青大井空

目印はいくつもある、この星の上に この星の上でぼくたちが いつかまたやり直せるように …

青大井空

目印はいくつもある、この星の上に この星の上でぼくたちが いつかまたやり直せるように 時を越え再びめぐり会えるように 目印はいくつもある、この星の上に……。 /小説と詩を公開中。1962年生まれ、男

マガジン

  • 詩の倉庫と化してます。多分1、000個位はいくかと。

  • (詩集)きみの夢に届くまで

    詩の数が多いので、厳選しました。っても多い?

  • 小説と童話

    小説と童話です。 赤字のnoteに貢献すべく、有料にしました(多分貢献度0でしょうけど)。

  • 詩、小説以外

    雑記など。

  • (戯言集)コロナと戦争屋

    コロナとの戦いでなくコロナ騒動を起こした連中との戦い。併せてロシア・ウクライナ間にみられるプロパガンダ並びに戦争屋との戦い。

記事一覧

固定された記事

(小説)八月の少年

43章の連載です。よかったらお付き合いください。どの章も長文なので、時間のある時にお読み下さい。 (あらすじ)#アインシュタイン #リトルボーイ #マンハッタン計画

青大井空
3週間前
32

(小説)八月の少年(二十三)

(二十三)Tokyo  目を開けると列車は地上に戻っていた。空は夕闇に包まれ外の景色はもう薄暗かった。建物はなく地平線だけが何処までも続いている。列車はレールの上をひた…

青大井空
15時間前
21

(小説)八月の少年(二十二)

(二十二)1945年駅 「ご安心下さい。この列車は水の中でも平気ですから」  車掌が現われた。 「何?」  けれど車掌の言う通りだった。列車は川の中に沈んでいるのに不…

青大井空
1日前
23

(小説)八月の少年(二十一)

(二十一)黄昏  車掌が通りかかったので声をかけた。 「だいぶ涼しくなったね。夏も終わりかね?」 「もう秋でございますから」 「秋?」  驚いたわたしを置いて車掌はさ…

青大井空
2日前
19

(小説)八月の少年(二十)

(二十)夕映え駅  わたしは我に返った。列車はすでに海岸線を離れもう海は見えなかった。  わたしは滝のような汗をかいていた。その時車掌の声がした。 「次は夕映え駅。…

青大井空
3日前
23

(小説)八月の少年(十九)

(十九)戦場  雨が止むと暑さが増した。いつこんな所まで来たのか遠くに海が見えた。  美しい島々が見えた。青い海、空には入道雲が広がっている。島の緑、白い砂浜、照り…

青大井空
4日前
22

(詩)雨を待って

雨が降り出すと 街は海になる 浅瀬の海 透き通った雨粒の海が 街中へと広がってゆく パラソルは船 色とりどりの船が行き交う 信号はハーバーライト 雨粒は 寄せ返す波の飛…

青大井空
4日前
28

(小説)八月の少年(十八)

(十八)tsuyu  激しい雨が降った。そのせいで暑さは少し和らいだのだが。雨に混じって遠くから爆発音が聴こえた。  またか?  今度はどこだ?  確か前に爆発音を聴いた…

青大井空
5日前
18

(詩)母の日には

母の日には 部屋の窓辺に 赤いカーネーションの 一輪挿しを飾り 窓を開け 風に吹かれよう カーネーションが 五月の風に揺れ あたかも おかあさん、 あなたがわたしに 笑…

青大井空
5日前
25

(小説)八月の少年(十七)

(十七)サンタクロース  ドスン。  突然列車が止まった。車掌が現われ急いで外へ出た。 「どうしたのかね?」  わたしも後に続いた。外は豪雪。吹雪の中を列車の先頭まで…

青大井空
6日前
28

(詩)母の日

カーネーションに 蝶がとまっている 今日が母の日だと 知っているのかな カーネーションは 笑っている カーネーションが お母さんみたいに

青大井空
6日前
26

(小説)八月の少年(十六)

(十六)ロスアラモス  列車は街を抜け、街を抜けると突然雪が止み春の山並みが見えた。確かに春だ!色鮮やかな山の緑が続く。列車は山の中へと入ってゆく。  山。  日が…

青大井空
7日前
23

(詩)ルネサンス

世の中にはね 幸福になってしまうことで ひとりでいる時の さびしさを忘れてしまうよりは ずっとひとりでいることを 選ぶ人もいるんだよ 世の中は不思議なもので そんな人…

青大井空
7日前
30

(詩)きみといた五月

五月 すべてが五月 きみは何に 五月を感じる? ううんとね 木洩れ陽、風、緑のささやき……。 ぼくはね ぼくは、きみ きみの泣きそうな笑い顔 五月 すべてが五月だった…

青大井空
8日前
31

(小説)八月の少年(十五)

(十五)スノーマン  シートに戻った。絶え間なく雪は降り続いた。いくつもの昼と夜が流れた。窓の外はまっ白で他には何も見えなかった。遠く何処からか爆発音が聴こえた。…

青大井空
8日前
18

(小説)八月の少年(十四)

(十四)聖夜  受話器を置いて列車の窓を見た。雪はもう街の家々の屋根に積もっていた。 「メリークリスマス!」  街の通りを子どもたちが嬉しそうに駆けてゆく。その後を…

青大井空
9日前
22
(小説)八月の少年

(小説)八月の少年

43章の連載です。よかったらお付き合いください。どの章も長文なので、時間のある時にお読み下さい。

(あらすじ)#アインシュタイン #リトルボーイ #マンハッタン計画 #原爆 #ヒロシマ #昭和天皇 #尾瀬 #創作大賞2024 #ミステリー小説部門

《本文》(エピグラフ)
 That we are is the certainty that, we have been and will be.(

もっとみる
(小説)八月の少年(二十三)

(小説)八月の少年(二十三)

(二十三)Tokyo
 目を開けると列車は地上に戻っていた。空は夕闇に包まれ外の景色はもう薄暗かった。建物はなく地平線だけが何処までも続いている。列車はレールの上をひたすら走り続けた。
 しばらくして物音に気付いた。空だ。急いで空を見上げると何かが飛んでいる。何だろう?よく見るとそれは戦闘機だった。夕闇の中に無数の戦闘機が飛んでいる。きれいに整列して次から次へと編隊を組んだ戦闘機の集団が現れては空

もっとみる
(小説)八月の少年(二十二)

(小説)八月の少年(二十二)

(二十二)1945年駅
「ご安心下さい。この列車は水の中でも平気ですから」
 車掌が現われた。
「何?」
 けれど車掌の言う通りだった。列車は川の中に沈んでいるのに不思議と水は浸入して来なかった。恐る恐る窓の外を眺めた。列車はゆっくりゆっくり沈んでゆき、やがて川底に到着すると止まった。外はまっ暗で何も見えない。時より魚がガラス窓に当り驚いたように逃げていったがそれ以外は静かだった。しーんと静まり返

もっとみる
(小説)八月の少年(二十一)

(小説)八月の少年(二十一)

(二十一)黄昏
 車掌が通りかかったので声をかけた。
「だいぶ涼しくなったね。夏も終わりかね?」
「もう秋でございますから」
「秋?」
 驚いたわたしを置いて車掌はさっさと歩き去った。窓を見た。すると確かに木々の葉が色づき街の景色はもう秋の佇まいだった。列車はいつか川沿いを走っていた。川の向こう側にビルが建ち並んでいる。随分都会のようだが。もう夕暮れのラッシュ時なのか人の波が慌ただしく行き交ってい

もっとみる
(小説)八月の少年(二十)

(小説)八月の少年(二十)

(二十)夕映え駅
 わたしは我に返った。列車はすでに海岸線を離れもう海は見えなかった。
 わたしは滝のような汗をかいていた。その時車掌の声がした。
「次は夕映え駅。お降り遅れのないよう、お気を付け願います」

 夕映え駅?
 走り続ける列車の窓から空を見上げた。夏の夕映えが広がっていた。地平線の彼方に小さな駅が見える。あれが夕映え駅か。列車はゆっくりと駅に到着した。駅舎もホームの看板や線路もみな夕

もっとみる
(小説)八月の少年(十九)

(小説)八月の少年(十九)

(十九)戦場
 雨が止むと暑さが増した。いつこんな所まで来たのか遠くに海が見えた。
 美しい島々が見えた。青い海、空には入道雲が広がっている。島の緑、白い砂浜、照りつける夏の日差し。けれど爆発音は聴こえ続けた。その美しい島々が爆発で燃えていた。
「あそこも戦場なのか?あの場所でも戦争を」
 と問いかけて車掌がいないことを思い出し止めた。
 ここは何処だ?あの島々は何という島だろう?
 列車が海岸線

もっとみる

(詩)雨を待って

雨が降り出すと
街は海になる
浅瀬の海
透き通った雨粒の海が
街中へと広がってゆく

パラソルは船
色とりどりの船が行き交う
信号はハーバーライト
雨粒は
寄せ返す波の飛沫(しぶき)
雨音は潮騒
雀も鳩もカラスも
みんな海鳥

宛もなく
さびしげな舟唄を口遊みながら
わたしの船はこの海の中
きみの港まで
辿り着けるかな?

雨を待って
今日は雨を待って出掛けよう
パラソルの波に揉まれながら
ゆっく

もっとみる
(小説)八月の少年(十八)

(小説)八月の少年(十八)

(十八)tsuyu
 激しい雨が降った。そのせいで暑さは少し和らいだのだが。雨に混じって遠くから爆発音が聴こえた。
 またか?
 今度はどこだ?
 確か前に爆発音を聴いた時そこはスターリングラードで、ドイツが敗北した場所。
 今度はどこが戦場なのだ?

「激しい雨ですね」
 突然声が。驚いて振り向くと車掌だった。
「何だ、きみかね」
 わたしは安堵したようにため息を吐いた。
「雨もだが、きみ。あの

もっとみる

(詩)母の日には

母の日には
部屋の窓辺に
赤いカーネーションの
一輪挿しを飾り

窓を開け
風に吹かれよう
カーネーションが
五月の風に揺れ

あたかも
おかあさん、
あなたがわたしに
笑い掛けて
くれているかのように

この星の
大地に、海に
そして夜になれば
遠い銀河の中に
今はもう
眠るあなたのために

今は夢見る少女のように
眠るあなたが
くすくすっと
わたしに
笑い掛けてくれるように

五月の窓辺に

もっとみる
(小説)八月の少年(十七)

(小説)八月の少年(十七)

(十七)サンタクロース
 ドスン。
 突然列車が止まった。車掌が現われ急いで外へ出た。
「どうしたのかね?」
 わたしも後に続いた。外は豪雪。吹雪の中を列車の先頭まで辿り着いた。まっ白な車掌の背中が立ち尽くしている。
「どうした?」
 問いかけながら前を見ると線路に雪が!なんと列車の高さまで降り積もっていた。列車はその雪に衝突して止まったのだ。
「すごい雪だね、どうするのだ?」
 尋ねてはみたが車

もっとみる

(詩)母の日

カーネーションに
蝶がとまっている

今日が母の日だと
知っているのかな

カーネーションは
笑っている
カーネーションが

お母さんみたいに

(小説)八月の少年(十六)

(小説)八月の少年(十六)

(十六)ロスアラモス
 列車は街を抜け、街を抜けると突然雪が止み春の山並みが見えた。確かに春だ!色鮮やかな山の緑が続く。列車は山の中へと入ってゆく。
 山。

 日が沈みすぐにあたりはまっ暗になった。列車はどんどん山奥へと。
 もしかして、ここは?
 確かに見覚えのある景色だった。確かここは?そうだ、ここはせみしぐれ駅の後に入っていった山の中だ。
 どうしてまた同じ場所へ?
 そう思う間もなく列車

もっとみる

(詩)ルネサンス

世の中にはね
幸福になってしまうことで
ひとりでいる時の
さびしさを忘れてしまうよりは
ずっとひとりでいることを
選ぶ人もいるんだよ

世の中は不思議なもので
そんな人にも
そんな人なりのよろこびは
訪れるものらしい
だから

この世界に生きる誰かの
さびしさや苦しさが
わからなくなってしまうというのなら

幸福と呼ばれるものも
あんがいそんなに
いいことでもなさそうだ

もしも幸福になる順番が

もっとみる

(詩)きみといた五月

五月
すべてが五月

きみは何に
五月を感じる?

ううんとね
木洩れ陽、風、緑のささやき……。

ぼくはね
ぼくは、きみ
きみの泣きそうな笑い顔

五月
すべてが五月だった
きみといた五月

(小説)八月の少年(十五)

(小説)八月の少年(十五)

(十五)スノーマン
 シートに戻った。絶え間なく雪は降り続いた。いくつもの昼と夜が流れた。窓の外はまっ白で他には何も見えなかった。遠く何処からか爆発音が聴こえた。戦争はまだ続いているのだ。いつになったら終わるのだろう?ふと雪景色の中に何かが見えた。何だろう?吹雪の中にぽつりぽつりと黒い影。
 戦車だ。ああ、今あそこで戦争をしているのだ。

 兵士に抵抗する市民の姿が見えた。飢えと寒さと疲労に倒れる

もっとみる
(小説)八月の少年(十四)

(小説)八月の少年(十四)

(十四)聖夜
 受話器を置いて列車の窓を見た。雪はもう街の家々の屋根に積もっていた。
「メリークリスマス!」
 街の通りを子どもたちが嬉しそうに駆けてゆく。その後を白い子犬が尻尾を振りながら追いかける。その息がまた白い。その息の白さが何ともいとおしい程に白いのだ。気が付くと電話ボックスは消えていた。

「メリークリスマス!」
 わたしは初めて教会で聖夜を迎えた晩のことを再び思い出した。わたしはその

もっとみる