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立地の先入観:PDLB

私の仕事場は渋谷と原宿のちょうど中間、明治通り沿いにある。どちらも人が多い街だということは、今更説明するまでもない。

20年ほど通りを見ていて、あることに気づく。ここは商業地としてのエアポケットであり、渋谷に遊びに来る、原宿で買い物をする、という人々が、「ただ通り過ぎるエリア」だということ。つまり財布が開かない場所だ。六本木と西麻布の間の六本木通りにもよく似ている。

明治通りには次々に目新しい店ができるが、早いときは数ヶ月でクローズすることがある。長く続いている店は、扱う商品が「趣味的である」という特徴を持っている。つまり立地ではなく、欲しいモノを売っていて全国からそこを目指してくる顧客がいるのだろう。

よくあるのが地方のブランドが東京へ進出するケースで、リサーチ不足からくる失敗例だろうと推測される店を見かける。大阪の「アーバン・リサーチ」も最近閉店したが、その店名を冗談に使ってしまうのは悪趣味か。

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地方のブランドの出店担当者が東京に視察に来る。渋谷から5分、原宿から5分、青山へ5分の位置だと説明される。「これは素晴らしい立地条件だ」と思ってしまうのも無理はない。しかし最初に書いたように、その三つの場所にいるのはまったく別の客であり、相乗効果はほぼないと言っていい。

A、B、C、というどれかひとつの客層を単独で狙うならそれでも構わないが、それを合算した目論見は間違いであるということで、おそらくこの三つの行動エリアを持つのは、お金を使わない「服飾専門学校の生徒」と「リースに駆け回るスタイリスト」くらいなものだろう。

たとえば私が経営するブランドがあるとして、よく知らない地方都市や海外の都市に出店しようと計画する。そこでこれと似た状況に直面したら、たぶん同じ失敗をするだろう。知らないことと、知っていること(先入観)の相互作用が原因になる。

先日行った台北では、数年前までは忠孝復興、中山、永康街あたりが繁華街として街の中心だった。最近では人の動きが「台北101」の近くに移動しつつある。大きく分けて、この二つのエリアは台北の過去と未来を表している。見た目だけで言うなら、上海のバンドと浦東新区の関係を思い出してもらってもいい。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。