見出し画像

vol.29 青色にビビッときて、オリジナルの青の顔料を作っちゃった芸術家の話。

皆さんはお買い物をする時、目に留まるアイテムの色は何ですか?
私は青色の洋服を集めることにハマっています。少し前までは「黒色のアイテムを持っていれば何とかサマになるのでは?」「黒ってなんか大人っぽくない?!」という単純な理由で黒色ばかり買っていましたが、最近は他の色も取り入れたいと思い、私が好きな青色のアイテムを集めています。

Google社にまで私の青色好きがバレているのか、YouTubeの広告にdyson社のSupersonic Ionic ヘアドライヤーが頻繁に出てきます。これがまた私にとってどタイプの色味なんです。深い青色のドライヤーは珍しいですし、とても綺麗です。ついつい何度もその広告をクリックしてしまいます。でも製品の値段にビビって毎回引き返します。いつか値段に躊躇せずに買えるような大人になりたいです(切実)。

私が青色にハマっている話はさておき、アートの世界には青色に大きな影響を受け、オリジナルの青色の顔料まで開発した芸術家がいます。フランス出身のイヴ・クライン(Yves Klein 、1928 - 1962)です。作品を見てみると、

Yves Klein
GLOBE TERRESTRE BLEU (BLUE EARTH) RP 7
1957  
Pigment and synthetic resin on plaster
Yves Klein
Victoire de Samothrace
1962
Dry blue pigment and synthetic resin on plaster with metal and stone base
Yves Klein
Table Bleue
1961
 Gold Leaf. Perspex, Glass, Stainless Steel 

青!青!青まつりです!
青色の虜となったクラインは、インターナショナル・クライン・ブルー(IKB)という顔料を開発し、作品に使いました。更にクラインは、この顔料の特許まで取得しました!青色に対する熱量が尋常じゃないです。なぜクラインはそこまで青色に情熱を注いだのでしょうか?

クラインは、19歳の時に「空(宇宙)には、何もない空間(非物質的)が広がっているんだ!」と思ったそうです。

て、てつがくてきっ……!わずか19歳で悟りを開いています。「空きれい〜写真撮ろ〜!」「わ〜!写真、きれいに撮れたし大満足🙌」とぼけーっと思っている私とは全く比べ物になりません(涙)。

クラインは彼の故郷であるニースの空の色と、神秘的な宇宙の世界から着想を得て、青色を「神聖な色」だと考えました。この青色が持つ意味を導き出したクラインは、非物質的 or 空虚(ざっくり言うと、何もない空間)を表すブルーを物質的なもの(人の身体や彫刻)に塗ることで、私たち鑑賞者が五感を通してブルー(=空虚)を体験出来るように作品を作り続けました。青色好きという趣味レベルなものではなく「青がもたらす世界観を広めないと!」という使命感を彼は持っていたのかもしれません。

クラインのことについて記事を何度も読み返しましたが、私の読解力では理解しきれず…。もしクラインが生きていた頃にタイムスリップしたら、1958年に開催した「空虚」展("The Void")*を体験してみたいです。 

*「空虚」展の正式名称は、「第一物質の状態における感性を絵画的感性へと安定させる特殊化」展です。

オープニングパーティーへの招待状には、インターナショナル・クライン・ブルー色の切手が貼ってあります。シャレてる〜!

「空虚」展の招待状

そして会場の外壁は青一色! 重厚感のあるブルーのカーテンをくぐると、 

「空虚」展 会場(Iris Clert Gallery)入り口

 なんと室内には作品が1つも置いていません!

展示風景:「The Void」,  Gallery Iris Clert

真っ白な室内では、招待者にブルーのカクテルが振る舞われました。個人的には「ブルーのカクテルだけ振る舞う?その演出最高じゃん!」と思いそうですが、会場に来た招待者たちは「作品を楽しみにしていのに!」と怒り出してしまいそうです。実際、「空虚」展は物議を醸した展覧会となりました。 

ですが、クラインにとってこの空間こそが作品なんです。クラインは2日間かけて室内を真っ白に塗り「何もない空間」を作りました。この空間は、会場の外壁のブルーが非物質化した状態(何もない、空っぽの状態)を表しているそうです。

 む、文章が頭に入ってこない….。やはり実際に観てみないとですね! いま金沢21世紀美術館でクラインの展覧会が2023.03.05まで開催しているので「空虚な体験」をしてみたいです! 


【参考】
Ada INVITATIONS, 「Yves Klein, LE VIDE, Galerie Iris Clert, Paris, 1958」,<
https://ada-invitations.de/cpt-einladungen/yves-klein-iris-clert-paris1958/>

Artsy, 「Yves Klein」, <https://www.artsy.net/artist/yves-klein>
現代アートの歩き方, 「イヴ・クライン」,<https://www.contemporaryart-walk.com/artist/yves-klein.html>

金沢21世紀美術館,2022, 「時を超えるイヴ・クラインの想像力 ー不確かさと非物質的なるもの」,
<https://www.kanazawa21.jp/yvesklein/>

SDアート, 「フランスの芸術家 イヴ・クライン(Yves Klein)の青の世界/その霊性の源とは」, <https://sdart.jp/archives/884>

SOCKS, 2019,「Two Exhibitions at Iris Clert Gallery, Paris: Yves Klein’s Le Vide (The Void, 1958) and Arman’s Le Plein (The Full-Up, 1960)」, <
https://socks-studio.com/2019/11/23/iris-clert-yves-klein-the-void-arman-the-full-up/>

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?