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総合型選抜は教育の“地域間格差”を是正する鍵になる?

こんにちは。日本アクティブラーニング協会理事/人財開発教育プロデューサーの青木唯有(あおき ゆう)です。

これまで、総合型・学校推薦型選抜(AO・推薦入試)指導に多く携わってきた経験から、総合型・学校推薦型選抜に象徴される大学受験の変化から見えてくる様々なことを、本ブログにて定期的にお伝えしています。
このような情報や視点を、受験生だけでなく保護者の方にもご認識いただき、大学受験を通じて形成される豊かなキャリアについて親子で考える際のきっかけとしていただければと思います。
※2021年度入試からAO・推薦入試は「総合型選抜・学校推薦型選抜」と名称が変わりますが、本ブログでは便宜的に旧名称を使う場合があります。


教育改革の一つの柱である大学入試改革について、昨年、当時共通テストに導入する案が出ていた民間英語資格の導入に対する文科大臣による「身の丈に合わせて頑張ってもらえれば…」という発言が大きな物議を醸しました。

これは、大学入試において大きな影響力をもつ共通テストの英語を民間英語資格試験に代替した場合、その受検費用負担をどうするのか?受験生の家庭の経済力によって格差が助長されるのではないか?という懸念から生まれた波紋であったと思います。

このように、経済格差がそのまま教育格差に繋がってしまう状況に対する強い抵抗感が生じるのは世間一般の感覚として当然のことだと思います。
ですが、日本の実情を見てみると、経済的に困窮している世帯と困窮していない世帯の子供との学力は、10歳を越える頃から大きな差が現れるということが示されています。
また、日本の子どもの貧困率は7人に1人と言われており、こうした貧困率は都道府県別に見るとかなり差があり、特に首都圏外に在住の世帯の方が収入が明らかに低い状況にあることがわかります。
地域間の経済格差がそのまま若い世代の教育機会に影響を与えているということは、非常に由々しき問題です。

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ただし、その教育格差を示す場合の根拠として示されるデータの多くは、いわゆる「偏差値」に代表される認知学力です。
ですが、これまで、AO・推薦入試、いわゆる総合型選抜入試のような脱・偏差値による全く異なる基準の選抜の観点から見ると、実は、そうした経済格差を打破できるのではないかと感じることが多くあります。

これまでの日本の多くの受験産業では、知識や技能を鍛え偏差値を上げるためのノウハウやメソッドを確立し、それらを体系化してサービスとして提供することを生業とする形態が一般的でした。要は「スキルの獲得に対するサービス支援」が主なビジネスモデルだったのです。
前述に挙げた英語4技能を問うための民間資格試験の活用においても、まさにそのスキルを証明するためには資格試験を受検するための経済力が必要になります。さらに、そうした資格試験のための技能獲得においても対策を享受できるかできないかは家庭の経済力に依存し、格差が助長されてしまうということが大きな問題となり、待ったがかけられたのだと思います。

共通テストとは異なる総合型選抜入試においても、英語資格試験が必要となるケースも少なからずあります。ですが、それはあくまでも一部の要素であり、合否を決する主軸はあくまでも受験生の人物としての魅力や大学とのマッチングになります。
つまり、以前の記事でもお伝えしましたが、偏差値などの認知能力以上に「非認知能力」の方を問われるのが、総合型選抜の最大の特徴なのです。

英語4技能資格試験の導入の問題に象徴される経済力の格差が起因となる教育格差が問題視されていますが、私は、この「非認知能力」においては、まったく別の見方があると考えています。
それは、これまで総合型選抜の指導で出会った首都圏以外に在住していた受験生の様子から強く実感したことです。
彼らの多くは最先端の教育環境で学ぶ機会がなかったり最新の受験情報も入手しにくかったりしています。ですが、首都圏外に在住している中高生の方が豊かな非認知能力を有していると感じることが度々ありました。

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経験したことのない状況に対する好奇心、自らの感性に素直であり飾りのない実直な表現力、自分が知らないことを愚直に学ぼうとする懸命さ、、、言えばキリがないのですが、人間としての生々しさだけでなく、何といっても“伸びしろ”ようなものを首都圏外の高校生からよりダイレクトに感じることが多かったのです。

日常的に最新の受験情報に接するのはどうしても都市部の高校生の方が有利でしょうし、質の高い学習教材での学びについても家庭の経済力に左右されることでしょう。
ですが、そうした教育環境で手にできるスキルは、認知能力の部類に入るものばかりです。

一方で非認知能力の育成については、そうした認知能力の支援とは全く異なります。四季折々の変化を体感したり満天の星空を見たりなど、都会にはない豊かな自然環境がこうした目には見えない資質を伸ばす一つの要因になるという専門家もいます。

これまで経済的な支出を負担して獲得したスキルとは全く別のアプローチが非認知能力あるとするならば、その資質が問われる総合型選抜という入試は地方在住の若い人財にこそ光を当てられる選抜になると言えるのではないでしょうか?

”大学入試は情報戦”とも言われ、特に総合型選抜入試についてはなかなか確かな情報が得られず、躊躇してしまう首都圏外の方が多いという話もよく耳にします。
ですが、そうした方こそこの新しい大学入試を自らのキャリアを切り開く大きなチャンスとして是非とも前向きに検討されると良いのではないかと思うのです。

次回記事のテーマは、“合格してから進路を決める総合型選抜のメリット”についてです。お楽しみに。

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