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本日の思春期#03

「今年からはフツーにくれればいいからね」
と娘に言われて固まったのは、昨年の12月のこと。

サンタクロースが持ってきたとかそういうのはもういいから「フツーに」クリスマスプレゼントを「くれればいい」ということである。

子どもを喜ばせたくて、細心の注意をはらってきた。
毎年12月25日の朝、「サンタさんからの」クリスマスプレゼントを用意する。事前にそれとなく希望の品をリサーチし、こっそりと買いに行く。ネットで注文したときは、受け取りを娘が帰宅する前の時間に指定。25日の朝まで夫のクローゼットの奥に隠しておけば完璧だった。
保育園児の頃は「サンタさんからの」手紙を添えていたのだが、ある年「ママの書く字に似てる」と娘がボソッと呟くのを聞いて、翌年から「サンタさんは忙しくて書けないらしい」ので廃止。自筆でサンタを装うなんぞ、娘をなめ過ぎていた。
「夜中に目が覚めたときに誰かが置くのを見た気がする」と聞けば、プレゼントを置くのは枕元からリビングに変更。「サンタクロースはいないって友達が言ってた」と疑いの目を向けられれば、「信じてない子にサンタは来ないんだよ~」と動揺をひた隠す。そこかしこで流れる「♪でもそのサンタはパパ〜」というクリスマスソングに「やめろ!」と突っ込みつつ、でもまぁ、ちゃんと信じてくれているだろうと思っていた。

でも、いつからかは分からないが娘の「信じているフリ」という強力なサポートあってのサンタクロースだったのだと、13年目にしてようやく知った親である。何だか気まずくもあるが「フツーに」渡せばいいのなら、楽っちゃあ楽だ。それにしても懸命にすっとぼけていた自分、まったくとんだピエロだが、「最善は尽くした!お疲れさま!」と労いたい。

歴代のクリスマスプレゼントは、娘の成長を物語る。
保育園時代にサンタが届けたのは、ブロック、プリキュアグッズ、リカちゃん人形。小学生になれば、ドミノ、シール製造機、ワンピース、ショルダーバッグ。最後となった小学6年生の年は「THE NORTH FASE」のニット帽だった。ブランドにこだわりを持つようになった娘はとっくにサンタはいないと知っていて、次の年には「今年からはフツーにくれればいいからね」と親に告げる。「中学生になったらサンタは来ないらしいよ」といつ言おうかと気を揉んでいた親は呆気にとられ、「りょーかーい」とかなんとか返すのがやっと。成長をこんな形で見せられるとは思ってもみなかった。「うち、えんとつないけどだいじょうぶかな?」と心配していたのはもう昔のことだ。

高校生にもなればクリスマスプレゼントは「現金でいい」とか言う子もいるらしい。合理的で悪くはない(誰にも聞かれていないが私も現金が一番である)。でもまだ、一緒に選んで「メリークリスマス」と渡したい。クリスマスの朝、プレゼントを発見したときの嬉しそうな顔が忘れられない元サンタなのである。

14歳が選ぶ今年のクリスマスプレゼントは何だろう。
引き続き、刮目していきたい。

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