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ゲーマー的卓球戦術論考〜ゲームをつくる、ゲームをこわす〜

卓球において「読み合い」ってどれくらい必要なんだろう?ってのを考えた記事です。システムとして卓球を考えるシリーズよりもだいぶラフに書いていきます(したがって理論的背景とかは無しで)

フォアに来る、バックに来る、長いサーブが来る、短いサーブが来る、チキータが来る、ストップが来る、打ってくる、繋いでくるetc… 卓球には色んな読みの要素がある。読みが合えば、得点に繋がりやすいし、読みが外れれば、失点に繋がりやすい。人によっては台を介した相手との駆け引き、いわゆる「読み合い」要素が卓球の醍醐味だという人もいるくらいだ。

その面白さはとても分かる!分かるが… その「読み合い」、本当に必要なの?っていうのを問題提起していきたいと思う。

というのも僕がやったことのあるゲームの中には、「読み合い」よりも重視される戦い方があったからだ。それは「ゲームメイク」、いわゆる盤面を整える戦い方だ。

僕は一時期ポケモン対戦にハマっていた。主に剣盾の伝説ありのシーズンの時期にハマっていて、最終的に最終3桁を何度か達成するくらいにはなった(ポケモン対戦に詳しくない人に、当時の最終3桁がどれくらいの力量を示すのかを説明すると、対戦の基礎がある程度わかってきた段階だと言える。ざっくり全ユーザーの上位0.5%=1000位前後と言える。)

ポケモンは知ってて、対戦も見たことはある!って人は「ポケモンが上手い」というと「綺麗に読みを決める人」をイメージする人が多いのではないか?(例えば交代読みを決めるとか、相手のダイマックスやテラスタルのタイミングを読むとか)

もちろんポケモン対戦において「読みが上手い」というのは大事なスキルだが、「対戦の基礎ができている」というのは、大抵の場合「読みを通せる」ことではなく、「安定行動を取れる」ことを指す。ここでいう「安定行動」とは「読みが外れた時に、即負けに繋がるような手を取らない」ことであり、「盤面を整え、読みを介さずに勝ち切る」能力である。

ポケモン対戦では、「読みが外れたら即に負けになる」状況が間々発生する。そういった状況で、一か八かの行動を取るのは、ポケモン対戦的には悪手であるとされる。読みが外れたり、上手く噛み合わなかったりしても、なんとか盤面を保ち、逆転を狙ったり、一度得たアドバンテージを着実にものにできるのがいわゆる「上手いプレイヤー」なのだ。

そういった「上手いプレイヤー」は意図的に「相手の行動を読まない」こともある。相手の順位が自分より明らかに低く、相手が自分と同じように安定行動を取る保証がない時には、意図的に読み合いを拒んだりする。逆に相手のプレイングを見て、相手のプレイを信用できる(=無茶苦茶な博打はしてこない)場合は、積極的に読み合いに持ち込んだりする。さらに言えば、自分が有利な場面では読み合いを仕掛けるよりもゲームメイクや相手の仕掛けをかわすことを優先し、自分が不利な場面では積極的に読み合いを仕掛けたり、盤面を破壊しようと試みるプレイヤーが多い。こうしたプレイングは卓球においても十分適用しうると思うのだ。

もちろん卓球とポケモン対戦では異なる部分も多い。なかでもリスクリターンの関係性は卓球とポケモン対戦で大きく異なる。卓球は読みを外して失点しても1点は1点だが、ポケモン対戦は一度の読みの外しが勝ち負けに直結しやすい。それゆえポケモン対戦の方がリスク回避的な行動が好まれがちである。

とはいえ、5セットマッチの最後のポイントを自分が取るために、序〜中盤のゲームメイクを重んじる戦い方は、もっと広まっても良いのではないかと考えている。序盤でしっかり盤面を整えている方が、取りこぼしも少なくなるし、大事なところで読みを通しやすくなるからだ。試合の序盤から読み合いを仕掛けにいく戦い方は、試合の中で思考の癖を読まれたり、上手く噛み合わなくなった時に修正が利きづらい。したがってその日の試合勘に左右されやすいのだ。

ゲームメイク重視の戦い方は、メンタルに波がある選手にもオススメできる。フルセットになってしまった(と選手が感じた)場合、多くのプレイヤーは緊張せずに勝ちきれるか不安に感じるだろう。フルセットが苦手な人間に対する一つの処方箋として、「予めフルセットを想定してプレイする」というのがある。フルセットになるのは計画通りで、フルセットになって取る戦術や指針も予め考えておくのだ。そうすることで、フルセットにも耐性がついていくだろう。

とはいえ、ゲームメイク重視の戦い方にも欠点はある。それは盤面を整えることを重視するあまり、強気なプレイングを取りづらくなってしまう点だ。ゲームメイク重視の選手が陥りがちなのが、リスクを避け、丁寧にプレイしていたつもりが、逆に相手を勢いづかせることになり、手が付けられなくなって負け、というケースだ。世界選手権2017の張本VS水谷の対戦なんかが典型的な例で、あの時の水谷は、相手をかわそうとするあまり、かえって張本を手がつけられない状態に整えてしまった。ゲームメイク重視の戦い方は、「相手の調子を整えてしまう」欠点もあるのだ。

ゲームメイクは絶対的に優位な戦法ではない。長所もあるし、短所も存在する。実際にプレイヤーが取り入れる際は、その長所や短所を理解した上で取り入れて欲しい。

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