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父親に連れられてバーに行った話。

私の父はいつも夜中に帰ってくる。
朝は早く出て行くので会わない日も多い。
就活の相談をしても、そんなに相手にしてくれないし、仕事一筋の父からしたら私は甘いと思われているのだろう。
そんなふうに思っていたある日。
静岡に住む父の弟が子供を連れて秋葉原へ来るという。
ぜひ私や姉にも会いたいとゆってくれた。
姉は仕事で来れず、私は大学の健康診断があり、
ややめんどいな、とは思ったが、幼いいとこに顔を覚えてほしかったので行くことにした。

いとこ達と、もう回らなくなった回転寿司を出て、父の弟からは就活頑張れよ、と痛い言葉で見送られた。
ちなみにいとこは、サーモン3皿を2回頼んだ後、デザートで締めていた。Z世代はそうらしい。

さあ帰ろうと思っていると、
父が大井町に忘れ物をしたから寄って行きたいと言い出した。
人生初大井町に足を踏み入れた私は、サラリーマンの世界をはじめて身近に感じた。
脳内でファンモンが最寄駅のー改札、ぬけーれーばって歌ってた。
モン吉さん元気かな…と考えてたら、とある建物に到着した。

なんだか奥に入って行く。

中に入ると薄暗い店内。落ち着いていて、とてもいい雰囲気。
探偵はバーにいるのバーより綺麗な感じ。という例えしか出なくて申し訳ない。
入るとすぐにマスターと思わしき人が、お久しぶりです。と親しそうに迎えてくれた。
その人は父と話しながら、私の方にはあえて触れてない。たしかに20代くらいの女を50代くらいのサラリーマンが連れてたら私も触れない。
ひとしきり世間話が終わった後、父がこれ僕の娘です。と紹介した。マスターはとても驚いていて、こんなに大きい娘さんがいたんですね、と言った。
どうやら父は家族の話をあまりしないらしい。

父はここで飲むつもりだったらしく、ハイボールを注文した。私はジンジャーエールを注文し父と乾杯した。

ハイボールを一口飲んだ父が、20代の頃からここに来てるんだよ。と教えてくれた。
よく来るの?と聞くと、最近は上司の選ぶお店について行くため来れてないらしい。
自分で選べるようになったらここに来るよ。と言っていた。
50歳になってもカッコつけず素直でいる父がかっこいいなぁと思った。
父のハイボールが2杯目になると、最近とある会社の社長と飲んだ時の話をしてくれた。
娘が就活中であり、社長の会社にどうか、と聞いてみてくれたらしい。

あんなにも就活の話にそっけなかった父。
自分の力でやれといってたのに。

私はとても嬉しかった。

その社長さんは、父の娘ならもちろん大歓迎と言ってくれたらしい。自分の行きたいところに全て落ちた時、どこかで働いてやっぱり違うと感じた時など、いつ来てもいいと言ってくれた。

それだけ信頼してもらっている父が誇らしく思えたし、私のことを心掛けてくれていたことがとても嬉しかった。自分の力で頑張ってみようと強く思った。

サラリーマンってなんか良い。
私も働いてあの素敵なバーで仕事の話をしてみたい。

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