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青豆の自己満足

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自作のショートショート・短編小説の中で、気に入っているものを纏めます。 他人の評価は関係なく、自己満足のためにここに集めていきます。
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記事一覧

掌編小説 | 銀ノ月 |#君に届かない

 せっかくの月夜にあなたは来てしまった。女はそう思った。  ひとり静かに湯に浸かり、ガラ…

青豆ノノ
8時間前
49

掌編小説 | 家族

 インターホンのカメラに映らないように顔を隠した。 「だれ?」と姉が訝しむ。 「わたし」と…

青豆ノノ
8日前
123

掌編小説 | レディー・キラー

 〝花 吹雪〟と書かれた名刺を渡された。綺麗な名前だねと言ったら、左隣に座るその女性は僕…

青豆ノノ
3週間前
123

掌編小説 | わたしの石

 小さな船の冷たい床に寝転がり、空に浮かぶ男の人を見ていた。  わたしは船に乗せている大…

青豆ノノ
1か月前
210

掌編小説 | 儀礼

※暴力的な表現を含みます。  平日の昼間だ。早朝から江の島観光をした帰り、新宿までの普通…

青豆ノノ
1か月前
97

掌編小説 | 出獄

 はじめて夫に触れたのは、彼の心臓が動きを止めて、およそ、三時間ほどが経ったころだ。  …

青豆ノノ
1か月前
113

短編小説 | スタートライン

 集合場所に集まった全員、メガネだった。夜行バスだからね、こうなるわなと最初に言ったのは隼人だ。ワックスをつけていないせいか、いつもより髪がさらさらして爽やかに見える。華のメガネ初めて見たかも、と言って私のメガネをひょいと奪った優里に、マジでやめて、見えないから、と返すよう催促する。湊おせえな、と隼人がスマートフォンをいじりながら言う。湊が時間通りに来るわけないじゃん、と言いながら優里は、手鏡を持ち、ひっきりなしに前髪を撫でている。そのとき、突然背後から声がした。湊、家出るの

掌編小説 | わたしの青

 あるとき、目に映る世界がすべて青になった。それは、幼かった自分がはじめてつくり上げた、…

青豆ノノ
2か月前
159

掌編小説 | 梅の花 | シロクマ文芸部 

 梅の花がいいと言ったら、渋いねと言った。その女は、オフショルダーのカットソーを着ていた…

青豆ノノ
2か月前
131

掌編小説 | リリー

マキは機嫌がいい。それは誰が見ても明らかだった。中途半端に伸びた髪が肩にあたり、はねてい…

青豆ノノ
3か月前
122

掌編小説 | ダンサー

すえた臭いが鼻を突く。アリスは顔をしかめた。たった今、男が一人暮らしをする部屋に、合鍵を…

青豆ノノ
3か月前
96

小説でもどうぞ、の結果でました。

以前書きましたが、11月に「小説でもどうぞ」という公募に一作送りまして。本日結果がでました…

青豆ノノ
3か月前
106

ショートストーリー | 膿

かつて記憶の裏側に追いやった切り傷から、今になって膿が溢れてきた。 透明な液が流れ出して…

青豆ノノ
3か月前
91

短編小説 | 眠らない

 雨。  三人がけのソファをベッド代わりにしている。薄い毛布にくるまって目を閉じる。  足を伸ばしてもソファの端から端にすっぽりと収まる僕のからだは、同じ年頃の同性と比べて大きいのか小さいのか、よくわからない。  人に会わなくなって、人と自分を比べることもなくなったら、自分のことがよくわからなくなった。  目を瞑り、ソファに収まって、耳だけは知らない誰かが発することばを聞いている。  誰かは恋愛について語り、誰かは今の世の中について語っている。全部嘘かもしれない。  世の