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『わんだふるぷりきゅあ !』 第15話 絵コンテマンによる解説

この記事では、私が絵コンテを担当させていただいた『わんだふるぷりきゅあ!』第15話「ヒツジの執事 メエメエの一日」の絵コンテの演出意図を解説しています。

まずはじめに前提として…映像の解釈は人それぞれですし、正解というものはありません。

解説すること自体が野暮だとは十分認識しております…!!

でも、少しでも作品関係スタッフやアニメクリエイターのみなさんがどんなことを考えて作っているかを理解してもらえると嬉しいなと思い、駄文と知りつつ書き残していこうと思っております。

これを読んで、少しでもアニメ製作者について興味を持っていただければ幸いです。

※以前、8話「まゆのドキドキ新学期」についても同様に解説しております。
ご興味ある方はこちら↓


また、解説の注意点としてもう一つございます。
この解説はあくまでいち絵コンテ担当者としての主観です。

絵コンテを納品して以降は制作現場とは一切接触していないので制作現場の内幕は分かりませんし、現場で絵コンテのままだとうまくいかないところなどは演出さんや話数関係スタッフの方々でいろいろ調整・変更していただいてると思います。


↑は予告です。本編映像はTVerで5/18(土)まで視聴可能です。また3/31以降もPrimeVideoなど各種配信サービスなどでは視聴可能です。

それでは、項目ごとに解説していきたいと思います。

▼冒頭のメエメエのモーニングルーティン


・日々、丁寧な暮らしを心がけている。ということ。毎日同じ時間に起き、同じ時間に仕事をする。イチローさん感を出すことを意識しました。
本当はもっとカットを積んでメエメエのさまざまなモーニングルーティンを見せたかったのですが、尺とカット数の問題で現状ぐらいに納めました。

▼メエメエがダイヤの塔を振り返るカット


ラストの大団円シーンの振り向きと呼応させするつもりで設計してみました。
どちらも構図的に振り向いた先にダイヤの塔(ニコ様)を置いています。メエメエとニコ様、ニコガーデンの関係を想像する余白を作るつもりで構成したつもりです。いかがだったでしょうか。。。?

▼振り向くアニメーション


前述の項目とも関連していますが、この話数を通してキャラクターの振り向きや振り返りをキーアクションとしました。

これの意図はいくつかあります。

  1. 映像的にリズムをつくることで見やすくすること。

  2. みている人にパターンを覚えてもらい、話数内でのトーンの統一感を出すこと。

  3. そのパターンを一定化させることでパターンを崩した時に逆に変化がつけやすくなり、印象を強く残すためです。

▼メエメエとキラリンアニマル、いろはたちの関係


少しメエメエが可哀想に見えてしまうかもしれないと思いつつ、
笑福亭鶴瓶師匠と芸人さん達の関係性、イジリイジられ感を意識しました(完全に個人的な裏設定です 笑)
鶴瓶師匠はすごい年下の芸人さんにもけっこうすごい扱いを受けますが、根底には尊敬と愛が流れていると思うので、それをメエメエたちに反映させてみました。

▼メエメエ七変化


メエメエは超がつくほどの有能ないわゆるジェネラリストで、ちゃんと身なりにも気を遣う紳士でもあります。それぞれの仕事に対して敬意を持っていることを表す意味でも、プロフェッショナル感を出すという意味でもタスク内容に応じてそれぞれの服に変化させています。

▼キラリンアニマルたちが描いたメエメエの似顔絵


実は脚本時はこの部分は無く、私が勝手に脚色してしまったシーンです。前述のようにメエメエの扱いを脚本時よりも過剰に表現してしまったために、これがないと最初に立てた話数目標が成立しないと感じ、追加しました。

コンテでは寄せ書きにしていましたが、アニマルたちが日本語を人間界の言葉を書いてしまっていいのか...という議論があったようで、実製作時に似顔絵に変更していただいたようです。とても素敵な絵にしていただいて感謝でした。
あらためて、コンテはアニメ映像制作において多大な影響がある一方で、映像のすべてでは決してない、現場のスタッフの方々の臨機応変な対応があってこそだと感じました。

▼その他メモ

  • ニコガーデンの紹介カット

    • 海底カットについて
      淡水なのにサンゴがあるのは綺麗なカットを作りたかったということと、ニコガーデンが人間界とは別の不思議な力によるものだということを表現するためです。

    • ニコガーデンの森など
      アフリカのサファリをイメージしました。実際にルワンダのサファリに年末年始にロケハンに行ってきてイメージを膨らませました。(ちなみに完全に赤字です 笑)

      ライオンのカットなどはサファリで出会った熟睡中のオスライオンを激写し、そのまま使っています。


ルワンダのアカゲラ国立公園にて_熟睡中のライオン
ルワンダのアカゲラ国立公園にて_シマウマの群れ
ルワンダのアカゲラ国立公園にて_キリンの群れ
ルワンダのアカゲラ国立公園にて_インパラの群れ


「赤字なのになんでわざわざアフリカまで…??」と、ほとんどの方が思うでしょう。

もし私に、すべてのアイディアが自分の中から出てくる力があったらいいのですが、残念ながらそのようなタイプではないので、いつもコンテのラフを描き始める前に担当話数の関連している場所へできるだけロケハンに行くようにしています。
※もちろん、ロケハンだけでなく、普通にルワンダの旅も楽しみました。
 

▼話数全体の目標(表・裏)

最後に、これも最近実践していることなのですが、おこがましいと知りつつ、一応毎回コンテの軸を作るための話数目標を作ってからコンテinしております。

野暮なことだとも思いながら、公開してみたいと思います。

表の目標
ニコガーデンの紹介とアニマル達、メエメエの人となりをコミカルに伝えること。

ニコガーデンのことについて、ちゃんと触れるのはこの話数が初めてだと打合せ時にお聞きしたので、どんなところなのかが伝わること、メエメエが普段どんなことをしているか、彼がどんなキャラクターなのかを伝えることが表向きに最低限達成しなければならない課題でした。

表の目標に加え、いつも『視聴後にどんな体験をしていただくか』というのを考えて絵コンテを作っております。 その裏目標がこちら↓

裏の目標
1. キラリンアニマルのメエメエへの労いを通して、親御さんの日々の家事の苦労が尊いものだと思ってもらうこと。
2. その苦労がちょっとでも報われること。
3. 試聴後のご家庭で、ほんのちょっとの感謝が表現されること。

達成できたかどうかの判断はお任せいたします…!!

解説は以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました!

▼ラジオ解説

8話同様、ラジオでも解説しております。このnoteと重複する部分もありますが、カットごとの解説もしているので興味ある方はラジオの方もお楽しみいただけると幸いです。

また、X(旧Twitter)でもアニメについて呟いております。


あらためて、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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