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アート音痴が熊を描く:PDLB

「アート」という言葉を使うには教養が必要だと思っていますが、そのフレーズが持っている外側だけを使うのはビジネスとしては効率がいいのだなと感じます。たとえば自分が応援しているサッカーチームのレプリカ・ユニフォームを着ることはチームとの一体感を示しています。ではピッチに立っている選手と同じデザインのユニフォームにはどのような価値の違いがあるのでしょうか。

アートとは「なくてもいいが、あると豊かなもの」という定義があります。諺で言えば「衣食足りて礼節を知る」に近いかもしれません。生きていくために必要なものが揃ったあとで気持ちが動くものがアートだと仮定すると、生きることに必死な人の気持ちはアートには向かっていかないのは当然です。この二極は簡単に理解できますが、その極の中間では何が起きているのでしょう。ここにAIが作るアートや、サッカーのユニフォームがあります。

昔のヨーロッパやアジアのアートの多くは権力者が主導していて、教会や王様は布教や権威づけのための絵をお抱えの画家に描かせました。つまり原始的なパブリシティでありアドバタイズメントです。後世になって別の眼で見てみると現代のアート文脈に取り込まれていくのですが、これは多くの場合、画家が職人として請け負った仕事であるのでどちらかと言えば工芸などのジャンルとも似ています。王冠の優雅な飾りを作ったり、荘厳な教会を建築したりといった行為で、「民芸」とは反対に位置します。

どれがアートでありどれがアートではないか、という議論はあまり意味のあることではないと感じますが、「発注者が誰か(存在するか)」という点はわかりやすく問題を整理しやすいのでそこから片付けていきます。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。