまたちは融けていった
とけてゆく互いの顔を
わざと見ないようにして
ことばでだけ
とうめいなさようならを
交し合って彼らは別れた


ねえ、ぼくたち
子どもたちのつくった
雪だるまを見ると
なんだか懐かしくなるのは
ぼくたちあの晩
肩を並べていた
雪だるまだったのかも
しれないね

今夜もこうして
吹雪に吹かれながら
ふたり突っ立っているけど
今は口づけしても
とけてゆかないから
肩を寄せ合っても
大丈夫だけれど

またどちらかが
さようならをつぶやいたら
ぼくたちやっぱり
融けてしまうかもしれないね

だから
今は何も言わず
見つめ合っていよう

ふたりの恋の熱が
ふたりをとかして
しまわないように
互いのひとみからこぼれ落ちた
涙のしずくが
ふたりが今重ねあう
この一瞬のほほえみを
こわしてゆかないように
今はただ

そういえば
ぼくたちがはじめて会ったのも
さむいさむい冬の晩だったね

ぼくたちまた
雪だるまになっても
めぐり会えるかな
ぼくたちまた
好きだと思いあえるかな

いつかまた
こんな雪の夜に

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