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Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
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2021年11月の記事一覧

行けません:Anizine

この前「あなたは美味しそうなモノばかり食べてるね」と友人に言われたが、その人は美味しそうな手作りの料理をいつも作っているから、「そっちの方がいいよ」と返事をした。そのときは、外食と家庭料理には違う種類の素晴らしさがあるよね、という結論に落ち着いた。 残念に感じるのは「レストランのシェフは家庭料理を下に見ている」というような根拠のない中傷を見かけたときだ。仕事でモノを提供する人には別のジャンルの責任が存在するだけで、決して家庭で作る料理を下になど見ていない。あるとすれば「自分

修行の日々:Anizine

抽象的な話になってしまって恐縮なんだけど、ただの喩え話だと思って聞いてください。ある人が紹介してくれた人がいた。「ある人」とは俺が尊敬している人で、人格と感覚を全面的に信用している。問題なのはその紹介された人だ。 俺の性格をよく知る彼がわざわざ紹介してくれたのだから、その人のこともいい人だと信じたい。ここまではいつも通りの気持ちだった。どんな人なのかをよく知りたいのでポジティブな気持ちで検索をしてみた。 その人はある失敗をしでかして、今はそこから立ち直ろうとしているという

Monicaの話:Anizine(再掲 / 無料記事)

彼女と出会ったのはParisのカフェです。 サン・ミッシェルのカフェ「Le Depart」で、Monicaは隣の席でずっと絵を描いていました。俺が川の方にカメラを向けて写真を撮ると「見せて」と言いモニタをのぞき込んできたのです。 Monicaにカメラを向けると写真が嫌いなようで断られました。スパゲティのようなインスタントラーメンのような絵を見せてもらいました。何かはわかりませんが、いずれにせよ麺類であることは確かです。 Monicaはイタリアのピエモンテ、アスティの出身で

ホテル:Anizine(無料記事)

子供の頃、大人になったら泊まりたいと思っていたホテルはニューグランドだった。当時は横浜にあるモノが世界のすべてだと信じていたから。 その良さは「格式のある野暮ったさ」にある。ここが横浜的と言えるわかりにくいところなんだけど、山手も元町も横浜駅周辺も徹底的に野暮ったい。まるでオシャレじゃない。それは俺が大人になっていろいろな場所に行くようになり、比較対象が増えるほどわかってきたことだ。マイナスではなくプラス要因として。 ParisでもベルリンでもNYでも、人々が愛着を持って

あの時はごめんなさい:Anizine

50代の俺が若い人に伝えておく。年齢を重ねることは悪くないよ、大人と関わるときに萎縮しないでいいよ、という話だ。 俺も過去に若者の経験があったことをカミングアウトするけど、出来事の分析にはビッグデータが必要だ。小学生が「ボクはこんなことを知った」という可愛らしさを大人は赦してくれる。でもそれは中学生なら誰でも通ってきた道だし、中学生がそれを許容する姿を高校生ならもう一段階上から見ることになる。 「経験でものを言う説教する大人」がウザがられるのは、実は若者からではない。歳が

表と裏:Anizine

以前から不思議に思っていることがある。知人には作家、役者、ミュージシャンのように表に出る仕事の人がいて、番組や広告といった方法でコンテンツを世に出している職業の人もいる。いわゆる「表と裏」の話だ。 本当は裏方なのに、前に出たがる人を注意深く観察していると、そこにはいくつかのパターンがある気がするので分類してみよう。しかし内容が内容だけにどうしても「辛辣さ」を避けては通れないことになるので、定期購読メンバーに向けてだけ書こうと思う。