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Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
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2022年4月の記事一覧

横から見える会話:Anizine

ソーシャルメディアには、人の会話のすべてが詰まっている。「会話にも技術がある」という当然のことが語られることはあまり多くない。セクハラやパワハラ、差別などの問題はそこに収斂されるような気がすることがあるくらい、重要なことなのに。 「今、その場でその言葉をチョイスして発するべきか否か」 口から言葉が出る前にそれを考える人はまず間違えることがない。ただ反射的に思ったことを言ってしまう人だけが舌禍という落とし穴にはまる。しかし落とし穴から這い上がるとまた懲りずに同じことをする。

接客業のルーズさ:Anizine(無料記事)

接客業の種類は様々ですが、どれにも共通して思うことがあります。それは「顧客の個人情報の扱い」についてです。人によってその定義やデリカシーは違うでしょうが、いくつかの気になった実例をあげてみます。 昔からよく知られていることですが、老舗の料亭は客の情報を一切口外しないと言います。その店と客との信頼関係から生まれる安心感も料金に含まれているのかもしれません。最近の傾向として、芸能人の誰が来店したとかいう情報を平然とソーシャルメディアに書いてしまう店員がいます。さらに客が話してい

食われる動物:Anizine

Youtubeでは動物の動画ばかり見ている。社会や自分がやっていることはもはやコンピュータを抜きにして語ることはできず、道具に依存しきっていることへの怖さを感じる。そのリハビリのために、プリミティブで正しくて理不尽な映像を眺めている。 動物の動画と言っても、小熊が穴に落っこちちゃったというようにほっこりするものではない。インパラなどの草食動物がチーターに取り囲まれ、為す術もなく内臓を食べられながら切ない顔をしている、という類いのやつだ。彼らは自然のルール通りに生きていて、そ

映画という聖域:Anizine(無料記事)

映画が好きなので、最近の不祥事の多さに心が痛む。「毎日楽しく遊んでいた公園の砂場が、病原菌の温床だった」と言われたような気分。 一年に約300本くらいの映画を観る。Netflixなどの配信サービスができて、仕事の合間にいつでも見られるようになったことが大きく、時間を合わせて映画館に行くのではそうはいかなかったと思う。ほぼ一日に一本のペースというのはあまり観ない人からしたら修行のように感じるのかもしれないが、好きだからなんとなく観ているだけだ。私はあなたよりもたくさん観ている

英語の勉強:Anizine

毎日最低4時間、英語を勉強している。おかげで全然映画を観ていない。 運動、語学、楽器の演奏などはとにかくひたすら基礎的な動きを繰り返すことしか上達の方法がないんだけど、その地味な作業に耐えられずに途中で挫折する人は多い。大事なのは上達よりも「挫折しない方法」を学ぶことだ。俺の場合、40代になってから写真を勉強して写真を撮るようになった経験が影響している。 写真で言うと、その前からデザインはやっていたのでどんな写真がいい写真なのかという答えは自分の中にあった。もちろんずっと

白い牛のバラッド:Anizine(無料記事)

よく、身内を殺された遺族が「犯人を殺してやりたい」と発言することがある。もちろんそうすることはほとんどないし、「極刑を望みます」という法律に則った言い方をするのが限度である。 人間の行動はわかりきった理性を超えて感情によって破綻することがある。だからこそコマンド通りに動く機械と人間は違うのだと思う。喧嘩をしている当事者を遠巻きに眺めてどちらが間違っていてどちらが正しい、などと言っても彼ら自身はそんなことはわかっているのだ。わかっていてやっている。 そういうことを考えながら