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鳩サブレー:PDLB(無料記事)

2014年とかなり前の話になりますが、ネーミングライツを買った鳩サブレーの豊島屋の記事がFacebookでシェアされていました。

由比ガ浜、材木座、腰越海岸の命名権を買った豊島屋は「従来からの名前を変えず、由比ガ浜海水浴場などとする」という判断をくだしました。これはネーミングライツという商業活動の常識からは考えられないことです。

すでに価値の定まった場所、たとえばドームや音楽ホールなどに、企業が宣伝のためにネーミング訴求をする目的で考えられたのがネーミングライツの手法です。もしかしたら「鳩サブレー海岸」という名前になっていたかもしれません。

渋谷公会堂のネーミングライツは2006年にサントリーが買い、「C.C.レモンホール」となりました。建て替え後は運営方法自体も変化しますが、LINEがネーミングライツを獲得し、「LINE CUBE SHIBUYA」という名称が2029年まで使われるようです。

数年間の「C.C.レモンホール」という呼び名からは「渋谷公会堂」を想起しにくく、タクシーなどで場所を説明するときなどには混乱もあったそうです。慣れ親しんだ名前を次々に切り売りして変える、という考え方が馴染むかどうかはまだわかりません。名前には、そこで人々が体験した思い出も付随しているものでしょうから。

そういった意味で豊島屋の判断は会社の哲学、地元に根ざした存在感を効果的に(結果として)アピールできたとも言えます。自分の会社の名前を声高に言うことばかりがブランディングではなく、これこそが本来の意味でのブランディングだと感じさせる好例でした。

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ネーミングライツには公共の場をマネタイズする目的もあります。海岸を維持する費用が自治体ではまかないきれないなどの理由です。そこに支援するとき、「私が支援しました」とばかりに自社製品の名前をつけることと、そうではない場合の効果には大きな違いがあります。社会貢献は回り回って価値の大きなニュースになることもあるからです。

今は個人的な出資が多いクラウドファンディングなどが全盛ですが、何かを支援するときのスタイルというのも注視されています。寺や神社の施設に大きく名前が彫られることを名誉とするような名士感覚は今後変わっていくかもしれません。ブランディングスタディの好例でした。

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