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会議で話が長い人には、どう対応したらいいのか? /ファシリテーション一日一話


昨日はある地域の中間支援組織からご依頼のあったファシリテーション講座の打合せ。地域活動や市民活動を進める上で、どのように会議進行をするかは、日々の悩みだ。この組織では毎年夏にファシリテーション講座を開催しているようで、参加者からよく出る質問のひとつが、表題の「話が長い人対策」とのこと。

この質問、古今東西・組織の種類も問わず、よく出る質問だ。年長者を重んじる日本や東アジア特有なのかなと思いきや、ベトナム人や、ケニア人、アメリカ人にも同じ質問をされたことがある。「うちの集落の年寄りは話が長くてねぇ、その人が話し始めると、皆、聞かないといけない感じになって、うつむく人が増えてしまうんですよ。そうなると活発な会議からはほど遠くて、、」という具合だ。同じ悩みを抱えている人は、世界中にいる。

僕はまぁ、のんびりしたタイプのファシリテーターなので、長話を聞くのは苦じゃない。まちづくりの会議などで「太平洋戦争の頃このへんは、、」と始まる古老の発言を30分聞いたこともある。聞く価値のある話とおもって伺えば、長話も悪いわけじゃない。ただ、ちょっとそういう時間を取れないシチュエーションの会議もある。

さて、その対策なのだが、これがなかなかやっかいだ。話が長い人というのは、大抵、目上の方、年配の方、情報をたくさん持っている方、その集団で地位の高い方であることが多い。だから「時間ですよ」とか「短めにしてください」「他の人も発言したいだろうから」と発言を遮るのが、人間関係的に難しい。だから世界中で同じ悩みの人がいるわけだ。仮に「ひとり3分以内で発言しよう」と会議のルールを決めたとしても、そういうルールみたいなものをお構いなしに破っていい感じの立ち位置の人が「話が長い」ので、頭を抱えるわけである。

ジャブを打つ

テクニカルには、こういうやり方もある。会議のグランドルールなどを説明したのちに、そこを念押しするためのジャブを打つのだ。「今回の会議は、色々なお方の声を聞いておきたいので、お一人の発言を3分以内という目安にさせて頂きたいと思いますが、ご了承いただけるでしょうか?」と皆に了承をとる。そのうえで「もしも3分を超えるようでしたら、進行役の僕が、お話しされている方のおそばに近づいて、お時間をお知らせします。それが例え、理事長さんのご発言でも」などと言って、その空間で一番えらそうな人のそばに、試しに近づいてみせる。こんな感じでね、と。「まぁ、お話が長いと嫌われてしまうのはよく聞く話なので、今どきそんなことする人も、あまりいないでしょうが、念のためこういうルールにしておきましょうね」などと釘を刺しておくのだ。こうすると、一度、冒頭でデモンストレーションをかねて近づいているので、目上の人へのタイムキープが、ほんの少しやりやすくなる。(そういうコトを言い出せないぐらい凍り付いている場合もあるが)

タイムキープは一例目が肝心

実際のところ、どのタイムキープでも、一例目が肝心だ。誰かの発言が本当に3分を超えたとき、ファシリテーターがどう動くかで、場は決まってくる。それを見過ごせば、次の人は5分、その次ぎの人は7分と「冒頭にあぁは言ってたが、実は長く話しても大丈夫な場だな」となる。なので一人目の長話が出たときが勝負所。そのとき、勇気をもって席を立ち、当人のそばに一歩、一歩近づいてみよう。すると会場中の人が、ファシリテーターの動きに注目をする。僕ならそのとき、すました顔で、芝居がかった動きをして、ユーモラスにやりたい。段々近づくにつれ、皆がくすくすと笑い出す。話している当人も「あー、時間か!」と気がついて話を収束させていく。そういう感じで、僕はタイムキープすることがある。思えば体を張った芸とも言える。

ユーモアのあるタイムキープを

大事なのはユーモアだ。冷酷に「チン」や「ピピピ」と鳴らしてタイムキープをする方法もあるが、それをやっていくと、なんとなく場が冷めていく感じが気になる。笑いやユーモアを交えながら、当人のお話しを伺いながらも、ギリギリへそを曲げない形で、うまくタイムキープしたい。まぁ、そうやって目上の人にも気を使いながら、僕は会議進行をしている。

ほかにもこんな方法もある。皆が触れる場所に、ひとつ鐘を置いておく方法だ。「誰かが話しが長すぎたり、他の方の声も聞きたい、話題を本題に戻したいなと感じたら、誰でも鳴らしてよい鐘です。みんなのよき話し合いの場を守ってくれる鐘と捉えて下さい」と、その位置づけを明示しておく。すると、誰かが長い話をしはじめると、すっと、腕が伸びてくる。実際には鐘の音は頻繁には響かず、その伸びた腕を見て、長い発言や不適切な言動が収まっていく、というしかけだ。これは、実際に何度かやってみたが、かなり面白い。ぜひお試し頂きたい。

うっかり長い話をするのは誰か?

ところで、自分が48才になると、気がつくとそのグループで一番の年長者だったりもする。うっかりすると自分が長々と自説を述べ、皆が聞いてくれている状況に出くわす。おやおや、話が長いのは僕のほうだったと、その場で気がつくときは、まだいい。気づかずに、腹一杯ながながと話して、若手にたんまりと聞いてもらった会議終了後、トータルで収穫が少なかったことに後から気がつき、自分に幻滅する。そう、誰しも年を取ると話が長くなりやすい。僕も同じなのだ。

ここだけの話し、若いころ尊敬していた先輩ファシリテーターたちが、年を取るとこぞって長話するのを冷ややかに見てきた(笑)。それが、今、僕の身に起きつつあるのだ。

年を取ると、話せること、伝えておきたい経験、自分たちがやらかしてきた失敗からの教訓なぞが、山のようにあるのだと思う。それをしゃべりたくなるは、道理だ。お若い皆さんも、明日は我が身、いずれ行く道。なにも年齢を重ねなくても、自分の経験が豊富になったり、周りに比べて持っている情報が増えたりすると、すぐにこの構図になりがちだ。くわばら、くわばら。ともに気をつけましょう。

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