構成も語彙も統一感もめちゃくちゃだけど
「そんなん読んでるとつまらないもんになるよ」
『初心者向け小説の書き方』
「でも俺書き方わからん」
「書けてるじゃん」そう言って印刷された僕の短編を持ち出した。
「これさ、悲しいほど下手くそだけど」
「言葉選べよ」
「構成も語彙も統一感もめちゃくちゃだけど」
「ねえ」
「時々意味不明だけど」
「おい」
「うちは好きだよ」
特にこのシーンとか。
あおはさ、構成も語彙もキャラ作りも悲しいほど下手だけど。ちゃんと自分の型を持ってるんだよ。これマジだよ。あお、直接的な表現あんま使わないでしょ。特に大事なメッセージほど。会話でも心理描写でも。言わない、書かないでも伝えられる。これ結構すごいんだよ。プロのうちが言うんだから間違いない。だからそんなもん読まなくていい。変に基本に染まるとロボットみたいになっちゃうよ。綺麗で整った文章はAIに書かせとけばいいんだよ。うちはあおの小説が好き。下手くそだけど、ちゃんと伝わる。行の間に色や音や時間があって、不器用だけど奇妙なバランスで成り立っているというか、あ、そうそう、このシーンとかさ、音楽が鳴っているみたい。
彼女は僕から取り上げた『初心者向け小説の書き方』をゴミ箱にぶん投げた。
「あ、もし商業でやりたいなら読んだ方がいいよ」と付け加えた。
ぼくは次の資源ごみの日に捨てた。
生活費になります。食費。育ち盛りゆえ。。