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長編小説

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望月が創作した一次長編小説です。 ※転載厳禁 電子書籍化された作品に関しては、試し読み以降有料マガジンにてご覧になれます。 ワンコイン(500円)で電子書籍化した作品が読み放題、… もっと読む
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瞳の先にあるもの 目次(無料版)

このページは「長編作品・瞳の先にあるもの」をまとめたページです。 降順で数字が話数を示しています。 例:1 → 第1話 ※こちらでは主に無料版が掲載されています。 ※81話以降は有料マガジン(創作物覗き部屋)、あるいは記事購入でのみご覧いただけます。太字になっている数字がそれです。 ※作業効率化のため、予約投稿している小説のリンクもあります。こちらは公開日まで閲覧できません。 以上、ご了承下さい。 第5章100 99 98 97 96 95 94 93 92 91 90 8

瞳の先にあるもの 第24話(無料版)

 アマンダたちが弓兵軍と合流するために離脱した後、  「おやー、君は行かないのかい」  「魔法使えるやつがいたほーが便利だろ」  「あー、助かるよー」  と、まるで知っているかのような口ぶりで話すギルバート。情報屋は思わず顔と帯剣と背中から見える柄に視線を送る。  「あんた、何モン」  「んー? 傭兵だけど」  「ンなの見りゃわかる。じゃあその背中にあるでかい剣はなに」  「さあー。私は記憶喪失でねえ。気がついたら持ってたんだよ。そうだ」  ポン、と右手拳を左掌の上にのせると

瞳の先にあるもの 第23話(無料版)

 国王の護衛と負傷者介護のため、近衛兵は引き続き離宮の森に待機することになった。ヘイノはアマンダたちと合流し森沿いへと馬を進め、街道へと急ぐ。  「あの姉ちゃん、てっきり来ると思ったんだがよ」  「彼女を初め、魔法師たちは本来戦には関わらない主義だと聞いている。身内やライティア家に何かがない限りは、ね」  「でも権力者は欲しがるだろうね、すごい力だし」  「力は我欲の為に使うものじゃない。あの男は愚かなんだ」  「ヘイノ様、前方に集団が見えます。武装しているようです」  とエ

瞳の先にあるもの 第22話(無料版)

 悲しみ渦巻く洞窟から外に出た一行は、でも空気を目一杯吸うことなく馬へとまたがり、火の魔女は自力で、水と子供は鳥につかまれ大空に舞っていた。  「疲れたら言うのだぞ」  「あいよ。たぶん平気、力わけてもらったし」  「今度肩当て作ってもらうわね~」  「そーして」  「にしても結構遠そうだね」  「さすがのオレもこっちにゃ来たことねえからなあ」  「わたしもです」  「王族以外行かないからな。地図上の計算があっていればいいが」  「途中敵に遭わなければ大丈夫でしょう」  「だ

瞳の先にあるもの 第21話(無料版)

 面会が終わったアマンダたちは、二手に別れることになった。アマンダと情報屋、リューデリアはテントで情報整理を、アードルフは弟分たちの手伝いをすることになったのである。  「セイリっつっても、集合場所の確認だけどな」  おっさんにも聞いてほしかったんだけど、と情報屋。天幕を出てから会った執事に、アマンダは被害の規模を聞いたのだ。  夫人との会合中に用意された簡易テントに入ると、情報屋は机の上に地図を広げる。  「今いるのがこのあたり、目的地はここ」  アンブロー領地の真ん中付近

瞳の先にあるもの 第2章 プロローグ(無料版)

 とある人物、いや、人とは呼べぬ存在は少し先を見据えている。何故か最近おぼろげになるのだが、ある人物が離れているとくっきり見えるようだ。  所変わり。王家の別宮殿と名高く、王族が休息する際に利用されると一般的に言われている古き建物。とはいえ、森に覆われているためか、一般人は滅多に近づかない。入ったら一生出て来れないともっぱらの噂で、風か森の声を聞かない限りとても歩けないというのだ。  「事実は違うんだが。んま、都合がいいからかまやしないけどさ」  長く艶やかな黒髪に、黒を基調

瞳の先にあるもの 第20話(無料版)

 ゼノス王と別れた一行は、通ってきた通路を引き返し、アンブロー王国方面へと向かう。アンブローとフィランダリアは前者が建国して以来からの友好国であるため、いざというときのためにお互いの国の主要貴族領を地下通路で繋いでいるのである。  歩き始めてからどれぐらいの時間がたったのだろうか。  女性の体力に合わせて何度か休憩を取るが、まだ先は長いらしい。明かりが灯されているとはいえ、心の先は闇の中であった。  「今気づいたんだけど。ここが地下なら何日歩けば着くんだろうね」  「そ、そう

瞳の先にあるもの 第19話(無料版)

 「アマンダ殿。此度の件、詳細は聞かされたかの」  「率直に申し上げますと、今回の戦いでわれわれに勝機がみえてきたのでご尽力を、と」  「成程。それではそなたは動かざるを得まい」  「ど、どういうことです」  アルタリアはゼノス王の持つ手紙を渡され目を通す。すると、悲しげな表情をした。  「ゼノス、どうする」  「うむ」  フィランダリア王国人同士が話した後、側近が棚から何かを取り出す。どうやらお茶の葉が入った容器らしく、人数分のカップを用意し始めた。  カチャカチャとなる小

瞳の先にあるもの 第18話(無料版)

 突然来る雷雨の雲模様のようになっている空を見たアマンダは、アードルフに二色の空について聞く。  「シケが起こるとあの雲になるの」  「いえ、あの様にくっきりとはならないと思いますが」  違和感を覚えた従者は、受付の大男に今のことを伝える。すると、怪訝な顔をしながら見上げ、  「あんな雲は初めて見たぜ。何だありゃ」  「関連性はありそうですか」  「調べてみないことには、何とも」  腰に手をあて、盛り上がった上腕二頭筋が再度動こうとしたところ凛とした女の声が響く。名前を呼ばれ

瞳の先にあるもの 第17話(無料版)

 リューデリアとサイヤがラザンダールに戻ると、ヘルガが二人を出迎える。帰路についた者たちは、彼女から応接室に行くようにと伝えられた。  荷物を部屋に置いた魔女たちは、急ぎ指定された場所へと赴く。  「すまぬ、待たせてしまったな」  「いや、みんな今しがた集まったばかりだよ。気にしないで」  と話しながら、エスコはヘルガにお茶を用意するように指示。七人分のお茶が出し終わると、屈託のない笑顔で、  「まずはお疲れ様。おかげで対抗できる足がかりを得られたよ」  にっこりと微笑むエス

瞳の先にあるもの 第16話(無料版)

 縛られた部隊長と共に、アマンダ、ヤロ、イスモ、リューデリアは、彼女の魔法でエスコの元へと赴く。あちらの様子は、事前に魔法で様子が分かったためだ。  シュン、という音と急に大人数が姿を現したため、彼は驚き、馬から落ちそうになるが。  「ああ、君たちか」  「エスコ様、相手の将を捕らえました」  「そうか、よくやってくれた」  降りながら話した彼は、ヴァロスを引き受け、一度ラザンダールに戻ると告げる。  「疲れただろう。君たちも一緒においで。砦のほうには既に人を放ってるから」

瞳の先にあるもの 第15話(無料版)

 数週間後。カンダル砦への出撃した一行は、部隊の先頭をけん引しているが、一人だけ、戦の高揚感を失くしてしまっている人物がいる。  「アマンダよ、そう気にせずとも良かろう」  「いいえ。たしかに、ホリック少将のおっしゃるとおりですから」  「彼はコスティを崇拝してたからね」  と、エスコ。少し間を置いて、  「コスティが死んでショックを受けた人間が多くてね。軍の士気が下がりっぱなしでもある」  「それがアマンダを起用した理由か」  「まあ、ね」  リューデリアの言葉に、何故か口

瞳の先にあるもの 第14話(無料版)

 部屋に案内された傭兵たちは、アードルフを除き、部屋をきょろきょろと見渡す。  「この部屋、マジで使っていいのかよ」  「どう見ても上役の貴族サマが使いそうな部屋だけど」  へえ、と感心したエスコは、  「大した観察力だ。実際ここはコスティが使っていた場所だよ」  「コスティ様が」  三人で使うにはちょっと狭いかもしれないけど、と副官は、複雑な表情をする。  「ここからならアマンダの部屋にも近いし、結構便利な場所なんだ」  「飯はどうすりゃいいんだ」  「近くに使いの者がいる

瞳の先にあるもの 第13話(無料版)

 夜が明け、日の光が頂点から地上に降り注ぐ時間帯に、くしゅん、と小さなく音がする。  「お嬢様、何で外で寝てたの」  「が、考えごとをじていだら、ねでまじた」  たきぎの前で解熱作用のある薬を作っているイスモと、厚めの毛布に包まりながら、温かい飲み物を飲むアマンダ。前者は呆れつつも、気持ちは何となく察していた。  長い間戻って来ないため、アードルフが心配して様子を見に来たときには、既に眠っていたのである。  「おう、嬢ちゃん。これ食えるか」  ほれ、と、サンドイッチを差し出す