見てきた女

私は今までnoteにぼる塾の日常を書いてきたのですが、書き続けているうちにある思いが生まれました。

それは小説を書いてみたいという気持ちです。

私(田辺さんみたいな登場人物が出てくる話が書いてみたい。読むと元気が出るような話。私みたいな感じの主人公がその人と出会って成長していく話とかどうだろう)

日に日に書きたい気持ちが強くなっていった私は、ある日、田辺さんに相談することにしました。今までも沢山田辺さんのことを書いてきましたが、小説のモデルとして使うなら改めて確認をとったほうが良いと思ったのです。

私「田辺さんをモデルにしたキャラクターの小説を書いても良い?名前は田中さんに変えるから」

私(・・・友人から自分をキャラクターにした小説を書かせてほしいと言われたら流石の田辺さんも嫌がるかもしれない)

そう不安に思いましたが、気持ちを正直に打ち明けました。

田辺さん「いいよ!!すごい!書いて欲しいわ!!!」

田辺さんは即、オッケーしてくれました。

私「良かった!オッケーしてくれてありがとう!」

田辺さん「凄いね!!小説!!楽しみだよ!」

私「田辺さんだとまんまだから田中さんにするね」

田辺さん「城ケ崎さんでも良いわよ」

田辺さんの許可をもらった私は早速「謎の女田中さん」という小説を書き始めました。私みたいな感じの主人公が田辺さんみたいな田中さんと出会って成長していく話です。

しかし、書き始めてすぐに私はある問題に気がつきました。

それは小説を書くのがめちゃくちゃ難しいということです。

私「何これ!びっくりするほど書けない!」

田中さんというキャラクターが決まっているので書き始めたらなんとかなるだろうと思っていたのに全く何も書けないのです。まず、主人公と田中さんが出会う場面まで書けないのです。

私「うーん、最初から書くのは諦めて書けそうなところから書いてみよう。田中さんと主人公は清掃スタッフのアルバイトで出会う設定だから、とりあえず主人公が清掃スタッフの面接に受かってバイト初日に田中さんと出会うところから書こう」

私は二人の出会いから書き始めることにしました。

忘れもしないアルバイト初日。私と田中さんが出会った日。

「お疲れ様です。今日からお世話になる坂本です」

私が更衣室に入ると、何人かのアルバイトが動きを止めてこちらに振り返った。その中に田中さんはいたのだ。田中さんは身長が高く体つきもがっしりしているので初めて見た私は「この人が教育係じゃありませんように」と思ってしまった。例えるなら田中さんは男子プロレスラーっぽいのだ。田中さんは女性だから女子プロレスラーに似ているはずなのだが、なぜかロングへアーの男子プロレスラーに似ているのだ。

私「あれ、これって田辺さんへの悪口?」

ジブリの名作「耳をすませば」で主人公の雫ちゃんが物語を書き終えた後で思ったように書けなかったことを泣いていたシーンがあったのですが、今まではその場面を見ても、

私「泣くほどうまく書けなかったんだ」

と、思っただけだったのですが、今は

私「いや、最後まで書き上げただけであんたすごいよ!うまく書けない気持ちわかるよ~!書きたいだけで書けるもんじゃないんだね!!」

と、思うようになりました。その後も私は無理やり書き続けたのですが、話はどんどん変な方向に進んでいきました。上手く書けない私は田辺さんに相談することにしました。田辺さんに相談して解決することはほとんどないのですが、稀に良いことを言ってくれるのです。

私「田辺さんの小説を書き始めたんだけど、小説を書くのってめちゃくちゃ難しいね!」

田辺さん「小説!難しそうね!どんな感じなの?」

私は一応今まで書いた「謎の女田中さん」の一部分を説明しました。

私「清掃スタッフの田中さんが掃除しているビルに入っている服屋の店員に挨拶するんだけど、挨拶を返さない店員がいるのよ」

田辺さん「うんうん」

私「田中さんが挨拶を返さなかった店員に対して復讐するって言って、休憩時間のとき、従業員用の休憩所でコンビニのおにぎり食べてる店員の近くでデパ地下の高級惣菜を食べて、

田中さん『一番の復讐は自分が幸せに生きていることを見せることよ』

って主人公に格好良く言うシーンがあるんだけど、私の中では格好良いシーンとして書いてるんだけど、全然格好良くならないで意味不明な行動になるの」

田辺さん「田中さんヤバいやつじゃない」

私「これ田辺さんがアルバイト先で実際にやってた復讐だよ」

田辺さん「まぁね」

田辺さんは昔やっていた清掃スタッフのアルバイトで、挨拶を返さない人に対し、昼休憩時間にその人の近くでデパ地下の総菜を食べてマウントをとるという謎の復讐を繰り返していたのです(やられた相手が復讐に気づいていたかは謎です)

田辺さん「もっと格好良く復讐したいわ」

私「私としてはここは田中さんの魅力あふれる名シーンになるはずだったんだけど、どう表現しても田中さんの行動は意味不明だし、この行動の説明をしようとすればするほどこの場面が無駄に長くなるの」

田辺さん「地獄だね」

私「格好良い復讐ってなんだろうね」

田辺さんと私は格好良い復讐について考えることにしました。

私「買収とかかな?」

田辺さん「確かに!嫌な奴の企業を買い取ってオーナーになるとか」

私「あるね!オーナー!逆に困ってる企業のオーナーになって悪いやつから守るとかもあるよね」

田辺さん「ある!そっちが良いね!私オーナーになるなら困ってる酒造を救いたいわ。今日本酒に興味あるから」

私「こういうとき仕事ができる女って優しさだけで買い取るんじゃなくて買い取った結果ちゃんと自分もビジネスで成功するよね!」

田辺さん「わ!そういう女になりたいね!田中さんの話それで作ったら?」

私たちはいつの間にか格好良い復讐から田中さんが酒造を救ったらという話にずれていきました。

私「じゃあ話をまとめるね。ある日、女社長の田中さんが道に迷って酒造に助けてもらうの。その助けてもらった酒造がすごく美味しいんだけど敵から嫌がらせをうけていて潰れかけてるの。で、田中さんが一口呑んでこれは見えた!ってなって救うの」

田辺さん「良い話になりそうじゃない」

私「ただ敵が誰なのか、田中さんに何が見えたのかはわからない」

田辺さん「敵って誰かしらね?日本酒文化は古いとか言ってくるやつとか?」

私「敵って地上げ屋のイメージあるよね。ショッピングモールの土地開発とか」

田辺さん「わかる!地上げ屋!」

私「でもそれって商店街の敵?」

田辺さん「うーん。わからないわ。小説って難しいんだね。話を作るのって大変だわ!」

私「うん。一応小説の書き方の本も図書館から借りてきたんだけど」

田辺さん「あら、それ参考にしたら?」

私「ただ10代から目指すラノベ作家って本なの」

田辺さん「酒寄さんが書いてるのってラノベなの?」

私「わからない。私来月34歳になるし」

田辺さん「何かを始めるのに年齢は関係ないよ!」

田辺さんは突然良い言葉を放ってきます。私たちは諦めずに物語を考えることにしました。

田辺さん「ねえ、私とみたらしちゃんの友情を話にしたら?」

みたらしちゃんは私の2歳になる息子で、田辺さんは「みたらしちゃんは友達の子供ではなく私の友達だと思っている」とよく言っています。

私「田辺さんと息子の友情を書くの?」

田辺さん「そう!38歳と2歳の友情!

あ!待って!話降りてきた!!」

田辺さんはそう言って降りてきたストーリーを語り始めました。

田辺さん「みたらしちゃんのダンスを見てこの子は!って私が才能を感じるんだよ。」

私「ダンス?」

田辺さん「私みたらしちゃんのダンス好きなのよ」

実際に田辺さんは私の息子が踊っている動画を見て、「みたらしちゃんをアイドルにしよう」と言い出したことがありました。私が「自分の子供だからわかるがこのダンスは決してアイドルのダンスではない」と言ったら、

田辺さん「私は24年間ジャニーズを見てきた女だよ!!」

と叫ばれました。

見てきた女

・・・話を戻します。

田辺さん「みたらしちゃんがパン屋の前でパンを食べてステップ踏んだのを私が見たって出会いはどう?みたらしちゃんパン好きだし」

私「とりあえず聞くね。続けて」

田辺さん「私はみたらしちゃんに優しくしたいんだけど、アイドルとしての素質を見抜いて厳しくするんだよ」

私「うんうん」

田辺さん「楽しく踊ってたみたらし!自由に踊ってたみたらし!そんなみたらしを私はおさえつけるよ!それじゃ感動させられないよ!!って言ってKAT-TUNのライブに一緒に行くよ!!


これがダンスよ!ってね!スパルタだよ!!」

私「でも田辺さん自身が踊れないのにスパルタするのって難しくない?ステージママとかで自分は才能ないけど厳しい人とかはいるかもしれないけど、赤の他人で才能ないのにコーチになってスパルタする人って何?」

田辺さん「はっ!その通りだね!!」

田辺さんははっとしていました。

田辺さん「じゃあ現実は違うけど田辺さんの昔は世界を熱狂させるスターだったって設定にしよう」

私「まあ小説だしね」

田辺さんのありのままで書くと、田辺さんがみたらしにレッスンをつけるシーンで「私は見てきた!」しか言えない説得力0のコーチになってしまいます。

田辺さん「そこで私がかつてのライバルの酒寄さんの姿を思い出すっていうのもいいね。みたらしちゃんのお母さんはかつての私のライバルだったの!」

私「私もダンサーなの?」

田辺さん「うん!元ダンサーね!浅田真央とキムヨナのような関係だね。酒寄さんは何か過去にあって仕方なくダンスを辞めちゃったのよ」

私「何があったんだろう。気になるね」

田辺さん「敵が現れて辞めたとか?」

私「また敵!さっき敵でつまづいたのに!」

田辺さん「敵は駄目だね!後は膝にカルシウムが溜まって踊れなくなったとか」

私「それ田辺さんの事実じゃん!最近膝痛くなったときの!」

田辺さん「そうね、、、人に押し付けて」

田辺さんは少し前に膝を痛めて病院に行き、医者から説明を受けたとき内容が難しくてよくわからなかったので、

田辺さん『言われた良いことだけを聞いてきた』

と、診断結果をまるで占いの結果のように聞いてきて、私から怒られたのです。

私「ダンスやってた私も占いみたいに良いことしか聞かなくて手遅れになったのかしら」

田辺さん「そうね!私は骨の形は綺麗って言われたわ」

私「発掘された恐竜みたいなコメントだね」

田辺さん「やばっ!!うける~!!」

私「うけるんじゃないよ!ちゃんと医者の話は聞きなよ!それでこの話、結末はどうなるの?」

田辺さん「そうね・・・宇宙大会とか?」

私「規模でかすぎない?ドラゴンボールじゃないんだから」

田辺さん「そうね!ちょっと気持ちがラノベにもってかれてたわ!じゃあ世界大会にするよ」

私「一応聞くけどダンスの世界大会よね?」

田辺さん「そうよ!ラスト緊張しているみたらしに私が言うの!

『あんたは大丈夫!私見てきたから!!』ってねっ!!!」

私は田辺さんどんだけ自分の「見てきた」に自信あるんだよって思いました。

おわり

***

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