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南青山自慢。

20代の初めの頃、俺は南青山のspiral裏のデザイン事務所にお世話になっていた。

銀座に移ったある日、雑誌の記事を見せに来た人がいた。「この前この店に行ったんだけど、アメリカっぽくてオシャレで、オーダーの仕方が難しくてさ、彼女と二人で焦っちゃったよ」と言う。

俺は彼が何を言いたかったのかわからずに「ああ、この店は青山にいたときによくランチに行ってましたよ」と答えた。すると彼は「出た、青山にいました自慢」と言った。

違うんだよ。田舎から出てきて、自分の中の先入観と妄想で青山や六本木をデコレートしてるのはあなたたちの勝手だ。

地価が上がってからそこに住むことになった人は「どうです、私はこんなにセレブなところに住んでいるんですよ」と、今も地元にいる友人や、黄色いヘルメットを被って自転車で中学校に通っていた頃の自分に宣言したくてたまらないのだ。

知るか。

彼が張り切って休日にデートに行った南青山も、昔からそこに住んでいる人や働く人にとってみれば、北千住や大宮と何も変わらない。勝手に自分たちがつけたイメージで勝手ゴライズしないで欲しい。

その反対に俺たちは、トスカーナみたいなド田舎に行くと「こんなにのどかなところで暮らしたら、いいだろうなあ」などと思ってしまう。地元の人にそう言ったら「けっこう自殺率高いですよ」と言われたけどな。

南青山のブランドイメージは、田舎者が田舎者の経済活動を牽制しているだけだと思えば腹も立たない。

本当に考えなくちゃいけないのは苦境にある子供たちのことだから、問題が違う。

ちなみに面白情報だが、その人は何かにつけて俺に「横浜生まれの湘南育ちは違うね」と言った。そういう言葉を聞かされるだけで、鼓膜が汚れる気がしたものだ。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。