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ロロ・ピアーナとユニクロ:PDLB

同じ機能を持ったモノを「同じである」と判断する基準に審美眼が試されます。目的が達成されれば方法はどうでもいいという考え方は野暮であり、「裸では街を歩けないから服を着るのだ」という理由だけならファッションは存在できませんから、同じことをするのにも選択が必要だということです。

私は料理人を尊敬していますが、それは唯一「体内に入れる芸術」を作っているからです。いい絵画を見ると心に栄養がもたらされる、という言葉を聞くこともありますがそれはきわめて抽象的で、芸術に対する優れた消化器官を持っていることが前提になります。話題になっている展覧会を観に行くにしても、そもそも「大混雑の行列に並ぶこと」は、豊かなアートを取り込む状況ではないでしょう。レストランには自分だけの席が予約されていて、シェフはその人のためだけの料理を作る。その一対一の経済的・人的コストを省いたのがファストフードです。

素晴らしい料理とまったく同じだけのビタミンとカロリーを摂取したことを栄養として「同じである」と捉えるのは、ロロ・ピアーナとユニクロのセーターはどちらも暖かいから安い方でいいのだと言うようなもので、乱暴すぎます。そして高価である、上質である、という情報の違いも認識しないといけません。

たとえばYouTubeで音楽を検索すると、カバーをした楽曲が出てきます。独自の音楽性と世界観を持ったアーティストが別の人の曲を歌っているものもあれば、趣味のカラオケを録音したようなものもあります。「あの曲が聴きたい」と思ったときに、メロディと歌詞が同じだという理由で別の人が歌っているのを聴きたいでしょうか。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。