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24 | 広島弁くっちゃべる作家と2人暮らし

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  • 『「じゃ」へ。』

    恋を知らぬ小説家の女と、 愛を拒絶する隠居男の同居譚

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固定された記事

エッセイ『紹介されたいよぉ』

こんばんは。あおです。 『「じゃ」へ。』はお休みです。今日は久しぶりに作者の僕のエッセイです。まじです。 特に隠れファンの方には、『「じゃ」へ。』の登場人物が「…

あお
22時間前
7

夢の中、草原とチョコミントを知っていた僕。

ああ、これは夢だなと思った。 だって中学の制服着てるし。 だって、いつきが横にいるし。 なんでか知らないけれど、二人で、同じ制服で草原にいた。 僕は無地の濃紺の…

あお
1日前
9

夜のアイスの時間。青いベンチと我ら二人。

なんかさー、と彼が言った。 夜のアイスの時間。青いベンチと我ら二人。 「書いててさ」 「うん」 「どう書いても誰かを傷つけるよなぁって思って」 「うん」 「モヤって…

あお
2日前
3

あ、それは資源ごみです。

「どーせさ、TikTokで”泣ける”だの”エモい”だのデーハーでミーハーなサムネで15秒でよーやくされてポチらせて5分で流し読みされて中古にポンよ、ついでにネットで”安…

あお
2日前
4

スランプ

「なごちゃんスランプらしい」 なごちゃんとはいつきの数少ない友だちで、作家の女性である。 「あぁ、この前来た」 「そうそう」「ダメダメらしい」 「新人なんでしょ?…

あお
3日前
7

雪の絵で自転車で夏のキャンパス

雪の絵を見て思い出すのが夏の記憶ってどう思うよ。 「フォローしとるイラストレーターさんのな、絵を見たんよ。雪の夕方、下校中の高校生が傘を下ろす絵」 それ見て大学…

あお
3日前
8

色付きワイシャツ

「色付きのワイシャツってええよな。なんか頭良さげだし、青春って感じするわ」 今日も僕が仕事をしている横で漫画を読みながらうっとりしている。 「俺のとこ水色だった…

あお
4日前
5

ちょっと褒めたくなっただけ

「ほらな、言ったじゃろ」 「言ってない」 「じゃけえ、うち先入っとる」 雨の日は水着で二人、風呂に浸かる。 傘のない誕生日に、下着の代わりに水着の彼女。自販機の明…

あお
5日前
10

びしょびしょの男女が2人、深夜のアイス。髪を結ぶ。

_____っわっっっ!!!!!!!!!!!!! 飛び起きるとケタケタ笑う彼女がいた。 「あお、ハピバ」 そうだ。誕生日だった。 「今夜、ひま?」 「いつもひまです」 …

あお
5日前
14

誕生日

設定ウラ話 古賀いつき 1997年5月29日(27歳) 5:い(いつつ、5) 2:つ(ツー、2) 9:き(きゅう、9) 1997年5月29日は木曜日(≒樹) 岸本あおい 1999年5…

あお
6日前
6

いつぞやの原稿用紙に生を感じる(後)

「あお、これ見たじゃろ」 ぴらぴらと原稿用紙をつまんでいた。 「あ、ごめん。キッチンにあったからつい」 「いや、怒っとらん」 「ん?」 「あお、うちの小説3本読んだ…

あお
7日前
10

いつぞやの原稿用紙に生を感じる

この前、キッチンにこんなものがあった。 いつきの小説の下書きだった。原稿用紙に乱雑に、暴力的に書かれた彼女の思想の原初。 一見過激なその思想。でもどこか惹かれ、…

あお
7日前
13

『「じゃ」へ。』は今日はおやすみです。

『「じゃ」へ。』は一旦おやすみです。 === 『「じゃ」へ。』をいつも読んでくださりありがとうございます。 週1くらいでエッセイ書こうと思います。

あお
8日前
5

「あ、袋あります」

旅行ですから。 * ICカードはあえて使わず切符を買って改札を通る。 最寄りの駅では入場口でスタンプを押してもらえるから。ICリーダーと人力?のスタイルの融合。僕ら…

あお
9日前
9

いつきのコラム『歪み』

あお
10日前
15

天才の書き方

この記事はマガジンを購入した人だけが読めます

あお
11日前
5
エッセイ『紹介されたいよぉ』

エッセイ『紹介されたいよぉ』

こんばんは。あおです。

『「じゃ」へ。』はお休みです。今日は久しぶりに作者の僕のエッセイです。まじです。

特に隠れファンの方には、『「じゃ」へ。』の登場人物が「あお」だったり、現実とフィクションどっちやねんみたいな書き方しているので最初にちゃんと言おうと思います。

この記事はこのアカウントの主のエッセイです。

もうほぼ40本連続で書いていますからね。こんなに楽しくて、没入できて、楽しい(2

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夢の中、草原とチョコミントを知っていた僕。

夢の中、草原とチョコミントを知っていた僕。

ああ、これは夢だなと思った。

だって中学の制服着てるし。
だって、いつきが横にいるし。

なんでか知らないけれど、二人で、同じ制服で草原にいた。

僕は無地の濃紺のスラックスで、彼女は同じ色の膝丈のスカートで、今より幼い顔をしていて、少しだけ意地悪そうな顔をしていた。

風に吹かれる髪と真っ白で一回り大きなワイシャツと彼女。腰まで伸びた夏草がなびく。

「あおい」と呼ばれた。だけどポケットから薬

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夜のアイスの時間。青いベンチと我ら二人。

夜のアイスの時間。青いベンチと我ら二人。

なんかさー、と彼が言った。

夜のアイスの時間。青いベンチと我ら二人。

「書いててさ」
「うん」
「どう書いても誰かを傷つけるよなぁって思って」
「うん」
「モヤってた」
「ふむ」
「いつきそーゆーのなさそうだけど」

いや、めっちゃある。けど。あるけども。

「ないな」
「でしょ」
「そもそも無理じゃろ」

これは本音だ。

「華やかな学園生活を描けば陰鬱な高校生を傷つけるし、親子愛を描けば毒

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あ、それは資源ごみです。

あ、それは資源ごみです。

「どーせさ、TikTokで”泣ける”だの”エモい”だのデーハーでミーハーなサムネで15秒でよーやくされてポチらせて5分で流し読みされて中古にポンよ、ついでにネットで”安っぽい”って書かれてトドメじゃ」

ふてる彼女と手元の新刊。

「虚しい商売だぜ」と自分の小説を放り投げた。「何ヶ月かけたと思ってんじゃ、15秒で要約しやがって」

なんでこんなに機嫌が悪いかというと、本の帯である。

薄っぺらいコ

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スランプ

スランプ

「なごちゃんスランプらしい」

なごちゃんとはいつきの数少ない友だちで、作家の女性である。

「あぁ、この前来た」
「そうそう」「ダメダメらしい」
「新人なんでしょ?」
「そう」「でも新人だからって、なあ、な世界じゃないけえ」
「まあそうだろうね」
「なごちゃん、今年から専業になったからプレッシャーもあるんじゃろね」
「いつきも最初は緊張してた?」
「今もしとるわボケ」
「全然見えない」
「そう見

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雪の絵で自転車で夏のキャンパス

雪の絵で自転車で夏のキャンパス

雪の絵を見て思い出すのが夏の記憶ってどう思うよ。

「フォローしとるイラストレーターさんのな、絵を見たんよ。雪の夕方、下校中の高校生が傘を下ろす絵」

それ見て大学の時のこと思い出したんよ。それも真夏。なぜに??って思うじゃろ。今が夏だからにせよ、雪の絵で?って思うじゃろ。

「無駄に広いキャンパスでな。夏休みじゃったけど研究室でレポート書いてたんよ。センセーおるからうちは通ってた。すぐ聞けるし。

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色付きワイシャツ

色付きワイシャツ

「色付きのワイシャツってええよな。なんか頭良さげだし、青春って感じするわ」

今日も僕が仕事をしている横で漫画を読みながらうっとりしている。

「俺のとこ水色だったよ」
「まじ?」
「まじ」
「写真あるよ」

僕は高校の写真を見せた。自分でも久しぶりに見た。

「…まじだ」
「でしょ」
「制服おしゃれ」
「それ、結構言われてた」
「ちなみに偏差値いくつ?」
「68くらい」
「さすがトーキョー」

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ちょっと褒めたくなっただけ

ちょっと褒めたくなっただけ

「ほらな、言ったじゃろ」
「言ってない」
「じゃけえ、うち先入っとる」

雨の日は水着で二人、風呂に浸かる。

傘のない誕生日に、下着の代わりに水着の彼女。自販機の明かりを頼りに結ばれた半端な髪をほどく。25歳の誕生日。

玄関で体を拭いて、自室で水着に着替え、濡れた服を脱衣所の洗濯機に放り込む。家の電気を全て消して、勘を頼りに戸を開ける。

ガチャガタッと歪な音を立てる浴室のスライドドア。

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びしょびしょの男女が2人、深夜のアイス。髪を結ぶ。

びしょびしょの男女が2人、深夜のアイス。髪を結ぶ。

_____っわっっっ!!!!!!!!!!!!!

飛び起きるとケタケタ笑う彼女がいた。

「あお、ハピバ」

そうだ。誕生日だった。

「今夜、ひま?」
「いつもひまです」
「そっかプーじゃもんね」
「はっ倒すぞ」
「じゃ、お楽しみは夜で」二ヒヒと楽しそうだった。

やっぱり、というか、その日は雨で。それどころか暴風雨で。

僕はイベントの日はいつも雨だった。小学校の遠足に始まり、修学旅行、受験当

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誕生日

誕生日

設定ウラ話

古賀いつき

1997年5月29日(27歳)

5:い(いつつ、5)
2:つ(ツー、2)
9:き(きゅう、9)

1997年5月29日は木曜日(≒樹)

岸本あおい

1999年5月27日(25歳)
→いつきの2個下だから

いつぞやの原稿用紙に生を感じる(後)

いつぞやの原稿用紙に生を感じる(後)

「あお、これ見たじゃろ」

ぴらぴらと原稿用紙をつまんでいた。

「あ、ごめん。キッチンにあったからつい」
「いや、怒っとらん」
「ん?」
「あお、うちの小説3本読んだって言いよったけど、どれ?」

僕はタイトルを3つ言った。

「その組み合わせはやばいの」
「全然書き方違うよね」
「それがうちのやり方」
「2人いるかと思ったよ」
「どっちもどれもうち」
「言ってることは似てるけど、文体が全然違う

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いつぞやの原稿用紙に生を感じる

いつぞやの原稿用紙に生を感じる

この前、キッチンにこんなものがあった。

いつきの小説の下書きだった。原稿用紙に乱雑に、暴力的に書かれた彼女の思想の原初。

一見過激なその思想。でもどこか惹かれ、心の底で共感してしまう。

いつきは「言いたいことを書いているだけ」と以前言っていた。

僕はこのメモを見た時に初めていつきの言いたいこと、抱えている地獄を見た気がした。

僕がいつきの小説を読んだことは3回だけだ。

読まない理由は、

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『「じゃ」へ。』は今日はおやすみです。

『「じゃ」へ。』は今日はおやすみです。

『「じゃ」へ。』は一旦おやすみです。

===

『「じゃ」へ。』をいつも読んでくださりありがとうございます。

週1くらいでエッセイ書こうと思います。

「あ、袋あります」

「あ、袋あります」

旅行ですから。



ICカードはあえて使わず切符を買って改札を通る。

最寄りの駅では入場口でスタンプを押してもらえるから。ICリーダーと人力?のスタイルの融合。僕らは駅員さん。

小さな切符をなくさぬよう、財布の小銭入れに4枚。2人分。

「なくさんてー」と不貞腐れる彼女は説得力0。

4人がけのボックスシートに隣同士に座る。

カップルみたいだ。

我々は進行方向に向いて座らないと酔ってし

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