くだらない結論:Anizine
「昨日は青山ブックセンターのトークイベントに行ったよ」
「へえ。そんなのがあったんだ」
「世の中には無数のイベントがある。でもほとんどの人は自分が興味を持っているものにしか反応しないから、それ以外のことは知らないんだ」
「わかる」
「写真を撮ることについて、ふたりのぽっちゃりボディの写真家が話していたんだけどさ、とにかく『写真は自分が好きなものを楽しく撮れよ』っていうのが結論だった」
「園児並みの結論だな。まさか有料のイベントじゃないよな」
「有料だ。でもね、大人になるほど園児だった頃の感覚を忘れていくんだ」
「確かに」
「自意識から自由になることの難しさというのがある」
「やりたくないことも、これには意味があるんだとか思っちゃうよね」
「そうそう。それは無意味なことをさせられている自分への慰めだ」
「命令を聞くロボットじゃないか」
「性能の悪いロボットだよ」
「どうすればいいんだ」
「自分が毎日やっていることのすべてを『やりたくてやっていること』かどうかで仕分けするんだよ」
「何も残らなそうだな」
「その通りだ。朝、出かけたくもないし、雨が降ったら休みたいし、上司に怒られたくないし、ってな」
「でも、生きていけなくなるよな」
「そうでもないんだよ。最低限の給料がほぼ確実にもらえるという安心感と引き替えにしているから、そこを乗り越えられれば違う選択肢もある」
「なるほどな。俺はまあまあいい給料をもらっているから」
「だろう。会社っていうのはさ、辞めたいほど安くなく、独立する貯金ができるほどは高くない、絶妙の給料を払うんだよ」
「確かに言われてみるとその線だな」
「お前は馬鹿だから、成功と失敗についてあまり考えたことないだろう」
「うん。バカだから考えない」
「実際には失敗なんてないんだよ。すべてがなくなってもゼロに戻るだけ」
「それはマイナスじゃん」
「給料を基準に考えるからマイナスだと思うんだよ」
「そう言われてもなあ」
多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。