見出し画像

山村紘未さん:写真の部屋(無料記事)

いいモデルが目の前にいなければ、いい写真が撮れないのは当たり前です。つまるところ、写真家にとって「いいモデルと出会う能力」がとても大事だということになります。写真はモデルで女優の山村紘未さん。ある撮影で知り合い、何度も仕事をしました。

モデルとして活動していたときから、この人は俳優に向いているのではないかと感じていました。衣装を着てカメラの前に立った瞬間に何かが見えてくるからです。神秘的な言い方は好きではありませんし、おおげさな表現かもしれませんが、彼女がそこにいれば何もしなくても世界が生まれるというか、能力の低い小太りの私が撮っても、なんとなくいい写真が撮れたような気がしてくるのです。それにいつも助けられてきました。

以前、舞台に立つと聞いて観に行ったとき、彼女はもともと身長が高いのもあってとても存在感がありました。芝居が終わったときに泣いている自分がいました。撮影をしたモデルとは仕事が終わればそれっきりになってしまうことの方が多いのですが、どこかで波長が合うと感じた人とはまたいつか仕事ができるといいなと思って、微かな心の糸が繋がっている人が何人かいます。彼女が所属している事務所にも大変お世話になっていて、何人ものモデルと仕事をご一緒しました。

今回の、劇団『大人の麦茶』の公演には都合がつかずに伺うことができなかったので彼女に楽屋花だけ贈っておきました。そのお礼のメッセージに「劇団の主宰者と写真家がアニさんの本の話をしていましたよ」と書かれていたので驚きました。人脈のような意味で使う「繋がる」という言葉は好きではないのですが、撮る、演出する、演じる、といった人々が同じ感性に反応して関わりを持っているのを知るのはとても楽しいものです。写真家の蓮井幹生さんや着物スタイリストの森由香利さんなども観劇されていたようです。皆さん、お世話になっている人たちです。

これからもたくさんの素晴らしい人を撮っていきたい。ただ「そこに立って」というのではなく、その人そのものが写っているような写真が撮れるなら、いくらギャラが高くても仕事は断りません。


ここから先は

0字

写真の部屋

¥500 / 月

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。