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日記 | 今日の珈琲。

 突然話しかけられ、片方だけイヤホンを外した。今日もその瞬間まで彼女がいることに気が付かなかった。私は基本的に店員の顔は見ない。

 私が聞きとれなかった言葉を、店員の彼女は笑顔で繰り返した。

女「今日の珈琲、美味しかったですか?」
青「あ、はい。美味しかったです……(?)」

女「その珈琲、わたしがいれたんです」
青「あ、そうなんですか。珈琲、いれられるんですね」

女「いれられないと思われてました?ハハハ」
青「何となく、役割分担してるのかなって」

ハハハ。
なんのはなしですか。

青「ここの珈琲はいつも美味しいですよ」
女「なんか、言わせてるみたいになっちゃいましたね♡」



 週に二回、決まった時間にカフェにいく。その地域にはそのカフェしかないから選びようがない。
 その店に、いつからか私に話しかけてくるようになった女の店員がいて、毎回「好きです」とか「憧れます」とか「会えて嬉しいです」とか、キラキラした瞳で私を見つめながら言ってくる。

 最初は気まずいし、意味がわからなくて戸惑っていたけど、最近は諦めて多少会話をするようになった。

 今ちょうど長編小説の二度目の推敲をしていて、今日は珈琲を飲みながら原稿に目を通していた。すると彼女が近づいてきて「なんの……ですか?」と訊いてきた。

 前にも小説を書いている途中で話しかけてきたから、適当に流した。だから改めて「なんのお仕事されているんですか?」と訊いてきたのだった。同時に思い切り原稿を覗かれ、ぎょっとした。
 再び曖昧な返事をすると「ほんと憧れますぅ~」と言いながら去っていった。

 ちなみに彼女はこの春高校を卒業したばかりらしい。というのも先日、唐突にこんな報告をしてきた。

「大学の入学式だったんです」

 私はこの時も仕方なくイヤホンを外した。

青「あ、そうなんですか。ご入学おめでとうございます」
女「え、めちゃくちゃ嬉しいです!ありがとうございますっ」

青「……。今日、入学式だったんですか?」
女「今日はガイダンス?  で、入学式は明日なんです」

青「(入学式だったって言ったじゃん……)そうなんですね。頑張ってください」

会計時、レジには彼女が立っていた。

女「またくるの楽しみにしてます」
青「(言い方……) ありがとうございます」

店員と客のセリフ逆じゃない?   と思いながら足早にその場を去る。






 現在、村上さん方式で長編小説を仕上げているので、書き終えて一ヶ月寝かせた原稿を優しく揺り起こして書き直す作業に入っています。(これをあと一、二回繰り返します)

 この作業を終えたらいったん知人に読んでもらう予定です。どんな感想を貰えるのか、すごく楽しみ。
「なんのはなしですか」と言われないように推敲を重ねていきます。

 同時に創作大賞用も考えつつ……。
まだなんの構想もないけど、何か書ける(はず)と自分を信じたいところです。





ホーム画面の画像を変えてみました。


ハシビロコウちゃん




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