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支払いは現金で

僕は彼女が人知れず既婚者であることを知っていた。しかし、それでも正直に言えば彼女のことが好きだった。


彼女はときどき薬指から指輪がなくなるらしい。それはどんなタイミングなのだろうと観察していたが、僕が見る限り薬指に指輪をしているところを見たことは一度もなかった。


彼女は仕事終わりが一緒になると、ご飯を奢ってくれた。彼女の行きつけの店に行くこともあれば、僕が美味しい店を紹介することもあった。


お金はいつも彼女が気前よく払ってくれた。どうして僕にそんなに良くしてくれるのか分からなかったが、一緒に過ごす時間は僕にとって大切な時間だった。彼女にとってもそうであるといいなと心の中で思った。


彼女は支払うとき、いつも現金で払った。そして、レシートをいつもその場で捨てることも欠かさなかった。

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