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中野区の職員から学ぶ!自治体が複業人材を採用するときに重要視しているポイントとは?

自治体複業の採用ウラ話では自治体職員の方が複業人材に求める人物像や面接での選考基準などについてインタビューしていきます。記念すべき第一弾の本記事では、特別区で初めて連携協定を結んだ中野区を特集します。

中野区ではサービスデザイン思考を浸透させることを目標に人材育成アドバイザーを募集しました。40名以上の方から応募があった中で、採用を担当した石橋さんが重要視したのはエントリーシートだったそうです。

今回は石橋さんに、エントリーシートで注目したポイントや面談選考で大事にした評価ポイントについて詳しくお聞きしました。


*インタビューさせていただいた職員の方のプロフィール

石橋 一彦 氏/中野区総務部職員課課長

根本的な意識改革のためのサービスデザイン思考の浸透

サブカルチャーの聖地・中野ブロードウェイのお写真

ーー今回、サービスデザイン思考を浸透させることを目標に複業人材を募集した背景について教えてください

「サービスを受ける立場に立って求められているものを考え、サービスを創造し提供していく」というサービスデザイン思考が職員に浸透すれば、中野区に住む人の生活がより良いものになると思ったからです。

私が総務部に配属されて人事を担当するようになったときに、職員の働くときの意識や考え方に根本的な改善が必要だなと思いました。理由は、職員の目指すゴールが目の前の仕事をミスなく終わらせることになっていると感じたからです。私は職員が目指すべきゴールは住民の方が満足いく日常を創っていくことだと考えています。

そのためには業務をルーティーンの様にこなすのではなく、より良いサービスを提供するにはどうすれば良いのかを常に考えていく必要があります。

考え方としてサービスデザイン思考が職員に浸透すれば、必然的に業務への向き合い方も変わるでしょう。だからこそ職員が働くときの意識や考え方を改革していくうえでこの思考を浸透させることが必要不可欠だと思い、その取り組みをサポートをしてくれる方を募集しました。

ーー「サポートしてくれる方を募集」ということは職員の方だけでは、ノウハウが不足しているなどの課題があったのでしょうか?

その通りです。職員にサービスデザイン思考について研修するには、まず私たち職員課の者がこれを勉強し、身に付けなければいけません。しかし、全くの素人である私たちがいくら本などで勉強しても、本当の意味でサービスデザイン思考を習得することは出来ませんでした。

とはいえ、専門家の力を借りたくても職員の考え方を改革する、という見込める成果が不透明なものに予算を割くことは難しく、コンサルの様な専門家を雇うのは現実的ではありませんでした。

自分たちの力で改善していくことも、専門家を雇うことも難しかった私たちにとって、プロボノで力を貸してくれる専門家を募集できる複業クラウドはうってつけのサービスでした。私たちが抱えている課題に同じ目線で向き合い、専門的なスキルや経験を基にアドバイスしてくれるような人にサポートしてもらいたいと思い、今回複業人材の方を募集しました。

選考を進める上での自治体職員の本音

オフィスビルと中野四季の森公園のお写真

ーー複業人材の方を募集するにあたり、どのような人物像の方を求めていましたか?

一言で言えば、一緒に悩んでくれる人とプロジェクトに取り組みたいと思っていました。Another worksさんの今までの自治体複業の事例では広報やふるさと納税の案件など成果が数値で表しやすく分かりやすいものが多いです。

しかし、私たちは成果が見えづらい人事という職種の中でも職員の意識改革と特に成果が数値化できない様なプロジェクトに取り組みます。つまり、たどり着くべきゴールがはっきりと定まっていない状態なのです。

だからこそ、頭を悩ませながらも模索し、この取り組みが区民の生活を向上させるために役立つと信じて、最後まで走りぬいてくれる人が良いなと思っていました。

ーー募集を開始するときには選考の方針がある程度定まっていたのですね。それでは実際に選考を実施してみていかがでしたか?

想定していた以上にたくさんの方に興味を持っていただき応募してもらえたことが嬉しかったです。連携協定を結ぶ前に他の自治体さんの成果報告会の資料を見ていましたし、どのような人が複業人材として選ばれているかも調べていました。なので複業クラウドの人材の質に対する期待感は最初から高かったです。

その一方で、私たちのプロジェクトはマイナーな分野だったので、興味を持ってくれる人がいたとしても、その数は多くないだろうと思っていました。しかし、最終的には47名の方に応募いただき、思っていたよりも多くの人が興味を持って下さったことが嬉しかったです。

ーー47名の方が応募してくださったのですね。それほど多くの応募者がいた中で、お1人を選ばれた理由は何でしたか?

一番の決め手はエントリーシートからその方のプロジェクトへの熱い思いが十分に伝わってきたことです。中野区の人材育成基本方針を踏まえた上で、サービスデザイン思考を職員にどう浸透させていくかが詳しく書いてありました。また、言葉の選び方や考え方から「この人とならプロジェクトが円滑に進みそう」だなと思いました。

エントリーをする上でしっかりと事前準備をしてあるかどうかは、私の中で選考をする中で重要な評価基準でした。そこに力を入れることが出来る人はプロジェクトにも情熱をそそいでくれると思っていたからです。なので、書類選考の段階でかなり好印象でした。

そしてオンライン上で面接を行い、実際にお話をする中で「この人と一緒にプロジェクトに取り組みたい」と強く思ったので、選ばせていただきました。

良いまち作りのために今できることを

2024年2月に完成予定の中野区役所新庁舎イメージ

ーー今回のプロジェクトにどのような成果を期待していますか?

形式的な基本方針を実現するための具体的なアクションプランを設計することです。行政にはこんな町であるべきだ、という指針を定めた基本構想というものがあります。そしてそれを実現するための基本計画をもとに業務に取り組んでいます。

しかし、多くの自治体の基本計画は抽象度が高く、達成すべきゴールやそれを実現するためのステップが明確ではありません。そこで私たちは目標を達成させるための具体的なアクションプランを設計することをゴールに設定し、そのプランの軸をサービスデザイン思考の浸透にすることにしました。

また、今回就任してくださった人材育成アドバイザーとは、プロジェクト終了後も悩みを共有できるパートナーの様な関係を築けたら良いなと思っています。お互いにこの期間を通して成長し、今後に活かせるような経験にしたいです。

ーー行政の職員の立場から見て、自治体複業に向いている人はどのような人だと思いますか?

縁の下の力持ち的な存在でいることに満足できる人だと思います。行政は民間企業のようにターゲットを絞らずに、様々な立場の人のことを考え最適解をださなければいけません。また、その仕事は住民の方が何気ない日常を送るために必要不可欠なものです。しかし、その成果は見えづらいので、何気ない日常を継続させるために最大限の努力が出来る人が向いていると思います。

あとは、より良いサービスを提供するために試行錯誤をし続けることができる人も向いてるのではないかなと思います。私は100点満点の行政サービスは存在しないと考えています。その理由は住民の方のニーズは多様化していき、そのハードルは高くなっていくからです。探究心が強い人も自治体複業に向いているのではないかなと思います。

ーー最後に石橋さんのこのプロジェクトへの思いを教えてください

中野区に住む人のことを想い、その目線に立って業務に取り組む職員が増えれば、今よりも魅力的なまちを創っていくことに繋がると信じています。そして、そんなまちを創ることを実現する上で、職員にサービスデザイン思考を浸透させることは欠かせないと思います。

正直、プロジェクトが終了してすぐに目に見えるような成果は出ないことでしょう。ただ、この取り組みは職員の意識改革をする新しいPDCAサイクルの最初のPになると思っています。すぐには成果が出ないとしても、将来的に成果が出る取り組みになれば嬉しいです。

また、他の自治体が模倣してくれるようなプロジェクトになるように人材育成アドバイザーと一緒に頑張っていきたいと思います。

▼Another worksが提供する複業クラウド for Publicについてはこちら


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