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岸本さとこが杉並区長に当選できたのは、なぜか?

6月19日に行われた杉並区長選挙で、新人の岸本さとこさんが当選しました。現職の田中良候補との票差はわずか187票。政治家としての知名度は無名だし、杉並に深いゆかりがあったわけでもない新人が、なぜ、現職区長をやぶって当選することができたのか? その理由を考えてみようと思います。三つ巴選挙だったから? 女性の候補者だったから? 与党や現職に逆風が吹いてたから? そのあたりの理由もあるだろうけど。ちゃんとした分析はこの新聞記事が適切かなと。

僕は政治評論家でもないので、そのあたりは専門家にまかせて、彼女とつきあいが長い、いち友人の観察と思って、以下、聞いて下さい。

応援にかけつけたくなる

そうそう、岸本さとこさん(以下、さっちゃん)とのつきあいは、僕が19歳のころからなので、実に27年になります。当時、僕が活動していた青年環境NGO・A SEED JAPANで、同時期に活動した仲間なんです。旧友というか盟友。
SDGsとかいう言葉が生まれる20年以上も昔の話ですが、ワカモノやこれから生まれてくる未来世代の声を国連や政府に伝えようという活動をしていた私たちは、日夜「日本政府はもっと環境施策をこうすべきだ」とか「大企業が本気で環境対策するには、どういう仕掛けをつくるべきか?」なんてことを議論し、実際、国際会議にでかけていったり、企業や国や自治体に提言書を持っての働きかけをしていたのでした。金も力もないワカモノが、巨大な国際企業や政府に何かを言っても相手にされないことも多く、正直いって勝ち目のない戦に無謀に挑む感じもありました。
そんな活動をするなかで、さっちゃんは、気持ちよい人柄と正直な言葉を持って、がつん、がつんと、正面からぶつかりながらも対話できるすばらしいリーダーでした。当時、一緒に活動した仲間達は、ゆうに100人を超えていて、その多くが、さっちゃんの存在を、深く、印象的に感じていると思います。思い切った提案も行動するけれど、対話のすえ、相手の言ってることに理があると感じたら、率直にそれを認めることができる人。

今回の選挙戦でも、遠方からつぎつぎと仲間がかけつけて、応援している様子がSNSから伝わってきました。「いざというとき、仲間がかけつけ、応援したくなるような活動家だった」からこそ、短期決戦の選挙を制することができたのかな、と僕は思います。

僕も、ちょうど選挙戦の初日にあたる日曜日に、東京出張があり、応援にかけつけました。久しぶりに井の頭線にのって永福町の駅におります。予定の時間になっても、人だかりはありません。あれ、北口じゃなかったのかな? とぐるっと探してみると、支援者っぽい女性が2人、ダンボールに手書きで「杉並区長候補・岸本さとこ」としたためた物体を持っています。「うむ、この手作り感はいい。しかし全然人が集まってないぞ。この選挙、もしかして、負け戦?」と、正直僕は思いました(笑)。「まもなく候補者来ます」といった声がきこえ、街宣車からさっちゃんが降りてきます。

「あれ、マーキー?」10年以上あってないのに、駅のベンチに座って遠巻きに見ている僕をみつけてくれ、近寄ってくれるなり「久しぶり〜」と再会のハグ。時空を超えて、さっちゃんの存在を感じました。
「淡路島から、応援にかけつけたよ、さっちゃん」「なんだよ、何にも連絡しないで〜。いきなりでびっくりしたじゃん。でも来てくれて、うれしい」と、短いやりとり。あー、なつかしいな、この感じ。と余韻にひたる僕に「マーキーも、何か話してよ」と応援演説のお誘い。「あぁ、もちろん。よろこんで」ふたつ返事でマイクを預かることにしました。

人だかりなどなくても、すっくと立って、元気よく語り始めるさっちゃん


アスク・アーリー

昔、さっちゃんたちと一緒に活動していたころ教わった活動鉄則で「アスク・アーリー アスク・オッフン アスク・アゲイン」というのがあります。ここでのアスクというのは「人に何か仕事を頼む」という意味ですね。ボランティアや応援にかけつけてくれた人には「ちょっと様子みててね」じゃなくて「その人が貢献できそうなことを見つけて、すぐにでも何か頼め」という意味です。やる気を出して到着したそのエネルギーを逃すな!という意味ですね。自発性は揮発性とも言われる由縁です。「私も手伝いたい」という気持ちが消えてなくならないうちに、さっさと活躍してもらうのがコツ。さっちゃんは、その教えを守って、自分の演説の予定を変えて、すぐに僕にパスを回してくれました。きっとこの調子でかけつけた仲間達や応援者さんたちに、つぎつぎと何かお願いしているんだろうな、と、想像して嬉しくなります。仲間を信頼してパスを出せる力が、さっちゃんには、あります。それって、とても大事なこと。

というわけで、僕自身、人生初の応援演説です。「永福町駅においでのみなさん、淡路島から来ました、青木マーキーです!」と挨拶すると、一瞬だけ、何人かがこっちを見てくれます。そして、数秒聞いて、足早に改札に消えて行く。そうか、こういう短い時間でアピールをするのが街頭演説なのね、と感じながら、なるべく短く、しかし、いち友人としての気持ちを込めた言葉を選んで話してみました。(興奮した。もう、何を話したかは、覚えてない。でも面白かった)。

仙台からきた応援者は水道民営化反対のバナーを持参していた


質問や発言を歓迎する


候補者の基本政策と、その日かけつけた応援者による演説(僕に加えて仙台からの飛び入り応援がもう1名いた)のあと「それでは、質問・発言タイムに入ります。私の選挙活動は対話を大事にしたいと思っています。杉並区政に関して、疑問に思っていることや、言いたいことがある方は、どなたでも声をきかせてください」と、さっちゃんは(まばらな)群衆に声をかけたのでした。群衆はいっしゅんひるみます。候補者や応援者の演説をきいているだけでよかったはずが、急に発言を求められます。主体性のスイッチが入る瞬間でもあり、僕としては興味深いシーン。永福町の駅が、いっしゅん静まり、誰かの手があがるのをさっちゃんは待ちます。
すると「あの、じゃあ聞かせてもらいますが、、」と1人目は応援団っぽい人が質問。「あぁ、これはサクラの質問みたいなもんかな」と思って聞いていると、だんだん普通の住民や通りすがりの人が、質問をはじめます。「たすきにも、女性候補と、女性を強調しているように見えますが、その心は?」とか、自転車のっているおじさんが「わたしは建築の仕事を杉並でしているんだけど、××みたいな条例ってできないの?」みたいな質問とかが出始めてくるのです。インスタライブでもあがっているらしく、インスタ経由でも質問が届いていました(そうか、群衆がつめかけなくても、聞いてくれてるひとがいるって、すごい)。
さっちゃんは、それらの質問や発言にひとつひとつ答えてゆきます。そのなかで、杉並区の現状を数字を交えて話したり、世界各国と比較して話したりしつつ、最後には「わたしの政策としては、こう考えています」とハッキリと答えている。あぁ、短期決戦だけど、この候補者は、杉並のことを本当によく考えて、勉強して対峙しようとしているな、と僕は感じました。路上であっても、対話を大切にできる。それは一人ひとりの区民を大切に思っているからこそ、できることです。さっちゃんも、すばらしいファシリテーターだな、と感じました。

政治家こそ、ファシリテーターであってほしい。それができる気がしてきた


フェアな立場に立つ


演説の中で印象的だった発言は「私は、今の区政について、この点は評価しているんです」というところ。現職も候補者として、ライバルとして出馬しているなか(そして圧倒的に現職有利といわれていたなか)、その候補者がやっている政策について、評価している点、素晴らしいと感じている点については、そう伝える気持ちよさ、もありました。なんでもかんでも反対、反対、じゃないスタンスなんだな、という印象を僕は持ちました。さっちゃんは、昔から「フェアであること」を大事にしてきたリーダーです。
確かに立憲民主党やれいわ新撰組など野党系の推薦・応援があったので、野党候補のように捉えられがちですが、「地域のお金を地域で回す。地域を守るといのは、保守もリベラルもないんだ」といった立場を超えたスタンスもまた、今回、杉並区民に届いた要素なんじゃないかな、と感じています。Youtubeでも地区の皆さんとの対話の様子が残っているので参考に。

あきらめないガッツ!


さっちゃんは、昔からガッツがありました。ワカモノで力がなくても、状況が不利でも、正面からぶつかっていけるガッツがある。それって、本当に大事なことだな。新しい区長として就任すれば、たくさんの苦難があると思います。持ち前のガッツと行動力で、住民とともに、意見の異なる人とも対話をつづけて、ステキな杉並区をつくっていってほしいなと思います。僕もファシリテーターとしてお手伝いできること、友人として支えられることを、なるべくしたいと思います。おめでとう、さっちゃん!

というわけで、いち友人が見た、岸本さとこが当選をした理由でした。「応援にかけつけたくなる」「アスクアーリー」「質問や発言を歓迎する」「フェアな立ち場に立つ」「あきらめないガッツ!」の5点ですね。みなさんは、どう思いますか?

杉並区ってどんなとこ?

杉並区は、人口56万人。高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪といったJRの駅や、永福町、高井戸、久我山といった井の頭線の駅がある住みやすいエリア。都心へのアクセスもよく、緑地もいい感じの居酒屋も、古着屋さんやライブハウスやアニメスタジオもけっこうあって、文化的にも面白いところ。僕が東京時代に住んでいた三鷹市のお隣なので、なじみのあるエリアではあります。お友達も何人か住んでいます。これをご縁に、足を運んでくださればと思います。

選挙にいこうぜ

そして、やはり、今回は僅差での勝利でした。もしかしたら、あのとき永福町の駅で話を聞いてくれただれかが投じた一票が、今回の選挙結果を変えたんじゃないなかと思うと胸熱です。これから参院選もあります。みなさんの地域でも市長選挙や区議会選挙などもあるかもしれませんね。一票、一票を大切に、ぜひ選挙にいって、意思表示をしましょう。投票率をあげるだけでも、意味あることです。ご近所で、こんな活動をするのも効果的かも


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