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100と95:PDLB

自分が置かれた境遇に愚痴や文句を言う人には、だいたいこう聞いてみることにしている。「あなたの銀行口座にもし10億円入っていたとしたら、同じ不満を言いますか」と。人が生きていくうえでの問題の多くは、日常のサイクルのどこかにボトルネックか欠損があるからで、その理由がお金であることは多い。

仕事をする、月末に給料をもらう、支払いをする。このサイクルが余剰金を生みつつ回っている場合はいい。しかし収入から支出を差し引いた額に余裕がないと不安が生まれる。このとき、まず考えるべきことは何か。

原因はいくつかある。収入が少ない、支出が多い、などのどこを改善したら生活は好転するのか。第一にやめるべきことは愚痴や文句である。これは責任の所在を「自分以外の外部」に負わせる逃避行動だからだ。会社が悪い、景気が悪い、政治が悪いと言いたくなるのもわかるが、その前に「自分という自治体」の運営が健全であるかを無視してはならない。

自分という小さな自治体の収入から支出を引いたときに余裕が持てる運営サイクルを作るのが、最初にするべきことだ。サラリーをもらっている会社員はそう簡単に収入を増やすことができない。いくら仕事を頑張っても給料を決めるのは会社だからだ。ここで思いつくのが「支出を減らすこと」なのだが、それは賢明とは言えない。消費を小さくするのは人間を縮小させることで、生活を豊かにすることとは相反するからだ。

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私は会社員とフリーランスを、それぞれ10年、20年と経験した。会社員時代に不思議に思ったことがある。なぜ会社というのは社員がギリギリ生きていける金額がわかっているんだろうということだ。デザインのような仕事は会社で経験を積んでしばらくすると独立して自分の事務所を作る人が多い。しかしパソコンが1台あればいい今とは違って、当時は初期費用が数倍かかった。簡単には独立できなかったのだ。

そのために必要な資金を貯めるほどの余剰金はなく、かと言って生活に困るほど給料が安いわけじゃない。会社にいて居心地がいい「損益分岐点」のようなものが存在するのだ。これが安定した組織の恐ろしさである。

私がいた会社の給与水準は他と比較しても高い方だったと思うが、何せ場所が銀座である。ランチもコーヒーも高い。支出が増えてしまうので当然貯金はできない。100もらって95を使ってしまう生活にそれほど疑問を持っていなければ安定した会社員生活は送れた。100の基準がすでに他よりも高いわけだから。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。