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美意識の不可逆性:PDLB

写真のハンガーは、パリのセレクトショップ『N° 171』で撮影したモノ。ここはサントノレ通りにあって、お店のロゴは私が作らせてもらった。

ハンガーひとつにも美意識が出る。ミナ・ペルホネンのショップで使われている、葉っぱの生えたラックも素晴らしい。これらには「服を掛ける」だけの機能があればいいはずなのだが、ファッションというのはオフィス家具のように機能だけを追って済むものではない。

悪い言い方をすれば「無用の美」であり、必要ないとも言える。しかし実用だけだと、世界を構成するデザインはすべてIKEAになってしまう。

『N° 171』の外壁はシックなブラウンにして、ロゴを白にした。日本ではこれで勝手に外装工事をすれば終わるのだが、サントノレ通りの商店会というのか、街の美観を維持するための機関にその許可をもらう。こうして、街の美意識は保たれている。

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今日、都内のデパートに入っているエルメスに行った。店の外側に事務用のパーテーションがはみ出していて、中には何か荷物が置かれているようだ。工事中で休んでいるように見えたが、そうではなく通常通りに営業していた。もしこの状態を本国エルメスのディレクターが見たら何と言うか。絶対に許されないだろうと思う。私は今日、ここで買い物をするのをやめた。

エルメスなどのブランドが突出しているのは、品質だけではなく、生活における美意識が徹底されていることだ。たとえばトランプやダイスなどのために革製の立派なケースがある。これは「カードをやりましょう」と言ったときに、そこから取り出すシーンのエレガンスを含めたデザインをしていることになる。その上質なライフスタイルを必要とする人だけがエルメスを買う。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。