「小説読まないよね、小説家なのに」
僕の部屋でゴロゴロ漫画を読んでいる彼女。紙でもタブレットでも。ジャンルは縦横無尽、なんでも読む。エログロサイコサスペンスからキュンキュン学園ものまでなんでも読む。最近のブームは「音楽だけが生きがいの男の子とアクティブな女の子の音楽×恋愛漫画」らしい。
「…それは野球選手に『野球選手なのに野球しないよね』って言ってるようなもんじゃね」
「……いや、違うでしょ。野球選手は野球するでしょ。それを言うなら、」
「練習ってことかい?」
「まあ、そうかな」
「ふむ」
やれやれ、と彼女は起き上がり自分の部屋に戻って行った。
不貞腐れた?いや、違うな、これは多分。
しばらくすると電子レンジほどの大きさのダンボールをヨタヨタ持ってきた。
段ボールの中には案の定、というか、大量の漫画が詰め込まれていた。小説じゃないんかい、と言おうとしたとき、あることに気がついた。やけにボロボロなのだ。中古?いや、中古じゃない。付箋が貼ってあるし、折り目もついてる。これはこいつがやったのか。
彼女はそのうち一冊を開いた。
開いた拍子に小さなメモ書きがはらりと落ちた。
開いたページには赤線と付箋。
落ちたメモにはびっしりとボールペンで何かが書き込まれている。
「うちは漫画で小説書いとるんじゃ」
そこから彼女の授業が始まった。
「じゃ、受講料10万な」
だそうです。
というか、後で気づいたけど、彼女、同じ漫画2冊ずつ買っていました。