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劇団四季「ウィキッド」レビュー

すごくよかった。
第1幕はエルファバ(三井莉穂さん)の独唱で終わるんだけど、
幕間入るのと同時に会場ざわめいた。
「美女と野獣」の野獣の独唱で第1幕終わる場面を思い出した。
劇団四季、第1幕の終わりに必ず劇場をざわつかせる。
 
今回の作品「ウィキッド」について。
この作品の元ネタは「オズの魔法使い」。
またこれが良い作品で…と書くと、いつまでも「ウィキッド」について書けないので割愛。
「オズの魔法使い」には主人公ドロシーを助けてくれる良い魔女グリンダと、
ドロシーの目標達成を妨げる悪い魔女エルファバが登場する。
このグリンダとエルファバの学生時代を描くのが「ウィキッド」だ。
主人公は悪い魔女エルファバ。
以下、ストーリーの詳細。

可愛くてキラキラなグリンダ(真瀬はるかさん)と
嫌われ者のエルファバは大学の同級生。
いろいろあって2人は寮の同室で過ごすことに。
エルファバには車椅子の妹ネッサローズ(若奈まりえさん)がいる。
グリンダには言い寄ってくる冴えない同級生ボック(緒方隆成さん)がいた。
ある日、大学にフィエロ王子(カイサータティクさん)が入学してくる。
 
グリンダはフィエロ王子と意気投合、一緒に踊ろうとするけどボックに邪魔されている。
グリンダはボックに「ネッサローズをダンスに誘ってあげて。私のために」と言う。
ボックはネッサローズをダンスに誘えばグリンダが喜んでくれると思い、その通りにする。
 
ダンスなんて馬鹿らしいと思っていたエルファバだが、
妹のネッサローズが「男の子からダンスに誘われた!」と喜んでいるために考え方が変わる。
ネッサローズによると誘ってくれた男の子はボックで、
どうやらグリンダが根回しをしてくれたらしい。
妹の喜びようを見てエルファバはダンスホールにいるグリンダにお礼を言いにいく。
 
一方ダンスホールでは黒い三角帽子を不機嫌に持つグリンダがいた。
「おばあちゃんがこんなもの送りつけてくる」
「嫌いな人に押し付けたら?」
「ダンスホールに嫌いな人なんかいないわ」
そこに現れるエルファバ。
グリンダはダサい帽子をエルファバに押し付けて「よく似合う」と言う。
 
この時にエルファバの中でグリンダへの印象が変わる。
グリンダは妹にダンスの機会をくれた上、自分にプレゼントまでくれた。
エルファバはグリンダに何かお返しをしなければと思うのだった。
エルファバは魔法の才能を認められて学長に個人指導を受けているが、
センスのないグリンダは個人指導を断られている。
それを痛快に思っていたエルファバだが、グリンダへのお礼として学長に「グリンダにも指導をしてあげてほしい」と頼む。
 
ダンスホールにいるグリンダのもとに学長から魔法の杖が届く。
その時グリンダはエルファバが学長に個人指導を直談判してくれたと知る。
これを機に2人は一気に仲良しになるのだ。
 
ここから面白くなるのが登場人物たちの恋愛関係。
初めグリンダといい感じだったフィエロ王子がどんどんエルファバに惹かれていく。
フィエロ王子とエルファバは相容れない2人のように見えるがその関係性は徐々に変わっていく。
 
ネッサローズはダンスに誘ってくれたボックが好きだが、
ボックが情けで誘ってくれたことを本当はわかっている。
ボックはそれを否定するが本心ではグリンダに一途。
グリンダはフィエロ王子しか見ていない。
そしてエルファバは「グリンダにかなうはずがない」と苦しみながら
フィエロ王子に惹かれていくのだった。
この恋の行方は第2幕で決着がつく。
 
ボックは卒業後もネッサローズに仕えるが心はグリンダに向いている。
エルファバの魔法でネッサローズが歩けるようになると
「これで僕の仕事はおしまい」とネッサローズの元を去り
グリンダの元に行こうとする。
あまりにも切ない。

「ウィキッド」では純粋で一途だからこその残虐さが描かれる。
「足が不自由だからみんなの仲間外れというのは可哀想なので仲間に入れてあげてほしい」というグリンダの考えは悪意と表裏一体だ。
ボックの純粋さを利用して自分から遠ざけるための口実にすぎない。
しかしそれに対してボックは素直に従うし、
ボックとグリンダのねじれた善意にネッサローズは素直に感謝する。
同時に2人が純粋な善意で接してくれているわけではないことも理解している。
この構図が魅力的なので、私にとっては
ボックやネッサローズというキャラクターがすごく好みだった。
 
第2幕でネッサローズは事故死するけれど、
どうしてネッサローズがそこまでの制裁を受けなければならなかったのかわからない。
去ろうとしたボックに破滅願望を抱いてしまったのはよくなかった。
けれどそれはネッサローズにとって当然のことだったと思う。
仲間外れにせず初めてダンスに誘ってくれた男の子。
そのボックを好きになるのは自然だし、
ボックが本当は自分ではなくグリンダが好きで、
グリンダに好かれるために自分に優しくしてくれてるんだってことにも気付いてる。
そんなことに耐えて一途に思い続けてきた。
ボックを手放したくなくて「弱い私」に縛り付けてきた。
そばに縛り付けておけばいつかは自分を愛してくれると信じてた。
それなのにネッサローズが「弱い私」を脱した時、
ボックは憐れむのをやめてグリンダの元へ去ろうとする。
殺してやると思って普通ではないか?
どうしてネッサローズが殺されなければならなかったんだろう。
幸せになってほしかった。
と、ここまで思うくらいには俳優の皆さんの演技に引き込まれてた。
 
エルファバは当然、フィエロ王子とカップルになりエンド。
しかし第2幕で一時フィエロ王子はグリンダと婚約まで交わしてしまうのだ。
エルファバはそれを知っている。
しかしエルファバとフィエロ王子が再会した時、
互いの本心を打ち明けてカップルになるんだから盛り上がる。
良いところまで行ったはずなのにすれ違いを繰り返した2人がようやく心を通じる。
この感じ、「花より男子」とか「はいからさんが通る」もそう。
起伏の激しい物語は観客の心をつかむ。
特に恋愛。
 
主人公ではないけどネッサローズに魅了されたなと思ったら、
ネッサローズ役、若奈さんじゃないですか!
「リトル・マーメイド」のアリエル役だ。
「リトル・マーメイド」好きすぎて年5回観てたけど全回泣いた。
ネッサローズ役もよかったな。
劇団四季版の「リトル・マーメイド」の魅力については後日語る。たぶん。
 
劇団四季は歌もダンスもパワフル。
また行きたい!
 


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