あにぃ@掌編小説家もどき

小説家を目指して言葉を紡ぐ。 2024.1 毎日18時に1000文字程度の掌編純文学…

あにぃ@掌編小説家もどき

小説家を目指して言葉を紡ぐ。 2024.1 毎日18時に1000文字程度の掌編純文学更新。「18時からの純文学」 過去作品...... ★『365日の記念日小説』(2020.10~2021.9) ★短編少々... 一人で何人もの毎日を生きていきたい。

マガジン

  • note大学共同運営マガジン

    • 40,364本

    note大学共同運営マガジンです。 ※メンバーと共有していますので画像は消さないでください

最近の記事

  • 固定された記事

超掌編小説始めます@あにぃ

はじめまして、もしくはお久しぶりです。 「あにぃ」と申します。 イイ歳をした小説家志望です。 ★2024年1月1日より、超掌編小説の毎日18時投稿を開始致します。 どうぞ末永くよろしくお願い致します。 ------------------------------------------------------------ 以下、私の略歴と自己紹介です。 中学生で小説家に憧れ 高校生でがっつり反抗期に入り 短大生で不器用に遊び 社会人になって大人になることを知り

    • 0528_生温さ

       雨だった。梅雨が近づいてきているのか、どんよりとした空気も一緒にやってきた。  私はわざと傘の外に手を伸ばし手のひらを上に向けてみる。一瞬にして右の手の平はびしょ濡れになった。それを、ジーンズの太ももあたりでゴシッと拭いた。ゴワつくジーンズが水をもってして少しだけ柔らかくなったように思えた。  そのまま、ジーンズのポケットに右手を突っ込むと、じんわりと濡れて生ぬるい。微妙に濡れているし、生ぬるいのは気持ちが悪くて嫌な感じなのに、どこかその温かさにホッとしたのも事実。  私は

      • 0527_ハムかベーコンとエッグ

         たっぷりと出した白い絵の具に、ポチっと点ほどの黒を混ぜた、薄い薄い灰色の曇り空だった。昨日や一昨日に比べると肌寒い夕方であり、何となく、そう言う季節であることを感じさせた。  横山がまだ来ない。  18時に改札を出て駅舎を抜けた先のコンビニにて待ち合わせをしていた。既に15分待っている。幸いにもこのコンビニにはイートインがあって、私はそこでお気に入りのコンビニスイーツとアイスラテを飲んで待っている。ホットラテの方が良かったかと思いながら。  横山とは大学時代に知り合い、その

        • 0526_私の成分

           そっけない夕方だった。  18時ではまだ明るい空であり、その日は終わらないかのようである。私と品川は駅にいた。帰宅時である。 「そういえば、A社の近藤さん、品川くんの対応が丁寧だったとおっしゃっていたよ」 「え、そうですか。ありがとうございます。僕はいつも佐々木さんの真似をして対応しているんです」 「私の、ですか」 「はい、佐々木さんの対応をいつもお手本にさせてもらっています。これは入社当時からです」  品川が入社したのは10年前である。そんな時から私を見本にしてくれて

        • 固定された記事

        超掌編小説始めます@あにぃ

        マガジン

        • note大学共同運営マガジン
          40,364本

        記事

          0525_あなたよ

          もしもし、あなたですか。 そう、そうです。私です。はい、今少しこのままよろしいでしょうか。 あなた、なにか少し体調が優れないと聞きました。一日二日で治るようなそんなものではないとも聞きました。それで、はい、その、私にはなんにもできないなぁと思いましたのだけれども、居ても立ってもいられないと思ったのも事実でしてね。 え、ああ、そうなんですね。歌が聞ける程度には体力があるとの事、安心しました。え、そうですか、体力と言うよりは気力なのですね。良かった。ああ、いや、良かったと言うと聞

          0524_白いズボン

          「おはようございます」  玄関口で靴を履く私の目の前を、颯爽と足早に過ぎるのは白いズボンの女性だった。  私の、5歳になる娘が通う保育園の、同じクラスのママさんだ。私は少し遅れておはようございます、と返した。正確にはおはようございましたである。  彼女は白いズボンを履いている。太めのジーンズだった。グッと上げたウエストにネイビーとホワイトのボーダー柄セーターの裾を入れ、高いウエストからは脚が長く見える。身長はどちらかといえば低めの女性であるが、その脚長効果に加えて(もしかし

          0523_本に染み

           パスタを食べながら本を読んでいたら、ソースが跳ねて本に2滴の染みができた。。  慌ててペーパーナプキンを取って拭こうとしたらカフェラテがこぼれる。幸いなのはそれがトレーの上で完結したこと。  私の本には染みが残ったままである。  やだなぁと思いながら仕事に戻る。やだなぁと思いながら資料をアップロードしたら、違う資料だった。気持ちを切り替えようとして立ち上がったら、ロングスカートの裾を踏んでいたようで、ビリッと鳴る。破れた箇所が小さくて良かった。  深呼吸をして、一つずつ

          0522_もしも

           口の中が鉄の味でいっぱいなのは1日分の鉄分入り飲むヨーグルトを飲んだからである。  鉄が不足すると良くないと聞きた。特に女性の体は。飲みきって、鉄分が入り込んだことを味でもって実感しているが、浸透したかまではまだ分からない。 ♪遅すぎることなんて本当は一つもありはしないのだ。なにするにせよ、思ったときがきっとふさわしい時♪  私はこの歌詞を信じて、もう30年になるだろうか、好きなことを続けている。始めることの遅さではなく、私のこれが成功することの遅さを歌詞になぞってい

          0521_私の公生

           仕事なんてそんなもん。だなんて、公生が言うので、だったら納得するしかないのかと、うっかり思ってしまったのだった。  好きなことを仕事にできている人なんて極わずかだし、その奇跡的な人がそれでいて幸せかどうかはまた別である。そもそも仕事なのだから楽しいわけがないのだ。それでお金をちゃんともらえているのなら、それ以上望むのは贅沢と言うものだ。  こんなふうにも公生が言う。  だから、世の人は皆、自分の今の仕事の中で楽しみだとかやりがいだとか、成長への期待だとか、自分なりに自

          0520_両足で飛ぶ

           右足から踏み出すところを左足で踏み出してしまった。  私は悲しくて泣いた。  望んでいたわけではないのに。そう思って、泣いた。でも、よく考えてみればと、少ししてすぐに泣き止んだ。私は別に右足から踏み出そうと思っていた訳ではなかったのではないか。そう思い出し、顔を上げた。空はまだ明るく、それでいて高かった。それだけを救いに感じている。  私は別に右足から踏み出すことを希望して最初に踏み出したわけではなかった。外出する前、私はハンカチとティッシュを持つことや鍵を閉めることスマ

          0519_メガネを通してそれで

           車窓から見える町並みの色合いはその日の天気に左右される。雲一つない真っ青な青空できらきらと太陽が輝いているような日は、工事中のビル群を見ていても全面カラフルな灰色に見えることがあり、私の視界は明るく輝く。一方で、薄暗い曇りの日にはどんなにカラフルな建物がならんでいても総じてグレーがかって見えるのだった。明るさと薄暗さ、彩りとグレー。同じ世界なのにそれはまったく変わる。  そこに雨が加わると、これもまた世界が表情を変える。カラフルでもグレーでも何でも、全てが滲んで見えるのだ。

          0519_メガネを通してそれで

          0518_思い出ごろり

           畳に転がっていた。    そこにあったブランケットを畳んで枕にして、こう、ゴロン、とした。 少しひんやりとして気持ちがいい。  視界には全面畳が広がる。  畳の目の色が薄くなっているところとあまり変わっていないところ、変色しているところ、埃があったり、新品のそれではないことはよく分かった。それで私は、余計に安心して、大きな深呼吸を2度ほどすると、ほどなくして眠ってしまった。  時間にすると30分ほどだろうか、夢は見なかった。  けれど、夢のようなものは見た。  寝てい

          0517_嘘を吐く

          「嘘をつくってことは浮気と一緒だから」  宝田さんはそう言っていた。単なる嘘も、浮気もいずれにしても隠し事ということらしかった。ほんに宝田さんらしい。  彼とは先日まで1年付き合っていた。そして、私がついた嘘は酒を飲んだことだった。付き合って半年のこと。  彼は酒を飲むことが嫌いだと言っていた。その時の私は自分でも引くくらい、彼が好きだったので、うんうん分かったとそれを了承して酒を飲まないこととした。  実際、飲んでいない。  いや、訂正する。嘘を吐いたあの時、1度だけ酒

          0516_私の角

           私の角は折れたのだろうか。  ちくり、と右足の親指あたり、指の内側が痛い。気のせいかと思ってもう2.3歩進んで歩いてみるが、やはり痛むのだった。仕方がないので立ち止まり、靴を脱いで、痛む指に触れてみる。  赤茶色で小さくて鋭いとても小さな小さな角があった。  カブトムシ?と一瞬思うようなカブトムシの体や長い角、その下にある短い角のようだった。それにしては随分と細い角ではあった。  ゾクリと身震いをした。  なにか虫なのかもしれない。それこそカブトムシ、かもしれない。かも

          本日の18時からの純文学は23時にUPします。 急な変更となり申し訳ございません。 もしお時間合えば(もしくは明日でも)ご覧いただけますと幸せです。 よろしくお願いします。

          本日の18時からの純文学は23時にUPします。 急な変更となり申し訳ございません。 もしお時間合えば(もしくは明日でも)ご覧いただけますと幸せです。 よろしくお願いします。

          0515_私のタスカンレッド

           タスカンレッドを貸してくれと言われたのは生まれて初めてだった。  14歳の私は、48色の色鉛筆を持っていた。学校で使う色鉛筆なんて12色で十分なのに48色も揃っているのは、少し前に母が『大人のぬりえ』にハマっていたからで、私の趣味ではなく、つまり、私はこの48色の中にタスカンレッドがあるなんて知らなかった。 「す、好きな色使っていいよ」  私は少しだけ上擦った声で返して、ついでに表情もひきつっていただろう。恐らくは震えた手で彼にそれを差し出した。全部全部、覚えている。

          0515_私のタスカンレッド