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元気でいてください〜銀河英雄伝説 Die Neue These (15)感想

 俺たちの「ほっこり名言メーカー」、キルヒアイスのじんわりする名言をいただきました。

「頑張りなさい、と言える立場にありませんが、元気でいてください」

 イゼルローン要塞にお使いで赴いた時、まだ若いユリアンに声を掛けるキルヒアイス。かつても今も敵であるからこその言葉なんだろうけど、「頑張れ」という言葉が人を縛って呪いになりかねない昨今、この言葉は素直に使いたいな、と感じた。

キャゼルヌさんの目が怖いけど、そりゃあ何されるかと思ってびっくりするよね!

今回のぶっ飛びポイント

 今回もぶっ飛んだクレイジーなポイントがいっぱいあり、元気になった。いくつかあげていこう。

①左遷されたはずのキャゼルヌさんが秒で戻ってきた。
②ラインハルトが反乱分子と見込んだ人物に渡した「計画書」がやばい
③絶世の美青年に冴えない中年のオッさんを罵らせるニッチな層向けの展開

 ①は本当に衝撃的だった。キャゼルヌさん不在か、1クールくらいいなくなるのかなァ、と同盟側の推し(密かな推しです)の喪失に心を痛めていたところ、1話で戻ってきた。私の感傷を返して欲しい。

優雅にコーヒーを喫するキャゼルヌさん。秒で左遷解かれた……

 本編でもそこは突っ込まれていて、キャゼルヌさん自身が「左遷されてゆっくりできると思っていたのに、こんなに早く呼びつけられるとは」と言っている。そうだね……キャゼルヌさん本人が一番びっくりしてると思う。どのくらい田舎にいたんだろうか。数週間か数ヶ月くらいしかいなかったとしたら本当にちょっとした休養だ。
 キャゼルヌさんの前向きな皮肉屋ぶり、ちょっと好き。

 ②、ここが今回の最大のぶっ飛びポイントであった。やばい
 ③もヤバかった。

キルヒアイスとヤンさんが会ったよ!

いやー、同盟人と帝国人が握手なんかするもんなんですねぇ……

 なんやかんやあって、帝国と同盟は捕虜を交換することになった。捕虜の交換に臨んだのは帝国側ではキルヒアイスと、同盟側ではヤンさんである。
 それぞれの軍のNo.2(宇宙艦隊副司令長官)とNo.3(らしい。イゼルローン要塞を守る係)が交渉の場に臨むあたり、非常に儀礼的ともいえ、両陣営の関係改善に両陣営が乗り出した形になる。二百万人くらい交換するらしいので、教科書に載るレベルの捕虜交換といえるだろう。
 なんだか綺麗にスパッと別れたけど、正直この後、キルヒアイスが戻ってきて、記者たちの前で二人でバッシャバッシャフラッシュたかれながら記者会見に臨んだんじゃなかろうか。

 思ったよりも早めに会えたな、というのが正直な感想。
 このクールの最後でキルヒアイスは死ぬそうだが、実はキルヒアイスは死んでおらず、記憶を失いヤンさんのところに居候した結果、同盟側の将校としてラインハルトと戦うんじゃないか、という予想もしていた。だけれどここで会ってしまったので、ヤンさんは記憶をなくした重傷のキルヒアイスを引き取っても帝国側に返しそうだから、予想は成り立たなさそう。
 それに、この予想はあんまりに漫画チックな気がするので、「オッさんを狂わす美青年ばかりが出てくるSF」というタレコミにはそぐわない気もするしね!

「形式とは必要なことかもしれませんが、バカバカしいことですね。ヤン提督」
「同感です」
「閣下と、このような形でお会いできたことは、幸運でした」
「このような命のやり取りならば、いつでも大歓迎ですがね」
「同感です」  

 なんかこう、ラインハルトとオーベルシュタインの悪辣で陰険な策略話ばっかり聞いてると、この「戦争とは害悪でありとっとと済ませて家で寝るに限る」と考えている二人の言葉が美しくて涙が出てくる。こういうほのぼのする世界もあるんだなあ……いい人たちだなあ……(たんにラインハルトとオーベルシュタインの性格が悪いだけでは)

 予想通り魂が感じあっていた。感じあうと思ってた。だって感じあわない要素がないじゃん……。性格的にも……。展開的にも……。ラインハルトと微妙な感じになっているキルヒアイスの前に、ライバルのヤンが現れるなんて物語の常道じゃん!!! 恋愛小説からサラリーマンドラマまで……! キルヒアイスがヘッドハンティングされてラインハルトの最大の敵になるぅぅぅ

 逆にこのクールの最後でキルヒアイスが死ぬということは、彼はずーっとラインハルトに縛られたまま一生を送ることになる気がする。
 ここでヤン提督は素敵な人だし、ユリアン可愛い(あの可愛らしさが帝国(※キルヒアイスに)に通用するんだと思って「提督ゥ! 子育て成功してますよ!!!」とクラッカーを鳴らしている)し、同盟側に寝返っちゃおうかな、という気も起こさず、素直に帰ってきて、逆に私は泣きそうになった。

 非常に素材は優秀なのに、親友に阻まれて成長することなく死んでいくのかあ、……と思ってしまったのだ。そう考えるとキャゼルヌさんやシトレさんのいるヤンさんって恵まれてるなあ〜。
 もしキルヒアイスが死んだら、ミッターマイヤーやロイエンタールでは少し不安なところ(二人とも目立ちたがりなので伏兵役とか無理そう)を補う優秀な人材をラインハルトからぶんどって育てようとしていただろうオーベルシュタインが膝から崩れ落ちそう。もういい年だから腰をやりそう。

 そんなことを思っていた私は、「形式とは必要なことかもしれませんが、バカバカしいことですね。ヤン提督」が「捕虜に何人か反乱分子を混ぜ込んでおきましたから、ぜひ見つけてみてくださいね♡ ヤン提督」という熱烈な宣戦布告表現であり、ヤンさんの「同感です」が「やってやろうじゃねえの」という売られた喧嘩を買った宣言だと全く気づかなかったのである。
 作中で一番目と二番目に賢い人なので綺麗にコーティングされた会話が完全なるファンティングポーズだと全く気づかなかった。

ヤン提督いなかったら同盟五十万回くらい滅んでそう

 さて、ほのぼの捕虜交換から戻ってきたヤン提督は、せっかくいいことをしたのに、苦手すぎるヨブりん♡トリューニヒトの演説を長々と聞かされるという耐久系の厳罰()を受けたのであった。

白い軍服のヤンさん。トリューニヒトから厳罰をうけているの演説を聞いている。

 はたらくってつらいことなの

 精神がごっそり削られているところに、フレデリカを連れたグリーンヒル大将がやってくる。癒し系紳士・グリーンヒル大将を見てもヤン提督は表情が浮かない。……どうやら警戒している模様。
 ヤンさんは何か気づいているのかなあ。グリーンヒル大将は何か話したいようだったが、ヤンさんは断っている。
 それもそのはず。なんだか怪しげな組織に明らかにグリーンヒル大将と思われる人の、いや、無理に隠さなくてもあのオッさんどう考えてもグリーンヒル大将ですね

謎組織のリーダー、誰がどう見てもグリーンヒル大将

 わーん!!! キルヒアイスの置き土産がきっつ!!!!!!!

 ラインハルトは捕虜の中に同盟への反乱分子を混ぜ込んで同盟側にクーデターを起こそうとする。キルヒアイスはその謀略のために、ヤンの元に捕虜を連れて行ったのだ。
 でもってヤンはその目論見を看破し、グリーンヒル大将をものすごく疑っている……らしい。ということはフレデリカをも疑っているんだろうか。
 この男たちやっぱりラスボスなんですよね……。主人公兼ラスボス()
 捕虜にスパイがまぎれているのはよくあることだから、イゼルローンに入った時点で身辺調査くらいは普通にするんじゃないの、というスパイファミリー仕込みのツッコミをしてはいけない。捕虜が二百万もいるからいちいち調査するのが大変なのだ。二百万、こう考えると嫌がらせでは。物量で押してくラインハルトのイケズーーーッ!! この野郎〜〜〜〜!!!!
 今回見えたポンコツ惑星同盟の欠点はここだと思う。捕虜にID仕込もう……ないしは捕虜の足跡を追いやすいようにちゃんとデータとっとこう??
 ヤン・ウェンリーいなかったら2クールの3話の段階で500000回くらい滅んでるぞ同盟

 ビュコックさんとの会話が意味深で怖い。

「貴官はローエングラム侯の謀略を読んでいた。ひょっとして、貴官も帝国に対して、同じことを考えたことがあるのではないかな」
「正直申し上げて、誘惑を感じたことはあります。しかし、私は一軍人の身です。あくまでその立場で許される範疇の、できることをするまでです」

 こう答えておけばビュコックはこれ以上ヤンさんを追及できない。
 私は、ヤン・ウェンリーという人物を心底から信用できていない。こいつは怖いと思っている。
 さすがにヤンさんもいい加減、「醜い」ほうの保身とかではなく、自分の故郷を守るために自分が力を持つことが重要だと思っているはずだし、「その立場で許される範疇の、できること」が増えればヤンさんを悩ますありとあらゆる問題が消える。……ヤンさんは絶対誰でにも自分の「真意に見える言葉」を話す。でも真の本音はわからない。
 こいつ、怖い。

ジャンクフード買うふりしてラインハルトの目論見をビュコック提督に伝えるヤンさん

冴えないおっさんが絶世の美青年に罵られながらクソデカ計画書を渡される

 今回の最高にぶっ飛んでるポイントはここにつきる。
 ラインハルトが暗闇の取調室で同盟軍の捕虜の冴えないおっさん・リンチ相手に新しい境地に目覚めている。

「守るべき民間人も見捨てて、我先にと逃げ出し、挙句、捕虜となった恥知らず」
「生きている価値もない」
「その時は死んでしまえ!」
「お前は卑怯者だ。誰もお前を理解しない。お前を蔑むものはいても、擁護するものはいない、誰一人。そんなになってもまだ、命が惜しいか!!」

 「オッさんを狂わす、美青年ばかりが出てくるSF」ってこういうこと!?
 ここで罵るラインハルトが今回一美人なのが卑怯。

作画がいいラインハルト

 絶世の美青年のありとあらゆる罵声を浴びて一回り強くなってしまったリンチ。私は何を見せられているのだろう

「生きている価値もない」っていうラインハルトの作画の良さに製作陣の気合を感じる。
なんかひと回り強くなったリンチ

 しかも「この通りにすれば絶対成功する」とラインハルトが投げつけた計画書がブリタニカ百科事典みたいな大きな革?の分厚い真っ赤な本に、デカデカと帝国の紋章が金でエンボス加工されている。

ラインハルトが執筆したらしい、いろいろとダイナミックなクーデターの計画書

 道端にその本落としたら一発でアウトじゃん!! ラインハルトが同盟のクーデターを扇動したことがバレたら大変なことになりそうだけど、いまのラインハルトはノリに乗っているので自前のクソデカ本(どう考えてもあの「計画書」は自費出版ですよね……?)の一つや二つ道端に落としたところで痛くも痒くもないっぽい
 ちなみに、情勢の変化などがあればクーデター計画というのはうまくいかなさそうだが、ラインハルトいわくこのクソヤバ計画書の通りにすれば必ずうまくいくらしい。えっ怖い、逆に何が書いてあるんだろう。
この計画書の中身の通りにすれば成功するかも知れないが、持ってれば100パー怪しまれて失敗しますね

 リンチはグリーンヒル大将(仮)のクーデター計画そのものにも異分子となっているようだ。グリーンヒル大将(仮)のクーデターを焚きつけるだけ焚きつけて、あとは逃げ出して帝国軍少将になる予定っぽい

まとめ

・キャゼルヌさんの帰還が早かった
・キルヒアイスの置き土産(物量で押す)
・ヤンさんが心折れたら同盟すぐ滅びるぞ
・クソデカ計画書(帝国感)

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