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紙幣よりも価値ある紙(映像作家 林 響太朗さんインタビュー)

アオキ
こんにちは、今日はよろしくお願いします。


林 響太朗さん
よろしくお願いします。


アオキ
今日は idontknow.tokyo のみんなで、林さんのオフィスである DRAWING & MANUAL にお邪魔しています。

アオキ
いやあ、昨年末の青山ブックセンターのトークイベントではありがとうございました。

イベント『道具とか映像とか』の様子

林さん
いや、こちらこそです。楽しかったです。


アオキ
実はあのイベントが僕と林さんと初めてのリアル対面だったので、僕はめちゃめちゃ緊張してたんです。ストイックな、ピリピリした人だったらどうしよかなとか。


林さん
いや、ストイックですよ。

林 響太朗さん
「DRAWING AND MANUAL」所属。Mr.Childrenの他、BUMP OF CHICKENや星野源、米津玄師など数多くのMVを手がける。

ツノダ
僕もあのイベントは客席から見てたんですけど

ツノダ
「ストイックだったらどうしよ」って言ってた青木さんも、僕から見たら十分ストイックなんですよ。


アオキ
まあ、ものづくりにおいては、かもしれないです。


ツノダ
そうそう。だから通じ合う二人のじゃれあいがめっちゃ面白かったですよ。

アオキ
そのイベントの中でお互いに「アイデア出しってどうやってますか?」って話をして。林さんは、けっこう画面上で行うことが多いって話してて。

「僕たちはMETHODっていう道具を使って紙に描いてアイデア出しをしてますよ」って言ったら、林さんからすごく興味を示してもらえて。

アオキ
イベントが終わってすぐに、METHODを1つお贈りしたんです。そしたら到着した日に、すぐに追加で三個も購入いただけて。

idontknow.tokyoのMETHOD

アオキ
それだけでなく数日後、僕宛てに写真付きでDMが来て

「青木さんこれは革命です。素晴らしいツールを生み出してくださってありがとうございます!!!」って。

アオキ
描き終わった紙の束を
「これだけで財産。お札より価値ある
って言ってもらえて。

アオキ
僕たちも普段使ってMETHODの凄さは実感していたものの、他の人にとってどれくらい価値があるかわからないじゃないですか。

林さんにはこの凄さがわかってもらえた!ってめっちゃ嬉しかったです。


1.数多く並べると見えてくる


林さん
僕もPCだけじゃなく手描きはしていたんですけど、ノートとかA3用紙とかにしてたんです。でもMETHODはサイズが絶妙だったんですよね。

林さんがこれまでに描いていたA3のメモたち

林さん
METHODの紙サイズだと、つなげて広げることもできたり、"ふせん"みたいに並べることもできちゃう。ここが凄いなと。

ちょうど最近、ものすごくリサーチをしてから撮影をしなきゃいけないっていうタイミングがあって。


アオキ
リサーチ、というと。


林さん
僕の卒業校である多摩美のプロモーションをするという仕事があって。学校にはわりと良い景色がたくさんあるから、偉そうな言葉を使うんじゃなくて、そういった景色をたくさん撮影したいなって。

実際にどんな景色があるのかを十五学科すべて見て回ったんですよ。学生たちに話を聞いたりしながら。

アオキ
へえー!それがリサーチということなんですね。時間かかりそう。


林さん
はい。1日に二学科くらいしか回れないんで、かなり時間かかったんですけど。やっぱり知らなかったことが山ほどあって。

リサーチの最中はもちろんiPadで撮影したりしていたんですけど、今回はちょっと、青木さんたちの『METHOD』を使ってみたいなと思って。みんなで見てきた景色について話しながら、A6の紙に描き出してみたという。


ツノダ
それがこの写真で並んでいるやつですね。

林さん
そうそう。多摩美の「自由と意力」っていうコピーがあるんですけど、このコピーの意味が、A6用紙に描いた絵を並べることで初めて見えてきたんですよ。

空間を与えているっていうのが多摩美の「自由」だとして。

学生たちの考えている事とか思いとか、そういうのが「意力」なんだと。

それらが掛け合わされているのが多摩美ですよって、そこに行き着いたんです。並べていった時に。

もともとのプランとして「引きから寄りで撮っていこうかな」みたいなことは考えていたんだけど、その景色と、この言葉が、一気に結びついた。


アオキ
結びつけようとしていたわけではなく、並べていたら「あれ…?」って。


林さん
「これだわー!これは自由だ、これが意力じゃん!!」って。

たとえば引きの写真や寄りの写真に「自由と意力」って文字が入るだけでだんだん景色になっていく。「これだ!」と思えたんですよ。

林さん
だから、自分達の足で行って、手で描いた、それを並べることで答えが導き出されたっていうのは、めちゃくちゃ良い体験でした。すぐにアオキさんにその時の様子を送りましたもんね。


アオキ
それが冒頭の「青木さんこれは革命です。」というメールですね。


林さん
もう「良すぎるーーー!!」ってなって。

その結果できたムービーがこの「多摩美術大学 自由と意力」。音を大きめにして、見てみてください!



2.だから会話の種になる


林さん
なんていうのかな、METHODの紙だとすごく気楽に描けるんですよね。アシスタントの彼(熊谷さん)は全然絵が上手くないんですけど、そんな彼が描くものもまた良いなって思える。

みんなでどんどんカードを並べていけるっていうのが凄いよかったなあって。


アオキ
何人でやってたんですか?


林さん
四人ですね。絵が上手い奴がいると面白いと思ったんで、僕の同級生で絵が上手いやつも呼んで。

その同級生はリサーチには参加していなくて、学生時代の記憶で描いてもらったんです。そうするとまた、違うカードも出てきたりして。

アオキ
わりと勘違いがプラスに働いたりとか。


林さん
そうそう、まさにそんな感じでした。今はこれを軸にひたすら撮影をしてるんですけど、これやって本当にめちゃくちゃよかったです。


ツノダ
いや、すごいね。

僕たち idontknow.tokyo は。


アオキ
え、そっちですか?

左から、アオキ、ハルタ、ツノダ

アオキ
僕たちはMETHODを、製品の企画アイデア出しのツールとして使っていたので、リサーチとそこからのプランニングみたいなことに使えるというのは面白いです。


ツノダ
確かにね。僕らは「絵・映像」というよりは「文字・絵」を書くことが多いから、違うといえば違う。でも根っこは同じ感じ。


林さん
やっぱりたぶん、絵コンテを描くのにちょうど良いサイズなんですよ。"ふせん"みたいにノリもついてないからサラサラと順番を入れ替えられるし、束ねて持っていけるし。

「めっちゃすげえな、この紙!なんなの!?」って驚きでした。

この1つのプロジェクトで300枚くらい使い果たしちゃったんで、すぐにアオキさんに紙の追加購入先を聞きましたもん。

左から、熊谷さん、林さん

熊谷さん
なんか楽しくなっちゃって。描きまくれるんですよね。はい次、はい次って。


ツノダ
紙が小さいから、どんだけ頑張っても限界があるから。かえって数多く描く気になる。子どものワークショップでもバンバン描いてたもんね。

子ども向けワークショップの様子

アオキ
プロダクトのアイデア出しとかだと、たとえば「空を飛んで家具にもなる◯◯」みたいなことを思いついたとして。そんなふうに複数機能があるものは、A6用紙の中には描き込めないんですよ。

だから「空を飛ぶ」で一枚、「家具になる」で一枚、っていうふうにアイデアを分解せざるを得ない。あれがすごく効果あるなと思ってて。

林さん
めちゃくちゃわかる。ペンの太さも絶妙だなって思いました。他の細いペンとかでも試して見たんですけど、細かく描き込み始めちゃって。影とかこうシャーって。「あ、シャーじゃねえわ」って。


アオキ
そうそう。サインペンでA6用紙に描くと、頑張っても上手くなんて描けない、あれが良いんですよね。


林さん
上手い下手が関係なくなる。会話の種になるってのが重要なんだなあって、やってて思いましたね。



3.やりすぎてないのが良い


アオキ
ちなみに僕は一人でアイデア考える時にはA4用紙を使うんですよ、でもチームでやるときは、このMETHODのA6用紙がめっちゃいいなと思ってて。


林さん
そう、めっちゃそう。だから僕も一人の時はA3に大きく描いたりiPadで描きたい時もあるし。なんだけど、最初に会話する時に、このA6用紙ってのは良いサイズだなって思います。

これよりも小さいサイズだと、また難しいんです。このサイズが最高。

林さん
逆に大きくA3に描いたりしたものって、なんか貴重みたいになって捨てられないんですよね。A6だと気軽に捨てれる感じがする。まあ実際には全部とってありますけど。


アオキ
わかります。実はうちにも12年分のA6カードが大量に保管してあります。

13年分のカードの山は僕らにとって宝物

林さん
すごい!


アオキ
いやあ、嬉しいなあ。

今更なんですけど、僕たち idontknow.tokyo の活動原理って、アスリートのためのスニーカーを作るみたいな感覚で、僕たちや林さんみたいな「アイデア アスリート」のための道具を作っていこうっていうものなんです。

だから本当に最前線で働いている林さんの現場で、こんなふうに使われるのはもう、最高な気持ちです。


林さん
実はその、現場で使ってみて1点だけ相談したいことがあって。


アオキ
なんでしょう。


林さん
僕らいくつかの拠点で仕事してるんで、METHODを箱ごと持ち運ぶんですよ。一度、カバンの中でバラバラになっちゃってたことがあって。

これ、持ち運べるようにしてくれたらもっと最高なのにな!って思います。


ハルタ
すぐに検討しましょう!!


ツノダ
それはもう、早急に検討させていただきます。

林さん
METHODの他にも、SLIT(スリット)とかHINGE(ヒンジ)とか、idontknow.tokyoさんの商品をいま見させてもらったんですけど、本当、やりすぎてないのが良いなって。

その辺のバランス感って、どう決めてるんですか?


アオキ
最初にHINGEを作った時は、もうあまりにも地味な製品なので、ぜんぜん自信なくて。正面に大きなロゴを入れようとか派手なカラバリも用意しようとか、いろいろ検討しました。

でも地味なままHINGEを発売した結果、本当に大きな反響をいただけて。
それで自信がついたので、HINGE以降のすべての製品で「地味でも大丈夫」って思ってやれてますね。


林さん
すごいですね。本当に必要なものだけを出すって感じ。

アオキ
目的がはっきりしているものって、シンプルにしやすくて。HINGEなら「コピー用紙に描きたいから、コピー用紙以外の要素は目立たないほうが良い」って思える。だから自信をもって控えめにできてますね。


林さん
なるほどなあ。



4.頭が柔らかくなる冊子


アオキ
でもMETHODは地味さにおいて、HINGEよりさらに悩ましかったですよ。発売まで二年かかってますもん。


林さん
そんなにかかったんですか!?


アオキ
一年くらいで作って、発売する直前で怖くなってしまって。


ツノダ
何なんだっけ?ってなるわけですよ。


ハルタ
むしろA6用紙の使い方を、ノウハウの情報としてWebで公開すれば良いんじゃね?とか


アオキ
なんでわざわざ、大きなリスクを背負って、プロダクトとして在庫を抱えて世に出すんだろうって。それで何度も製品化が頓挫しました。

でも最終的には「商品として世に出した方が面白いよね?」って。


ツノダ
そこからさらに、紙とペンだけでは価値を感じられないのなら、使い方のノウハウが詰まった冊子を同梱しようかって。冊子の開発をえらい時間かけてやってね。

METHODに同梱されている冊子

林さん
うおー、まさに僕思いましたよ。この冊子だ、これのために買ったんだなって思いましたもん。

いろんな、どのアイデアの出し方にも通じる書き方をされているから、あの冊子は大切に保管してますよ。

授業でも使えるなって思ったんですよね。使わしてもらおう。めちゃくちゃ頭が柔らかくなった気がしたんですよ。あの冊子読んでやってて。


アオキ
嬉しいです!


林さん
いや本当、こういう商品を作って世に出すっていうのが、いかに凄いか。これが言いたかった。

これからも使っていこうと思います。


アオキ
ありがとうございます!
今日はありがとうございました!






林 響太朗さんも絶賛愛用中!
METHODはこちら





記事の中で話題に出たアイテム

SLIT

HINGE



この日の様子は、Podcast「知らんがなラジオ」でも公開しています↓

この記事には書ききれなかったお話も聴けるので、よかったら聴いてみてください。



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