田辺さんの正体後編
※田辺さんの正体前編の続きです
田辺さんの正体がホラーだったことに辿り着いた私たちは、そのまま話を続けていました。
田辺さん「この写真、みたらしちゃんに見せてくれないかしら?」
田辺さんはそう言って、田辺さんと私と今より小さい私の息子の三人で撮った写真を送ってきました。私が遊んでいた息子を呼んで写真を見せると、
息子「たなべさん!まま!みたらしちゃん!」
と、言って、自分で「正解です!」と言って喜んでいました。私は田辺さんに報告しました。
私「たなべさん!まま!みたらしちゃん!って言ったよ!」
田辺さん「すごい!わかってるのね!じゃあこっちは?」
田辺さんはそう言って、田辺さんと私とさっきの写真よりもずっと赤ちゃんだった息子の三人で撮った写真を送ってきました。私は再び息子に写真を見せました。
息子「たなべさん!まま!あかちゃん!」
私「この赤ちゃんはみたらしちゃんだよ」
息子「え、やだ!」
私「嫌なの?でもこの赤ちゃんはみたらしちゃんだよ」
息子「やだー!!」
息子は現実が受け入れられないようで走り去っていきました。私は田辺さんに報告しました。
私「田辺さんとママと赤ちゃんって言ってきて、この赤ちゃんはみたらしちゃんだよ!って言ったらやだ!って言われたわ」
田辺さん「あら、なんで嫌なのかしら?」
私「ついこの間も息子に赤ちゃんの頃の写真見せて、『この子みたらしちゃんだよ』って言ったら嫌がってさ。自分はもう赤ちゃんじゃないから嫌みたい。息子、最近自分より小さい子に優しくしたりとかして、自分はもっとお兄ちゃんだって思ってるから」
田辺さん「あら!もうお兄ちゃんの気持ちなのね!」
私「お兄ちゃんの自分がこんな赤ちゃんなわけない!ってことみたい」
田辺さん「みたらしちゃん立派になったね!とっても成長を感じるわ!私、今ヒデじいの気持ちかもしれない!
ねぇ、私ヒデじいかな?」
都市伝説で口裂け女が「私キレイ?」と言うように、田辺さんは「私ヒデじい?」と突然聞いてきました。
ヒデじいとは、ちびまる子ちゃんに登場するキャラクターです。お金持ちのクラスメイト花輪君の世話役をしている執事で、花輪君から慕われており親同然とも言えるじいやです。ヒデじいは花輪君の成長が見えるときに「ぼっちゃま…立派になって…」とハンカチで涙を拭いたりします。
私(田辺さんってヒデじいなのかな?)
私が田辺さんの質問に対してなんと返答しようか迷っていると、再び田辺さんは言葉を続けました。
田辺さん「田辺さんってヒデじいだよ!」
田辺さんの正体はヒデじいだと田辺さん本人が言い出しました。
田辺さん「ヒデじいも花輪君を車でお迎えに行くじゃない!私も一回タクシーでみたらしちゃん迎えに行ったことあるし」
私「一回」
田辺さん「納得だわ。私はヒデじいみたいに毎日お世話はしてないけど」
私「そこ結構重要じゃない?」
田辺さん「でも毎日みたらしちゃんを見守ってるわ!充分ヒデじいだよ!」
私「でも田辺さんみたくヒデじいってパン開発するかな?」
田辺さん「ヒデじい、パンは開発しないんじゃない?それは田辺さんだからできたことよ」
田辺さんはヒデじいに対して少し得意げでした。
私「あ、でもヒデじいも花輪君が龍が如くのグッズ欲しがったらこっそりあげそう。田辺さんはこっそりじゃなくて堂々とあげようとしてるけど」
田辺さん「やりそうよね!」
私「『奥様には内緒ですよ』って」
田辺さん「昇り龍は縁起が良いしね」
田辺さん「みたらしに『田辺さんって何者?』って聞かれたら
ヒデじいって答えてね」
私は世界でトップレベルのよくわからない約束をしてしまいました。
数日後。
ヒデじい「はい!これみたらしちゃんの三歳のお誕生日プレゼント!みたらしちゃんに渡して!」
私「ありがとう」
ヒデじい「すごく迷ったんだけど、カーズのトミカにしたよ!」
ヒデじいはどうやってそこに辿り着いたのか、ものすごく三歳児にふさわしい品物を用意してくれました。
私「ありがとう!喜ぶよ!」
私が受け取ろうとすると、ヒデじいは「あ、待って!」と言ってスマホの動画を撮って欲しいと言ってきました。
私(おめでとうメッセージを見せたいのかな?)
私がスマホで動画撮影を始めると、プレゼントを持ったヒデじいは話始めました。
ヒデじい「みたらしちゃん!三歳のお誕生日おめでとう!このカーズのトミカね!
田辺さんからのプレゼントだからね!た、な、べさん!わかった?田辺さんからだからね!間違えないでね!田辺さんからよ!ば~い!」
田辺さんは言いたいことを全て言い終えると、満足そうに、「絶対これみたらしに見せてね」と言ってきました。私はヒデじいはこんな動画は撮らないだろうと思いました。
おわり
***
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