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ブランドとクレーム:PDLB

「ブランド」という言葉は日常的に使われますが、元は牧場で自分の牛などの権利を主張するための焼き印を押すことをブランディングと言ったことから始まっています。これは自分の商品であるという印がブランドであり、他との区別をする目的の名前でもあります。ご存じの方も多いでしょうが、ついでに書きますと「主張」は英語でclameで、日本語で言う「クレームを言う」という表現は、英語の用法とは少し違っています。

これは日本人のメンタリティにも関わってくる話なのですが、自分の意見を主張する当然の権利、がどうしてもネガティブな主張に聞こえてしまうという国民性があります。ブランド、クレーム、このふたつの言葉が持っている日本的な解釈が「ブランディング」における日本人の弱さを表しているかもしれません。ビジネスにおける個性の主張と、それにまつわる消費者の反応に適切な批評性がないことが前提になっているので、まさにその部分を取り巻く科学としてのブランディングがおろそかになることが多いのです。

「有名ブランドは名前にあぐらをかいているが、商品はそれほどよくない」とか「商品がよくないのでクレームを入れた」といった言葉はあまりにも表面的で感情に支配されているので言わない方がいいと思います。言葉の定義がズレていては本質には辿り着かないからです。ブランドは「価値のある名前」ではありませんし、商品に対する冷静な批評は「苦情」ではないのです。日本語で言うクレームに近い言葉はcomplaintで、クレーマーはcomplainerです。「あなたのところのサービスはここが使いにくいと思う」という、もしかしたら改善のために有用かもしれない言葉を、顧客の文句であると捉えていたらとても勿体ないことです。

自分の商品やサービスを主張するための正確なルール作りと対外的な受け取られ方のコントロールをブランドである、顧客からの使用実感から来る改善のためのヒントをclaime(主張)だと理解すること、どちらもキーワードは意味のある主張であると言えましょう。

ブランディングはともすると、私はこういう人物である、との主張にとどまってしまうこともあります。これはむしろ逆効果でわがままな自分勝手に見えることがあります。私という企業はこれだけ立派である、と高らかに宣言してみても、それを決めるのはビジネスの相手であり、顧客だからです。ブランディングのスタートは自分たちの欠点を探すことから始めるべきで、声高に言いたい優位性のアピールではありません。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。