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味音痴のレストラン:PDLB

繁盛しているレストランがあったとする。しかしそこにやって来る客の全員が味音痴だとしたら、そのレストランは本当の意味で「繁盛している」と言えるのだろうか、と考えてみる。

今の世の中は、流行っているか、そうでないかで評価が決まることが多い。表層的な流行の消費という、数字だけで評価されたモノは数字によって衰退していく。つまり味音痴が集まる店の賑わいは、本質的なレストランの評価とは言えないということだ。

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百貨店などのポップアップショップは増加を続けているが、それは音楽用語で言う「アタック」、瞬発的な話題の立ち上がりの部分だけを取り出している。テナントとして継続させることを考えなくてもいい。瞬間風速の累積だけで切り抜ける方法だ。

停滞するリスクを切り捨ててしまえば失敗の傷は浅いが、それは「成熟した消費」とは大きくかけ離れた方向に向かう。ある老舗のブランドが、成長率の上限を決めているという話を聞いたことがある。企業として売り上げのグラフはもちろん右上がりになっているべきだが、その角度が急になりすぎないように抑えているというのだ。

急角度での成長は、そのブランドが求める今質的な意味での顧客以外に、流行で動く「味音痴の客をも引き寄せる磁場」を作ってしまうからだろう。ブランド・ロイヤルティを持たない客は、時期が来れば別の新しい情報に飛びつくからあるとき、一斉に消えてしまう。それが、ゆるやかな線を描くべき右上がりのグラフに悪影響を与えるのだ。

ウェブ的な速度で、「新しい営業形態の店がオープン」などというアタックの強い出来事をいくら探していても、企業の「美しい成長曲線」を見極めることはできない。

では、グラフの横軸(時間)を伸ばして、ゆるやかな成長曲線の解像度を上げていくとどうなるか。

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