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ファインモールド製 飛行機模型のパネルラインへのスミ入れについて

以前、静岡ホビーショーを訪れたさい、ファインモールド社の金型担当の方と話すことができた。
「パネルラインのモールド、浅くないですか? スミ入れしにくいですよね」と問うたが、そんなことはありませんよ、といったお返事であったと記憶している。
その後は、同社の新製品をめぐってお互いに盛り上がったが、今にして思えば、まだまだ飛行機模型の経験が浅かったと痛感している。

スミ入れというと、通常、溶剤で薄めた塗料(ここではエナメル塗料とする)を細筆でモールドに当て、毛細管現象の要領で、ツーっと流すことをイメージするだろう。場合によっては、スミの通りをよくするためモールドを彫り直して深くすることもある。

ファインモールドのF-4ファントムの場合、このような意味でのスミ入れは期待できない。まず塗料が流れない。(同社の全ての飛行機模型に詳しいわけではないので、現在製作中のファントムを例にする)

しかし、「ウォッシング兼スミ入れ」になれば話は違う。
これはすでに模型誌などで解説済みか、よく知られていることかもしれないが、同社のファントムにスミ入れする場合、次の要領でやれば、繊細なモールドにしっかりとスミが残る。

①薄めた塗料を全体、あるいはモールド周辺にサーっと筆で塗る。
②しっかり乾燥させる。1時間とか。
③溶剤をつけたキムワイプか布などで一気に拭き取る。

細かく書いてみる。
①については、ほぼウォッシングである。そうすると、スミがモールド以外にたくさんついてしまうが、拭き取るので問題ない。
しかし塗装面が基本塗装の直後のままざらついていると、拭き取っても、塗料が滲んで一部だけ不自然に跡が残ってしまうことがあるので、半つやクリヤーなどで一旦コーティングしておいたほうがよい。それを予防する意味でも「全体」に、と書いておいた。
(塗料の薄め具合については、タミヤのスミ入れ塗料をしっかりかき混ぜて、下に塗料が沈澱しない程度か、少し濃いぐらいにした。通常のスミ入れだとモールドにツーっと流れにくいという程か)

②が一番大事だと思う。通常のスミ入れもまず塗料を乾燥させるが、この場合、乾燥が中途半端で拭き取っても、モールドのスミがすぐに取れてしまう。(その意味でモールドが「浅い」という印象をもつのかもしれない)
これは、モールドに溜まった乾いてない塗料を、キムワイプなどが余分に吸いとってしまうことによるのだと私は理解しているが、同様の現象は通常のスミ入れでも起こりうる。

③ここはあくまで自分の経験によるものだが、初手を綿棒で中途半端に取ろうとすると、モールドのスミをいじってしまい、取れてしまう。
キムワイプか布など、比較的広い面のあるものを溶剤で湿らせたのち、一気に拭くこと数回。これだとモールドにしっかりスミが残ってくれる。また、いわゆる「雨だれ」のような線もここで調整しながら、拭き取り具合を変化させることができる。二、三回、拭いたうえで、綿棒でも調整していく。
(キムワイプなどにつける溶剤の量は、拭き取ったさいにプラモの表面が若干濡れる程度。あまりびしゃびしゃにすると、スミが落ちすぎてしまう)
(より細かなところは、溶剤をつけたセーブルの平筆、面相筆で拭き取ったり、ブレンディングの要領でスミを散らしたりしていく)

冒頭の写真は以上を行なったファントムの下面である。ここまで書いておきながら、これには一部モールドに彫り直しを施している。その効果も確認できた。が、繊細なラインが太くなったり乱れるので、途中でやめた。

冒頭に「ウォッシング兼スミ入れ」と表記したのは、以上のような意味である。また、件の、モールドが浅いわけではなくスミ入れできないわけでもないことを、私はこのように理解したし、同社のキットのモールドが浅いと批判があるとすれば、それは当たらないと思う。

むしろこのような方法を取れば、誰でも繊細なモールドにスミ入れと(ウォッシングによる)汚しができるようになる。

「スジ彫りやリベット打ちをしてなんぼ」というのは、飛行機模型界の一つの文化であり歴史であり、そういう楽しみ方が発達した経緯を知りたくもなる。

その上で、それをしなくとも、それどころか、後で追加するのは難しい微細なモールドへのスミ入れが手に入る。
そのような門戸を開いたことは、ファインモールド社の功績の一つだと思う。

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