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コスト感覚を知る:PDLB

常に、モノの値段に敏感になろうと思っている。

値段には多くの情報が含まれているからだ。友人のホームレス小谷から、「パリに行くんだけど、どこの朝食が一番いいかな」と聞かれたので「プラザ・アテネ」はどうかと言っておいた。

ここのアラン・デュカスの朝食は日本円で約1万4000円。我々が普通に考える朝食の値段とは桁が違う。しかし、「普通に考える」という言葉が無自覚に挟まっているのに注意する必要がある。普通とは、その人の経験と環境を指している。

毎朝マクドナルドに行っている人の「普通」を遙かに超える金額には、何が含まれているのか。

「雰囲気もよかったし、美味しかった」とコタが言い、「よかっただろう」と返す時、あそこに行ったことがある人だけがわかる「普通」が生まれる。

それは何も贅沢をすればいいという意味ではなく、値段で切り分けられている世界をどう横断するかの体験を共有できること、知らない人はその場から完璧に除外される、という事実だ。

日本のホテルの朝食は、だいたい2500円から3000円だと思う。もうワンランク上がると5000円程度だろうが、そのあたりが上限と言える。パリの物価は日本より高いし、中心部のそれなりのカフェだと3000円は超える。去年の11月には、すべての朝食を違うカフェでとるという調査もしたが、平均で2000円台後半というところだった。

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日本全体が長期的なデフレであることは疑う余地もないが、それは特に消費の縮小として実感されている。外国人観光客が大量に日本のモノを買っていくのが目立ってはいるが、それは単純に日本の物価が安いから。バブル期にヨーロッパやアジアに行っていた日本人の感覚は今の若い人にはわからないと思うが、まさにそれと同じだ。

だからそのデフレと縮小消費の只中にいる我々の「普通」という基準が、世界ではまったく通用しないことをもう一度理解した方がいいと思う。生活が縮小すると「スパイラル」というくらいだから、当然のように売り手でもある自分が買い手のモノを買わなくなる。値段を安くしても、「まだ安くなるのではないか」と不安になる買い控えは解消できない。

ではそのために「設定すべき値段」はどうすればいいのか。

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