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『地球を31周』その1:Anizine

日本航空は昔からのクライアントで、広告やカレンダーなどを作っていました。昭和一桁の自分としてはお世話になっている会社以外の飛行機に乗るのは仁義に反すると思っていますし、天王洲の方向には足を向けて寝ていません。

JALのマイレージバンクには「生涯フライト記録」というのが記載されていて、マイレージバンクに登録してからの履歴が残っています。それによると外国でのロケがそれほど多いタイプではない自分でも、地球を31周していて、月までだと1.6往復の距離だそうです。マイレージに登録する前の記録や現地からのローカル便などは加算されていませんから、飛行機に乗っている時間はもう少し多いはずですが、「そうか。地球を30周もしたんだなあ」と感慨深いものがあります。友人の写真家にはもっとグルグルしている人がたくさんいますから決して自慢ではありません。

自分でも忘れてしまうことがあるので、行ったことがある場所のことをメモっておこうと思いました。最初に行った外国は韓国のソウル。若い頃はあまり海外旅行に興味がなかったので、1989年だったか、会社の視察旅行が外国の初体験でした。

初めてパスポートを取り、ソウルの金浦空港に降り立ちました。社員が20人くらいだったでしょうか。視察といっても遊び半分の社員旅行のようなものです。空港から市街に向かう途中のバスの中で、「窓からの風景を写真に撮らないでください」とアナウンスがありました。俺は初めての外国ですし、何か軍事的な問題があるんだろうなと、ちょっとした緊張感を味わいました。空港を出るあたりでマシンガンを肩に掛けたふたりの軍人がバスに乗ってきてパスポートの確認をされ、そこで最初の事件は起きました。

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Anizine

¥500 / 月

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。