じゃんけん
「見える。見えるでぇ。われはぐーを出す」
「じゃあ、乗ってやろうじゃないの。お望み通りぐーを出してやろう。どうだ、未来は変わったか」
「いーや、ぐーじゃ」
「ほお?」
いつもの謎のポーズで予言をする20代女と心理戦を持ちかける20代男。
心はまだまだ小学生。
儀式が終わり始まる決闘。
「じゃんけん・・・ぽん!」
チッと舌打ちして財布から小銭を出した。
「男なら女に奢るものじゃろ」「というか漢気じゃんけん知らんの?」とかぶつぶつ言いながら自販機のボタンを押す。散歩の休憩に男も女もない。大体、勝率で言うなら彼女の方が圧倒的に高い。
「いいでしょ、たまには負けるのも」
カシュっ、と気持ちのいい音が昼の晴れ空に響く。
港から少し離れた市場の、その公園。短く刈られた芝がサラサラ揺れる。波は穏やか、芝生はさらさら、君はぶつぶつ文句。
市場には平日にもかかわらず観光客がちらほら見られる。
「でかい金魚、売ってるかもよ」
「金目鯛じゃろ」
「学習したんだな、えらいえらい」
「バカにしてんのか」
君は僕のコーラを奪い取ろうとしてきたので、僕は咄嗟にもちかえ遠ざけた。トンビみたいな女。君はグエーと僕の太ももで伸びている。
「……あお、なんかうちと同じ匂いするな」
ズボンに脚に顔を埋めたまま言った。
「一緒に洗濯してるからな」
彼女はしばらく黙ってから「…そりゃそうか」とむくりと起き上がった。コーラは無事だ。
僕らは缶を潰してゴミ箱に捨て、坂を登ってアパートへ戻る。
水曜日の昼下がり、夕飯どうすると話し合いながら。
生活費になります。食費。育ち盛りゆえ。。