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くだらない結論:Anizine

「今日さ、小籠包を食べに行ったんだよ」
 「お前、一昨日まで台北にいただろ。まだ食うのか」
「本場に行った後に偽場で食べる醍醐味だよ」
 「嫌な趣味だな」
「本場に行く、ってそれだけで娯楽だからな」
 「それはわかるよ。本場めぐりのバスは走るからね」
「曲が古すぎてキョトンとしている人が多いと思う」
 「いや、ここを読んでいる人はだいたいジジイだから」
「そうか。じゃあいいや」
 「で、小籠包を食べてどうしたの」
「あ、そうそう。写真をインスタにグラムしようと思ったんだ」
 「していたね。さっき見たよ」
「店の名前を位置情報で出そうとしたら、出なかったんだ」
 「へえ」
「六本木にあるもう一軒の店は出てくるんだけどね」
 「雑だな。SEO的に言えば」
「だろう。だから老婆心ながら店員に伝えたんだ。出ないよって」
 「大きなお世話だけどな」
「そうでもねえよ。客があまりいなかったし、ちょっと場所がわかりにくいんだ。だからインスタでバシッとタグっておけば客をタグり寄せられる」
 「まあ、出ないよりは出たほうがいいか」
「俺は初老だけど、老婆心を発揮したね」
 「しかし、老婆心って変な言葉だよな」
「中国語では妻のことを『老婆』と呼ぶらしいけど」

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354字

Anizine

¥500 / 月

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。