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金目鯛の唐揚げ

「それどうしたの」

「大家さんにもらった」
赤くて目がでかい魚。多分、金目鯛。

「それ結構お値段するんじゃないの」
「そうなの?このでかい金魚が?」
「それ金目鯛だよ」
「ほお・・・」

多分、わかってないな。
港町に住んでるくせに。

「あお、これどうやって食うの?」
「煮付けが定番って聞くけど、君そういうのあんまり好きじゃないでしょ」
「うちは鮎の塩焼き派かな」
「……焼いて、塩かけたのが好きなんだね」
「うん、原始的でしょう」

スマホで『金目鯛 調理』とググると煮付けばかり出てきたが、諦めずにしばらくスクロールしていると唐揚げのレシピが出てきた。

「じゃあ、よろしく」
「え、俺がやんの?」
「うちがやったら家、燃えるよ」

確かに。
一緒に住み始めた頃、未遂事件が何回かあった。
「あんましお金ないから料理はやる」と言って任せたのだったが、このままでは家がなくなるのでやめてもらったのだった。

僕はその日のうちに業務用消火器を2つ買った。
そして届いたその日に1個シミュレーションした。

・・・

家に片栗粉がなかったので一緒にスーパーで買いに行った。

彼女は僕が目を離すとお菓子を持ってくるので目を離さないように注意しながら買い物をする。こういうやつなのだ。

唐揚げは美味しかった。

家も燃えなかった。

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