見出し画像

ポールシンガ:Anizine(無料記事)

数年前、知人である俳優の芝居を観た。文句なしに素晴らしい舞台だったからもう一度それを体験したかったんだけど、その日が千秋楽だったので、もう観られないのかと残念に思った。

「この次はシンガポール公演なの」

俺は耳が大きいんだけどその言葉を小耳に挟んだ。なるほど海外公演か。というわけで本人には伝えずに、業界用語で言えば、れしっとポールシンガに向かった。遊びに行く理由なんてほんの微かな手がかりさえあればそれでいいのだ。

画像1

現地で「ドリアン」と呼ばれている立派な劇場でヒデキ観劇後、楽屋に挨拶に行く。彼女は「なんでここにいるの、信じられない」という面持ち。ややドッキリ風味ではあるけど、いたずらというのは手間やお金がかかっている方が真面目な誠意が伝わるものだ。

メインタスクを終え、あとはぼんやりと美味しいモノを食べたり写真を撮ったりする日々。マリーナベイサンズの屋上プールから見えるシンガポールの夕景が夜景に変わっていく様は、美しかった。

画像2

もう今の状況を嘆くのには誰もが飽きてきた頃だと思うけど、「来月あたり、行ってみるか」という瞬発力とフットワークが削がれたことには無念を感じる。俺はもう中年にさしかかっているからいいんだけど、若い人が数年間どこにも行けずに足止めをくっていると思うと悲しい。今が人生の中で自由にどこかに行ける大切な数年間かもしれないのだ。

画像3

画像5

画像4

画像6

画像7

(有料にするほどでもない内容なので無料にしましたが、じゃあ普段は有料の価値のある記事なのか、と問い詰められたら、爽やかに無視しますよ)

ここから先は

0字

Anizine

¥500 / 月

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。