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過労死しないために:Anizine

「お前はいつ寝ているんだ」とよく聞かれますが、ほとんど寝ていません。忙しぶっているとか、売れっ子であるとかいう理由ではなく、兎に角が生えるくらい、とにかく仕事をするのが好きなだけなのです。

若い頃にデザイン事務所に入ったときは、当時の自分が持っていた処理能力を遥かに超える仕事を任されました。「これができるんだ」という楽しさとうれしさを感じていたので、毎日夜中まで仕事をしていてもまったくブラックだなどとは思いませんでした。やったことが自分の仕事として次々に世の中に出ていくんですから、休んだり寝ている時間など勿体なく思えました。ここが職業によって労働環境に差がある部分かもしれません。

たとえば歌手がデビューして曲がヒットして朝から晩までテレビに出たりコンサートをしたりすることを「ブラックだ。やってられない」と感じることはあまりないでしょう。自分の歌が流行って忙しくなるための努力をしていたはずで、仕事がないことのほうが地獄です。というわけで他に趣味もない自分はいつも24時間体制で仕事ばかりしていました。

また好都合なのか不都合なのかはわかりませんが、我々の仕事はすべてが『仕事』に直結しています。生活のどこにもスイッチをオフにする時間がないのです。街を歩いて何を見てもヒントになりますし発見がありますから、つねにスイッチオンの状態。30年前からスイッチはガジガジに錆びて固着しているので、もう二度とオフには戻りません。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。