「じゃ」へ。
プロローグ
***
制限時間があるから、美しいと君は言った。
時間は不可逆の一方通行だから、なお愛おしく感じると君は言った。
その二つの縛りの中でこそ、幸福というものは形成されるのかもしれない。
しかしどうだろう。僕はいまだにあの、彼女と過ごした4年間に縛られている。楽しく振り返る日もあるし、泣きたいほど辛く返ってくる時もある。
だからといって、今すぐに、ポンっと「あの頃」を渡されても、望んだものは得られないだろう。
逆説的に見れば、限りがあるからこそ、幸福は成り立つ。
でも!!!
そんなことわかっている。僕は25歳ではないし、彼女は今どこにいるかもわからない。住んでいたアパートは取り壊された。今は全く違う街にいる。仕事も、人間関係も、何もかもが「あの頃」に取り残された。
ねえ、どうすればいい。
「こうなるのなら出会わなければよかった」なんて使い古されたセリフを自分でも使うとは思わなかった。
苦しく、虚しく、ずっと囚われている。
僕はあの、港町で彼女と過ごした4年間から逃れることはできない。
でもまた彼女の「じゃ」が聞きたくて、
思いついたのが「これ」です。
長くなると思います。強く残っている記憶から、そうでないモブシーンも、全部、なるべく掬い取ろうと思います。
書き終わったら、彼女に送ろうと思います。宛先は知らないので、彼女の本を出していた出版社に送るしかありません。
届かないかもしれない。
でもあわよくば。
いつきが読んでくれたらそれだけでいい。
生活費になります。食費。育ち盛りゆえ。。