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【シドニー編⑤】優しい友達

2016年の4月の下旬

シドニーは少しずつ、夜になると肌寒い季節になっていました。

いつものようにストリートコートで試合をしていると、


『君もしかして日本人?』



ふと日本語で話しかけられて横を見ると、

身長は170センチ位、
黒髪でメガネを掛けた、優しい感じの日本人男性
が立っていました。



『たまにこの公園に来てるんだけど、
日本人の子がコートにいるの珍しくてね。』




その方は丞(タスク)さんといい、

僕と同じく1年間のワーキングホリデービザで日本から来て、

料理人の経験を長く持ち、シドニーでもレストランで働いている方でした。




『バスケの経験はそれ程多くないけど、
もしよかったら入れてもらえない?』




『是非是非、一緒にやりましょう!』



丞さんとはその日の内に仲良くなり、
それからはよく待ち合わせして、一緒のチームでバスケをするようになりました。



(当時の僕はほとんど観光もせず、ただただ「勉強・仕事・バスケ」の日々を過ごしていたので、

新しくできた“繋がり”に内心、嬉しかったのかもしれないです。)

ーーーーーーーーーーーーー




丞さんとチームを組んで試合をしていたある日、

同じチームにいた台湾人の仲間が、相手チームの選手と喧嘩になりました。


「You did foul !!」
(今のファウルだろ!!)



「What? you did same thing!」
(何?それならさっきお前も同じことしただろ)



一触即発の雰囲気になったその場はなんとか収まり、
大事にはなりませんでした。


ただこのストリートコートでは当たり前ですが審判はいなく、
接触プレイに関してはお互いの任意でやっていた為、
このような喧嘩は珍しくはありませんでした。


また日本と比べて接触の多いオーストラリアのバスケでは、

丞さんも指や手を怪我したり、
僕も家に帰ってシャワーを浴びると、全身に赤い打ち身の跡ができたりしていました。笑

ーーー


その喧嘩の後、台湾人の仲間がコートの横に座っていたので話しかけに行こうとすると、


丞さんが何気なくその仲間の横に座り、



「Are you ok?」
(大丈夫?)



「Ok .No problem」
(オーケー、大丈夫)




そして少し沈黙があった後、


「I understand your mind
(君の気持ちは凄いわかる)

You good」
(良いプレイだったよ)




そう優しく、ただただ声を掛ける丞さんを見て、


(この人は本当に優しい人だなぁ)

という温かな気持ちと、1人の大人として尊敬の念を感じたのを憶えています。


ーーーーーーーーーー




『タクマはなんで留学しようと思ったの?』



バスケの帰り道、丞さんと僕は駅に隣接してるタピオカ屋さんに寄り、

すぐ横の夜空が吹き抜けて見えるベンチに座って、話をするのが定番になっていました。



『1番は“好奇心”です。


あと、実は将来おそうじ屋を独立したくて、
自分の自信を深める為に来ました。』




その時初めて、将来の“目標”を自分以外の人に言葉に出して話ました。



言わなかった理由は当時の僕は22歳、
まだ何者でもない僕の“妄想”を、

周りの人はどんな風に聞いてくれるのかな?

という不安があったからでした。




『おーめっちゃ良いやん‼︎
タクマならできる気がするよ。』


『あと実は俺も、日本に帰ったら自分のお店だそうと思っててね。

その為の資金も貯めてあるんだ。』




『あそうなんですか⁉︎

タスクさんほんとに凄いですね
‼︎』




この時僕は、人と人との“繋がり”の面白さと、

前に向かって走り続けてる人の“カッコ良さ”を感じました。



(素敵な人に出会えたな。僕も頑張ろう。)


そう思いながら、タピオカジュースを片手に、
星の広がる夜空と、夢を語り合ったこの日の記憶は、


僕の中に今も、深く深く残っています。


ーーーーーーーー


この2年後の2018年、


丞さんは東京都調布市にて『串カツ民屋 仙川店』を開業。

皆さんも東京に行った際は是非是非訪れてみてください^^✨

【串カツ民屋 仙川店】

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