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キバタの個性を活かしきる

生機(キバタ)という言葉を聞いた事がありますか?
織りたてたままの染色や晒しなどをする加工前の状態で、生成色をした正に生まれた成り。

ちりやかすを含んでいたりと実に表情豊かで魅力的ではありますが、見る人によっては単なる粗野な生地ともいえます。
わたしにとっては言わずもがな、粗野なのも魅力的。

まだ、糊がついていてゴワゴワするので扱い辛く思いますが、ぬるま湯で軽く洗いをくり返せば一気に柔らかくなります。
2、3度袖を通せば更に馴染んでいきます。

今回、定番リバーランズオーバーエクリュとして生機バージョンをスポットで作成します。
一つの素材だけで仕立てているのもあって、今までとは全く異なるイメージに仕上がっています。
「生成り」の「コート」と聞くと少し抵抗感があるかもしれませんが、キザなところが1ミリもなく、キバタをのせることでさらっと着こなせるロングカバーオールに変身してしまう。
それぐらい、さらっと着こなせるのが一番のポイントです。

もともとイベント向けに少量だけの企画でしたが、まわりの評判も良いので少し増産してインライン展開することにしました。
ボタンも程よいお化粧になり、絶妙なバランスになりました。
今後は製品染めだったり、ペイントなんかも考えていますが、まずは生まれたなりで。
今回は工場で糊落としはしており、すぐにでも着ていただける程よい状態にてデリバリーとなります。

白は汚れるからといって敬遠しがちだが、キバタにとっては味でしかない。
ちりもかすも、織キズだってキバタにとっては個性として捉えてほしい。

傷一つないものの上に魅力は生まれない。
晒してしまえば皆均一になるけど、その反面で魅力や個性はなくなっていくのだろう。

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